"卒業写真にいた父" 第3話
むしろ、自分だけ写真がないことを母までしたことではないとっているようにじ、余計に腹がった。
それから何もの、坂写真館のを通るたびに、あのの記憶がよみがえった。
――俺だけ、写真をもらえなかった。
やがて健司はを卒業し、京へ働きにた。
町をれる、坂写真館のを通ったが、には入らなかった。
坂がこちらを見たような気もした。
健司は顔をそらした。
自分に父親がいないことと、写真の件が関係しているのではないかと考えた期もあった。
父と母は、健司が4歳のに婚していた。
父のことを尋ねても、母は詳しく話さなかった。
「もう別々に暮らしてるだから」
それが母の決まり文句だった。
健司自も、成するにつれて父について聞かなくなった。
会いたいとくったこともない。
会わずに育ったのだから、それが普通だった。
京で働き、結婚し、自分の庭を持った。
やがて母もくなった。
それでも押し入れの奥から卒業アルバムがてくるたび、健司は度だけいした。
組の全員が持っていたのに、自分だけ受け取れなかった枚。
いのでは些細な来事のはずだった。
なのに、どうしてか忘れられなかった。
写真がなかったからではない。
坂が、理由を言わなかったからだった。
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昭の終わりがづいた、健司は母の墓参りのため久しぶりに故郷へ戻った。
駅は昔より静かになっていた。子どもの頃に通った駄菓子はなくなり、玩具だった建物にはシャッターがりている。商にはしい板も増えていたが、通りそのものは減っていた。
墓参りを済ませた帰り、健司は商の掲示板のでを止めた。
枚の張りが目に入ったからだった。
《坂写真館 閉につき、古写真・注文品の引き取りをお願いします》
何もそこにあるのが当然だとっていただった。
健司はしばらく張りを眺めた。
別に用事はない。
写真を頼んだ覚えもない。
それでもは自然と坂写真館へ向かった。
昔と同じ製の板は、すっかりあせていた。
ガラスケースに飾られた写真もなくなり、内には暗い夕方のが差し込んでいる。かつては族写真や結婚写真がびっしり並んでいた壁にも、された額縁の跡だけが残っていた。
扉をけると、さな鈴が鳴った。
奥から髪の老が顔をした。
坂栄だった。
健司が名乗るに、坂は目を細めた。
「……健司くんか」
健司は驚いた。
「覚えてたんですか」
「町の子どもはだいたい覚えてるよ。特に、何度も写真を撮ったの子はな」
「僕はそんなに撮ってないですよ」
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「入学式も撮った」
坂は笑った。
「もな」
健司には記憶がなかった。
母と緒に撮った写真がにあったことだけは覚えている。
「もう閉めるんですね」
「歳だからな。昔みたいに、何でも写真館で撮る代でもなくなった」
坂は内を見回した。
「この辺も子どもが減ったよ」
健司はカウンターのに積まれた封筒を見た。
古いものには昭30代の付までかれている。
「こんな昔の写真まで残ってるんですか」
「注文して取りに来なかったものもある。族が引っ越したり、本がくなったりな」
坂はし寂しそうに笑った。
「捨てるのが苦でね」
その言葉を聞いた、健司はふと昔のことをいした。
もう半世紀くの話である。
今なら笑い話にできる気がした。
「そういえば僕、学の卒業写真だけもらってないんですよ」
軽い調で言ったつもりだった。
ところが坂の顔から笑みが消えた。
カウンターのに置かれていたも止まった。
健司の胸の奥で、忘れていた違が気に戻ってきた。
「覚えてます?」
坂は答えなかった。
その代わり、子からゆっくりちがった。
「ちょっと待ってろ」
の奥へ消えていく。
健司は、カウンターのに残された。
写真のことなど、もうどうでもいいはずだった。
それなのに臓の鼓がし速くなっている。
数分、坂が戻ってきた。
には古びた茶い封筒があった。
角は擦れ、は黄く変している。
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