"新幹線の日、父は駅弁を売らなかった" 第2話
駅だって朝から客がい。こんなに休んだら、あのはもう代についていけないって言われるぞ」
栄吉は聞をゆっくり折りたたんだ。
「今は、いい」
「いいわけないだろ」
「夫」
父はい声で言った。
「今は俺が決める」
それ以、説しなかった。
夫は父を睨んだ。
30同じ所にち続けた男が、とうとう変化を怖がったのだ。
幹線が嫌いなのかもしれない。
古い汽が消えるのが気に入らないのかもしれない。
そんな父ののために、まで代から取り残されるのは納得できなかった。
「分かったよ」
夫は乱暴に言った。
「親父がかないなら、俺がやる」
栄吉は止めなかった。
夫は来ていた弁当を急いでまとめ、で駅へ向かった。
背で父が何をしていたのか、振り返りもしなかった。
駅へ着くと、夫はすぐ売の責任者へをげた。
「すみません。父が今はられなくて」
責任者は怪訝そうな顔をした。
「栄吉さんが? 病気か?」
「いえ……ちょっと事があって」
本当のことを言えば、さらに呆れられる気がした。
今だけは駅へない。
それだけ聞けば、誰だって父を頑固な老だとうだろう。
責任者はく追及せず、
「まあ、今はもい。弁当だけでも置いていってくれ」
と言った。
夫は売の奥へ入り、包みを並べ始めた。
駅は普段よりらかに騒がしかった。
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聞を抱えた。
しい刻表を眺める。
「ひかりは何に阪へ着くんだ」と駅員へ尋ねる。
子どもたちは、幹線を実際に見たこともないのに、
「ひかり、ひかり」
と楽しそうににしていた。
夫も胸の奥ではわくわくしていた。
これから本はもっと変わる。
はもっとくへ、もっと速く移する。
京と阪がくなれば、静岡の駅にもしいの流れがまれるかもしれない。
その変化ので、父の駅弁も残せるはずだった。
むしろ変えなければ残らない。
だからこそ今、父にも駅へ来てほしかった。
30ホームにってきた男が、しい代の最初のに自分の目で駅を見てほしかった。
それなのに栄吉はへ残った。
夫には、それが逃げているようにえた。
「田さん」
売の責任者がしい刻表を指さした。
「今からこの辺もだいぶ変わるぞ」
夫はづいた。
赤と黒の数字が細かく並んでいる。
「幹線が業しても、この駅には直接関係ないとってたんですけどね」
「そんなことないさ。距の客は幹線へ移る。こっちはこっちで列の組み方が変わる」
責任者は指を滑らせた。
「昔から来てた列も、いくつかなくなる」
夫は何気なく刻表を見た。
確かに、見慣れた刻の並びがしずつ変わっていた。
い当たりだった列がなくなり、別の刻に別の列が入る。
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夫は、それを特に寂しいとはわなかった。
便利になるなら仕方がない。
代とはそういうものだとっていた。
午、弁当はそれなりに売れた。
だが、像していたほどではなかった。
幹線の話題で駅がにぎわっていても、その駅に幹線がまるわけではない。距へ向かう客の部はきな駅へ移り、ホームにりて弁当を買う乗客も以とはし違っていた。
「ったより売れないな」
夫は包みの残りを数えた。
売の責任者が苦笑した。
「幹線が来れば、全部の駅が栄えるってわけでもないからな」
その言葉に、夫はしだけ考え込んだ。
自分はずっと、
しいものが来る。
が増える。
駅弁も売れる。
そう単純に考えていた。
だが、速い列が来れば、通り過ぎられる所も増える。
きな駅が便利になれば、さな駅の役割が変わることもある。
「だから今のうちにを変えないと駄目なんだ」
夫は自分に言い聞かせるように呟いた。
父が30続けてきたやり方だけでは、これからき残れない。
昼。
度、へ戻ることにした。
父の様子がどうしても気になったからだ。
売れ残った弁当のことではない。
朝からずっと胸に引っかかっていた。
栄吉は、本当に幹線が嫌いだから休んだのだろうか。
父は無だったが、仕事だけは誰より真面目だった。
のでも、のでも、があっても駅へた。
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