"日本人に戻れた父、戻れなかった娘" 第11話
父には、いれていた祖国が戻ってきたように見えた。
娘には、自分の過をどこへ置けばいいのか分からない朝だった。
国が独を取り戻すを、歴史はつの付で記録することができる。
しかしのがどこを故郷とうのか。
いつ「帰ってきた」とじるのか。
それを決めるは、誰にとっても同じではない。
法律が変わったでもない。
国旗が掲げられたでもない。
誰かから、
「ここがおの国だ」
と言われたでもない。
美津子にとって本当ので居所がまれたのは、自分の過を隠さなくていいとえただった。
奉でまれたこと。
13歳までそこで暮らしたこと。
本へ来て戸惑ったこと。
引揚者と呼ばれたこと。
岡で働いたこと。
修と会ったこと。
へ嫁いだこと。
娘を育てたこと。
その全てを、つのとして並べられるようになっただった。
宗郎にとっても同じだったのかもしれない。
本を故郷と呼びながら、奉の写真を捨てられなかった父。
最には、孫から聞かれて、
「ここも故郷?」
と問われ、
「そうだな」
と答えた。
その言には、若い頃には認められなかったものが全部含まれていた。
失った。
。
族で過ごした。
娘がまれた町。
宗郎にとっても、故郷はいつのにかつではなくなっていたのだ。
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ある、美津子は父から受け取った古い写真をもう度箱へ戻した。
今度は押し入れの奥へ隠さなかった。
娘でもが届く棚へ置いた。
忘れなくていい。
隠さなくていい。
その写真のにいる女も、今ここで暮らしている自分も、同じ美津子だった。
窓のでは、いつもの町の音がしていた。
材からを運ぶ音。
を歩くの声。
くで鳴る自転のベル。
奉の記憶とはまったく違う景だった。
それでも美津子は、その音を聞きながら穏やかにった。
ここも、自分が帰る所になった。
それでいい。
どちらかを捨てなくてもいい。
父がんだ「本に戻れた」から何も経って、美津子はようやく自分なりの答えを見つけた。
は国だけできているのではない。
の名だけで、自分が何者なのか決まるわけでもない。
そこで誰と暮らし、何を覚え、何を失い、何を切にしてきたのか。
その積みねが、その自になる。
美津子には、帰れない故郷があった。
そしてからできた故郷もあった。
どちらも放さなかったからこそ、ようやく自分のを自分の言葉で語れるようになった。
昭27428。
父はラジオので、
「やっと本当に終わった」
と言った。
けれど娘にとって、そのは終わりではなかった。
い言えなかった自分の気持ちを、初めて父へ伝えた始まりのだった。
そして父にとってもまた、
「本だから」
というつの言葉だけでは抱えきれない娘のを、初めて見つめ始めたになった。
父と娘は同じ国へ暮らしながら、違う故郷を持っていた。
やがて互いに、それでいいのだと分かった。
その初めて、2は「帰る」という言葉を、自分たちそれぞれので受け止めることができたのだった。
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