"毎日パンを持ち帰る少女" 第6話
「パンのこと?」
「はい。『本当にてるのか』って」
「先が持ち帰るなと言ったと説した?」
「しました」
「それでも?」
美は頷いた。
「おじいちゃん、聞にのことが載ってないか探してました」
芳は胸の奥がしくなった。
正蔵のを笑えば簡単だった。
しかし、度会ってしまった以、彼が単に疑りい老ではないことを芳はじていた。
そのの夕方、芳はを訪ねた。
調理員たちがきな鍋を洗っているところで、主任の女性が驚いた顔をした。
「田先、どうしました?」
「変なお願いなんですけど」
芳は事を簡単に説した。
主任はしばらく黙って聞いてから、棚のに残っていた未配膳のコッペパンを見た。
「余ったのが個ありますけど」
「いただいてもいいでしょうか」
「先がべるんですか?」
「いえ」
芳はし迷った。
「あるに、見せたいんです」
その夕方、芳は原を訪ねた。
節子が驚いて玄関へてきた。
「先、何かありましたか?」
「いえ。今は私用です」
芳は袋から本のコッペパンを取りした。
正蔵は茶のでラジオを聞いていた。
芳がパンを差しすと、老は怪訝そうな顔をした。
「何だ」
「今、学で余ったパンです」
正蔵は黙った。
「美さんだけじゃありません。52組の子どもたち全員に、今も同じパンがました」
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正蔵はパンを受け取らなかった。
芳は続けた。
「曜もがあります。曜もあります。献では曜はうどんですけど、曜にはまたパンがます」
節子が台所ので黙って聞いていた。
「学は、来週だけじゃありません。来も、その次のもをします」
芳はコッペパンをちゃぶ台へ置いた。
「なくとも、子どもたちが学へ来ているは、お昼を何もべられないというはありません」
正蔵の目が、パンへ落ちた。
「先」
「はい」
「それは国が決めてるのか」
「制度として続いています」
「のないの子もか」
「同じです」
「親が失業しても?」
芳はし驚いた。
「学では、同じをべます」
正蔵は何も言わなくなった。
その横で美が祖父を見ていた。
しばらくして正蔵はさくをすすり、乱暴な調で言った。
「分かった。もう持ってこなくていい」
美の表がるくなった。
「本当?」
「ああ。先にまでパン持ってこさせちゃ、みっともない」
「じゃあから全部べていい?」
「おの飯だ。最初から全部えばよかったんだ」
美は笑った。
芳もしした。
しかし、その晩から正蔵はをした。
正蔵のは翌になってもがらなかった。
季節の変わり目の邪だろうと族は考えていたが、齢もあって節子は所の医院へ診てもらうことにした。
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医師からは肺に異常はなく、静にしていれば配ないと言われたものの、正蔵はほとんど布団から起きがらなかった。
曜の授業が終わった直、美が職員へ駆け込んできた。
「先」
息を切らし、顔を赤くしていた。
「どうしたの?」
「おじいちゃんが、先呼んでこいって」
芳はちがった。
「具悪いの?」
「があります。でも、お医者さんは丈夫だって」
美は度息をえた。
「先に話しておきたいことがあるって言いました」
原へ着くと、正蔵は奥の畳に布団を敷いて横になっていた。窓はしいており、のの湿ったがいカーテンを揺らしていた。枕元には差しと薬の包みが置かれている。
「先、すまんな」
声は普段よりかった。
「いえ。お加減はいかがですか?」
「ぬほどじゃない」
節子が呆れたように言った。
「そういう言い方するから美が配するんでしょう」
正蔵はし笑い、それから芳へ目を向けた。
「あのパンのことだ」
芳は枕元に座った。
「はい」
「美に毎持って帰らせた。学には迷惑をかけたな」
「そんなことはありません」
「いや、迷惑だろう。決まりがあるんだから」
正蔵は井を見げた。
「わしはな、学を疑ってたわけじゃない」
その言葉に芳は黙った。
正蔵は息をえながら話し始めた。
「終戦の、節子は5歳だった」
節子の表が変わった。
「私?」
「ああ」
「お父さん、その話……」
「おは覚えてないだろう」
節子はさく頷いた。
正蔵は目を閉じた。
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