"毎日パンを持ち帰る少女" 第4話
「するみたいです」
芳は黙って続きを待った。
「私が『今もパンだったよ』って言うと、おじいちゃんは『そうか』って言います。でもで言うだけだと、々『本当か』って聞くんです」
「だから見せるのね」
「はい」
「いつ頃から?」
「の終わりくらい」
っていたよりかった。
美が4の頃から、正蔵は孫にのパンを持ち帰らせていたことになる。
「どうして急に?」
「社会のに、戦争の話をしたんです」
美はそこで声をさくした。
「先が『戦争のあと、本ではべ物がりなかった』って教えてくれたから、でおじいちゃんに聞いたんです。そしたら、おじいちゃんが『おたちには分からん』って」
その晩、美は祖父に「今は学で毎がる」と話したらしい。
正蔵は笑わなかった。
「そんなわけあるか」と言った。
美が「本当だよ」と何度説しても信じず、最には「だったら持って帰って見せろ」と言われた。それ以来、美はほとんど毎、パンを半分だけ残すようになったという。
「全部じゃなくて半分なのは?」
芳が尋ねると、美はし恥ずかしそうに答えた。
「全部残したら、私がお腹すくから」
わず芳は笑いそうになったが、美が真剣な顔をしているので堪えた。
「おじいちゃん、見たパンはどうするの?」
「次の、お母さんが焼いたりするもあります。
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でも、おじいちゃんはあんまりべません」
「どうしてか聞いた?」
「回だけ」
「何て?」
美は祖父の調をまねるように、しい声を作った。
「『これはおのパンだから、わしのじゃない』って」
そのの放課、芳は職員で誌をきながら、しばらくを止めていた。
正蔵は飢えているからパンを欲しがっているわけではない。
孫の事を奪おうとしているわけでもない。
ただ、見たいのだ。
なぜそこまで見なければならないのか。
その疑問はまるばかりだった。
数、その噂がついに美本のに入った。
昼休み、美智子が何気なく言ったのである。
「原さん、でパン買えないなら、うちのパンあげようか?」
教が瞬静かになった。
美智子に悪はなかった。それどころか本としては親切のつもりだった。
しかし美の顔は真っ赤になった。
「いらない」
「でも毎持って帰るじゃない」
「違うもん」
「何が違うの?」
美は何か言おうとしたが、言葉がてこなかった。
やがて包みかけたパンを机に置くと、突然ちがり、教をびした。
芳はすぐにを追った。
階段の踊りで、美は壁の方を向いてっていた。
泣いてはいなかった。
けれど両をく握り、肩を震わせていた。
「原さん」
「うち、貧乏じゃないです」
「分かってるわ」
「お母さんもお父さんも働いてます」
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「先はってる」
「弟のご飯だってあります」
「うん」
美はそこで初めて振り返った。
「でも、おじいちゃんのこと言ったら、みんな笑うでしょう?」
芳は答えられなかった。
子どもたちは、70歳い老が「学で毎パンがることを信じられない」と聞けば、おそらく笑うだろう。
それは残酷だからではない。
彼らには、その信じられなさそのものが理解できないからだった。
その晩、原では夕の噌汁から湯気ががっていた。父親の敏夫は町から帰ったばかりで、作業着のままちゃぶ台に座り、節子は焼いた鯵を皿に分けていた。正蔵はいつもの所で黙って飯をべ、美も学であったことを誰にも話さなかった。
事が終わる頃、正蔵が何気なく尋ねた。
「今はパンじゃなかったのか」
美の箸が止まった。
「パンだったよ」
「じゃあ、どうした」
「べた」
正蔵はしそうな顔をした。
「全部か」
「うん」
「そうか」
それだけ言って、正蔵は湯呑みにを伸ばした。
るわけでも、責めるわけでもない。
その反応がかえって美には苦しかった。
翌は再びパンを半分持ち帰った。
正蔵は聞のに置かれた包みをき、いつものように表と裏を眺めた。そしてさく「今もたのか」と言った。
「たよ」
「全員にか」
「全員だよ」
「休んだ奴以は?」
「うん」
何度聞かれたか分からない質問だった。
美はし腹をてた。
「おじいちゃん、毎同じこと聞かなくてもいいじゃない」
正蔵のが止まった。
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