"卒業写真にいた父" 第2話
何も町へ戻っていなかった男。
そして、その男が見つめていたの。
坂はさく息を吐いた。
「何で今なんだよ……」
誰にも聞こえない声だった。
数、そのの枚が、健司の胸に何も残ることになるとは、このの健司はるはずもなかった。
卒業式から数、担任が茶いきな封筒を抱えて教へ入ってきた。
「坂写真館から記写真が届いたぞ」
教が気に騒がしくなった。
まだ卒業の登が何か残っていたため、写真は学を通して枚ずつ渡されることになっていた。卒業アルバムとは別に注文した、写真館で撮った組の集写真だった。
担任は席番号順に名を呼んだ。
「青」
「はい」
「井」
「はい」
受け取った子どもたちは、すぐに写真を机のへ広げた。
「あ、お目つぶってる!」
「本当だ!」
「先、もう枚くれないんですか?」
「枚しかない。事に持って帰れ」
教のあちこちから笑い声ががる。
健司も、自分の名が呼ばれるのを待っていた。
しかし、席番号が自分のまで来たところで、担任の声が止まった。
「は……ちょっと待ってくれ」
健司は顔をげた。
担任は封筒のをもう度確認すると、気まずそうに言った。
「坂さんがな、の分だけ焼き増しに失敗したそうだ」
瞬、教が静かになった。
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「だけ?」
誰かが言った。
別の男子が笑いながら続けた。
「だけ消えたんじゃねえの?」
何かが笑った。
悪のある笑いではなかった。ただ、学らしい無慮な反応だった。
それでも健司の頬は気にくなった。
「あとでもらえるんですか」
担任に尋ねると、先はし言葉に詰まった。
「いや……どうも焼き増しできないらしい」
「でも、みんなと同じ写真ですよね」
「そうなんだがな。詳しいことは先も聞いてないんだ」
健司はそれ以聞けなかった。
机の周りでは、友達が写真を見せっている。
「、見る?」
隣の席の子が差ししてくれたが、健司は首を振った。
「いい」
本当は見たかった。
自分がどんな顔で写っているのか。
胸ののが曲がったままだったのか。
隣にっていた友達が本当に目をつぶっていたのか。
けれど、自分だけ持っていない写真を借りて眺めることが、ひどく惨めにえた。
そのの帰り、健司はわざといつもと違うを選んだ。
坂写真館のを通るだった。
先では坂が箒を持って掃除をしていた。
健司は度通り過ぎかけたが、数歩んだところでを止めた。
聞かなければ、ずっと気になる。
「坂のおじさん」
坂が振り向いた。
健司を見ると、その顔がほんのし張った。
「おう、健司くん。どうした」
「俺の写真、本当に失敗したの?」
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坂は箒を持ったまま黙った。
ほんの数秒だった。
けれど12歳の健司には、それが自然なほどくじられた。
「……ああ。悪かったな」
「なんで俺だけ?」
「そういうこともあるんだよ。写真ってのは」
「でもみんな同じ写真だろ?」
健司はわず言い返した。
「同じ写真なら、俺の分だけ失敗するのおかしくない?」
坂の目が泳いだ。
それを見た瞬、健司のに別の考えが浮かんだ。
写真は本当は失敗していない。
このは何かを隠している。
「俺に渡したくないの?」
坂の眉がいた。
「違う」
「じゃあ何で?」
「健司くん」
坂はしい声で言った。
「にはな、うまく説できないこともあるんだ」
それは12歳の子どもを納得させるには、あまりにずるい言葉だった。
「何だよ、それ」
健司は坂を睨んだ。
「俺のこと嫌いなんだろ」
「そうじゃない」
「じゃあ写真くれよ」
坂は答えなかった。
その沈黙が、健司には答えそのものにえた。
健司は何も言わずにりした。
背から坂が名を呼んだ気がしたが、振り返らなかった。
へ戻ると、母が夕飯の支度をしていた。
「遅かったね」
「ちょっと寄り」
「写真、もらった?」
健司のが止まった。
「俺のだけ失敗したって」
母も瞬だけきを止めた。
「そう」
それだけだった。
「みんな同じ写真なのに、変だろ」
「写真さんにも失敗くらいあるんじゃない」
「でも……」
「気にしなくていいよ。
卒業アルバムはあるんでしょう?」
母は鍋へ線を戻した。
そのの健司は、母の反応に特別ながあるとはわなかった。
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