"米蔵を開けた娘" 第9話
ないをどう使うか。
どのでも悩み続けていた。
自、そのはほとんど利益がなかった。
徳蔵は仕入れを減らさないよう必に問と交渉し、元のをやりくりした。
それでも奉公のだけは遅らせなかった。
千代も以よりく帳へ座るようになった。
父の横で仕入れ帳をつけた。
売れた量を記録した。
問から届く値段を確認した。
初めて見る数字ばかりではない。
けれど、以とは見え方が変わっていた。
米俵が何円か。
何銭がったか。
それだけではない。
この俵を何が買うのか。
どれだけ残せばも売れるのか。
くしすぎればが持たない。
くすれば買えない客が増える。
商売には、千代がっていたよりくのものがつながっていた。
ある晩。
を閉めた、千代は父と緒に帳面を理していた。
「お父ちゃん」
「なんや」
「私、あの、違ってたんかな」
徳蔵は算盤を弾くを止めた。
何のか、聞き返す必はなかった。
千代が勝に蔵をけた。
「違ってた」
父はすぐ答えた。
千代はむっとした。
「そこ、ちょっとくらい考えてから言うてもええやん」
「勝に蔵けたんは違いや」
「分かってるよ」
「が100う集まることも考えてへんかった」
「それも分かってる」
徳蔵はし笑った。
千代もを尖らせたまま帳面へ目を落とした。
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すると徳蔵が続けた。
「でも」
千代は顔をげた。
「おがあの、何もせんかった方が良かったともわん」
「どういうこと」
徳蔵はしばらく考えた。
「俺は、蔵を閉めることばっかり考えとった」
千代は黙る。
「蔵の米をどう守るか」
「次の仕入れをどうするか」
「をどう残すか」
父はゆっくり言った。
「全部必なことや」
「うん」
「でも、それだけやったらあかんかった」
徳蔵はの格子戸の方を見た。
今は閉まっている。
しかし昼、その向こうには毎客がいる。
「おが勝に扉けたから、俺も初めてうた」
「何を?」
「を守る言うてもな」
徳蔵は言った。
「客おらんかったら、守るもない」
千代は何も答えなかった。
父からそんな言葉を聞くとはっていなかった。
数。
千代はの帳に座ることが増えた。
徳蔵も以よりを取り、細かな仕事を娘へ任せるようになった。
若い奉公が仕入れ帳を持ってきた、徳蔵はよく数字を確認させた。
「何俵残っとる」
「20俵です」
「次の仕入れはいくらや」
奉公が答える。
「ほな、客は?」
若者が戸惑った。
「客、ですか」
「そうや」
徳蔵は格子戸の向こうを指した。
「今はどんな来てた」
若者は何を聞かれているのか分からず、千代を見た。
千代はわず笑った。
徳蔵は言った。
「米は米だけ見てたらあかん」
「はい?」
「米をうまで見な、商売にはならん」
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若い奉公は、ますます分からない顔をした。
千代だけは、その言葉がどこからまれたのかっていた。
正78。
朝から異様に暑かった々。
昨まで買っていた客が、半しか買えなくなった。
さな男の子が母親へ尋ねた。
「今、ご飯いっぱいべられる?」
町では米へのりが広がった。
のにも勢のが集まった。
徳蔵は格子戸を閉めた。
千代は父に逆らい、蔵の鍵を持ちした。
「まで」
そう叫び、米を売り始めた。
最初は「ありがとう」と言われた。
正しいことをしたとった。
しかしは増え続けた。
列は崩れた。
鳴り声がび交った。
男が米俵へを伸ばした。
女が転び、赤ん坊が泣いた。
そして帰ってきた父は、警察を呼んだ。
あの、千代は初めてった。
正しいとう気持ちだけでは、を守れないことがある。
徳蔵もった。
商売を続けるという理由だけで、困っているの顔を見なくなってはいけない。
空腹のをに、
「米をせ」
と言うことは簡単だった。
方で、今ある米を全てしてしまえば、は誰にも売れなくなる。
その両方が真実だった。
だからこそ、はそのも考え続けた。
どれだけ売るか。
いくらで売るか。
どれだけ残すか。
そして、格子戸の向こうに誰がっているか。
正7の米騒は、「貧しい々」
と「欲い米」だけで説できる来事ではなかった。
戦争景気による物価の昇。
投。
買い占め。
騰する仕入れ値。
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