"新幹線の日、父は駅弁を売らなかった" 第7話
「そうか」
栄吉はそれだけ言った。
2はしばらくホームにっていた。
くでは、しい刻表を見ながら客たちがこれからの話をしていた。
方で夫ののには、まだ見たこともない若い父と母がいた。
同じホームで、めたいなり寿司を半分ずつべている。
今までらなかった両親のだった。
列を見送った、栄吉はすぐには帰ろうとしなかった。
ホームの端から駅舎を眺めていた。
30と比べれば、駅もずいぶん変わった。
板がしくなった。
照が増えた。
売も広くなった。
戦には見なかったような商品が棚へ並ぶようになった。
それでも栄吉がつ位置は、ほとんど変わっていなかった。
「親父」
夫が声をかけた。
「もう帰る?」
栄吉は腕計を見た。
「はどうした」
「し売ってきた」
「し?」
「ったほどじゃなかった」
夫は苦笑した。
「幹線が業したからって、この駅に客が押し寄せるわけじゃなかったよ」
栄吉は、
「そうか」
と言っただけだった。
「驚かないんだな」
「幹線がここへまるわけでもないからな」
「それ、から分かってたのか」
「当たりだ」
夫はし腹がった。
自分だけが未来に興奮し、単純に客が増えるとっていたようで悔しかった。
「じゃあ売の改装はどうってるんだよ」
栄吉は歩き始めた。
夫も隣へ並ぶ。
「カウンターを作る話」
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「おがやりたいならやればいい」
「そんな簡単に言うなよ。親父のでもあるだろ」
「だからおが考えればいい」
「親父は反対じゃないのか?」
栄吉はしそうに夫を見た。
「何で反対する」
「だって、ずっと箱で売ってきただろ」
「30やったからって、40目も同じにしなきゃならん決まりはない」
夫はを止めそうになった。
朝から自分は父を完全に誤解していた。
父は変化が嫌いなのだとっていた。
幹線を敵のようにじているのだとっていた。
だが栄吉は、そんなことを度も言っていない。
「幹線、嫌いじゃないの?」
わず聞くと、栄吉は眉を寄せた。
「乗ったこともないものをどうやって嫌うんだ」
「だって今、を閉めたから」
「幹線とを閉めたことは関係ない」
栄吉は淡々と言った。
「今は、あの列を見るために休んだ。それだけだ」
夫はわず笑った。
「何だよ、それ」
「何がおかしい」
「いや、俺が勝に勘違いしてた」
「いつものことだ」
「それは余計だ」
2は駅舎をた。
駅にはまだ業祝いの旗が揺れている。
ラジオからは幹線のニュース。
子どもたちはい体の絵が載った聞を見ている。
栄吉はそれをし眺めた。
「速いんだろうな」
「親父、らないのかよ」
「速いってことくらいってる」
「京から阪まで4くらいだよ」
「昔じゃ考えられんな」
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「乗ってみたい?」
栄吉はしばらく考えた。
「そのうちな」
夫はまた驚いた。
父は未来を拒んでいるのではない。
むしろ静かに受け入れていた。
ただ、そのに過へきちんと別れを告げたかっただけなのだ。
へ戻ると、朝作った料理がまだ残っていた。
義妹が昼の分をえてくれていた。
箱は部の隅に置かれている。
30使ってきた古い箱。
角は擦れ、何度補修したか分からない。
夫はそれを持ちげた。
「親父」
「何だ」
「今、本当にもう売らないの?」
栄吉は夫を見た。
「朝そう言っただろ」
「朝は朝だよ」
「変なことを言うな」
「1112分の列はもう見送った」
夫は箱を卓袱台のへ置いた。
「親父が今やりたかったことは終わったんだろ」
栄吉は黙った。
夫は朝から来ていた弁当を見た。
まだ売れるものはある。
昼の番忙しいは過ぎた。
それでも午の列は来る。
「ホーム、1本回ってこいよ」
栄吉は眉をひそめた。
「今さらか?」
「今さらでいい」
「午休んだ男が午からても格好がつかん」
「30もホーム歩いてるが、今さら格好なんか気にするなよ」
栄吉は夫を睨んだ。
だが本気でっている顔ではなかった。
夫は空っぽの箱をけた。
朝、父が何も詰めなかった箱。
そこへ自分ので、弁当を並べ始めた。
夫はまず幕の内を入れた。
次に鯛めし。
いなり寿司。
父が30売ってきた弁当を、いつもの順番で箱へ詰めていく。
包みも変わらない。
紐の結び方も、父から教わった通りだった。
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