"出征前、父が婚姻届を出した" 第7話
美代と茶をみ、節子と話した。
には正の話をしないもあった。
所のこと。
のこと。
以読んだ本のこと。
そんな話をして、夕方になると帰った。
宗吉は最初、志津子が来るたびにし居悪そうにしていた。
何と呼べばいいのか迷っているようでもあった。
本来なら嫁として迎えるつもりだった女性。
しかし自分の考えを拒み、息子もその側についた。
駅では自分から婚姻届を破った。
その、宗吉は彼女に結婚について何も言わなかった。
志津子も宗吉に反発するようなことは度もにしなかった。
ただ藤原を訪ね、必なら美代の伝いをし、節子と話し、帰っていった。
ある、志津子が帰ったあと、美代が言った。
「いい娘だね」
宗吉は帳面を見たまま返事をしなかった。
「嫁にならなかったから来なくなるとってた?」
美代が尋ねると、宗吉はし顔をげた。
「そんなことは言ってない」
「でもってたでしょ」
宗吉は何も答えなかった。
美代は湯呑みを片づけながら言った。
「あの子は正の嫁だから来るんじゃないんだよ」
宗吉は妻を見た。
「自分が来たいから来るんだよ」
それだけ言って、美代は台所へ戻った。
宗吉はしばらく帳面をいたままかなかった。
正から届くらせはくなかった。
族は便りが来るたび、何度も読み返した。
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詳しいことはかれていない。
元気でいること。
のことを気にしていること。
節子には勉を続けるようにということ。
志津子について直接かれた言葉はなかった。
それでも志津子が訪ねてきた、美代は正から便りがあったことを必ず伝えた。
「元気だって」
その言だけで、志津子はほっとした顔をした。
「そうですか」
それ以を求めなかった。
は過ぎていった。
正が発した、節子は兄が数かで戻るような気がしていた。
ところが季節が変わっても帰ってこない。
次の季節になっても戻らない。
々ので、正がいないことだけがしずつ当たりになっていった。
それが節子には怖かった。
は、いないにも慣れてしまう。
卓の空いた席にも。
静かな階にも。
「兄ちゃんが帰ってきたら、全部元に戻るよね」
節子が母へ言ったことがあった。
美代はし考えてから答えた。
「同じには戻らないかもしれないね」
節子は驚いた。
「どうして?」
「はが経てば変わるから」
「でも兄ちゃんは兄ちゃんでしょ」
「そうだよ」
美代は笑った。
「だから、同じに戻すんじゃなくて、そのまた始めればいいんだよ」
節子はその言葉を覚えていた。
それは征、兄が志津子について話したこととし似ている気がした。
帰ってきたに、そのの自分たちで決める。
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駅で父が破った婚姻届のも、節子はしずつ理解し始めていた。
昭208。
戦争が終わった。
そのらせを聞いた、藤原の誰もすぐにはべなかった。
終わった。
それなら正は帰ってくる。
節子はそうった。
「兄ちゃん、帰ってくるよね」
美代も、
「そうだね」
と答えた。
宗吉は何も言わなかった。
けれど、そのからの戸がくたびに顔をげることが増えた。
しかし正はすぐには帰ってこなかった。
8が過ぎた。
になった。
になった。
帰還するの話を所で聞くたび、美代はへた。
同じ町から征した若者が戻ると、節子も様子を見にった。
「あのと兄ちゃん、緒じゃなかったの?」
「違うところだったらしいよ」
その繰り返しだった。
待つは、戦争とは違う苦しさがあった。
戦争が続いているは、帰れない理由があった。
けれど終わったあとになると、
「なぜまだ帰らないのか」
という疑問が毎きくなった。
何かあったのではないか。
族が誰もにしないが、のにあった。
志津子は変わらず藤原へ来た。
ただ以より訪ねる隔がし空くこともあった。
自分ののこともある。
毎藤原だけを見て暮らしているわけではなかった。
宗吉はそれについて何も言わなかった。
もし昭18の自分なら、
「正を待つなら、もっとへ来るべきだ」
と考えたかもしれない。
しかし今は違った。
志津子は藤原の嫁ではない。
正から待てと言われたわけでもない。
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