"毎日パンを持ち帰る少女" 第7話
「の夜、わせる物が何もなくなったがあった。米も芋もなかった。おが腹減ったって泣いてな」
節子は何も言わなかった。
「所を回った。どこも同じだった。最に農へって、芋を本もらった」
「そんなこと、度も……」
「言ってどうする」
正蔵は節子を見ることなく続けた。
「母ちゃんの帯をやった。あれ枚で芋本だ。それでもありがたかった」
節子の目に涙が浮かんだ。
「母さんの帯……」
「おはく切った芋をうまそうにった」
正蔵はそこで咳き込んだ。
美が慌ててを渡した。
「おじいちゃん、もういいよ」
「いいんだ」
正蔵は孫のへを置いた。
「この子が学で毎パンってるって聞いたな、最初は嘘だとった」
芳が静かに尋ねた。
「信じられなかったんですね」
「そうだ」
正蔵は苦笑した。
「戦争が終わってもう18だ。町にパンもある。スーパーまででき始めた。じゃ分かってるんだよ」
それでも、と正蔵は言った。
「子どもが学へけば、親が持ちでも貧乏でも、毎何かえる。パンが個ずつ当たる。そんな話だけは、どうしても信じきれなかった」
美が祖父のを握った。
正蔵は孫を見た。
「昨あった物が、今なくなる。今配ると言った物が、は来ない。わしらはそういうのを何度も見たからな」
芳は返す言葉を失った。
正蔵にとって「毎」
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という言葉は、芳たちが考えているよりずっとかったのだ。
度パンがたことを確かめてもがない。
翌もあるか。
次のもあるか。
それを確かめなければならなかった。
「だから、美さんに持って帰らせたんですね」
「ああ」
「でも、ご自分ではべなかった」
正蔵の元がわずかに緩んだ。
「ったらなくなるだろう」
芳は瞬が分からなかった。
正蔵は続けた。
「見えるところに置いとけば、そのの夜くらいはえるんだ。今もこの子はえたんだなって」
茶箪笥のに置かれていた乾いたパン。
芳はようやく理解した。
あれは保ではなかった。
老が孫のを奪わず、自分の空腹を満たすこともなく、ただ眺めていた理由。
「証拠だったんですね」
芳が言うと、正蔵は目を閉じた。
「そうだな」
しを置いてから、老はぽつりと言った。
「わしには、証拠がったんだろうな」
正蔵はそれから4ほどでががった。
まだへるほどの元気はなかったが、茶のへ座り、聞を読めるようになった。節子が粥を作っても「病扱いするな」と文句を言うようになり、族もようやくした。
曜のにはコッペパンがた。
美は久しぶりにパンを半分残した。
芳が気づいてづいた。
「原さん」
女はし困ったように笑った。
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「今だけ」
「おじいさんに?」
「はい」
「もう持ってこなくていいって言ってなかった?」
「言ったけど」
美は包みながら答えた。
「元気になったお祝いです」
芳はそれ以何も言わなかった。
そのの夕方、原では正蔵が茶のに座っていた。
美が鞄からパンを取りすと、正蔵は眉をひそめた。
「何でまた持ってきた」
「今だけ」
「先にられるぞ」
「先、何も言わなかったもん」
「見てたのか」
「うん」
正蔵はパンを受け取った。
いつものように聞へ置くのだろうと美はった。
しかし、そのは違った。
正蔵はパンをつにちぎった。
「お母さん、何か塗るものある?」
節子が台所から顔をした。
「マーガリンならあるけど」
「それでいい」
節子は驚いた顔をした。
「べるの?」
「パンなんだからうだろう」
誰より驚いたのは美だった。
節子がパンを軽く炙り、マーガリンをく塗った。
正蔵はかじった。
くなり始めたコッペパンが、さく音をてた。
「どう?」
美が聞いた。
正蔵はすぐには答えなかった。
ゆっくり噛み、み込んでから言った。
「まあ、悪くないな」
節子が笑った。
「毎美が持ってきたは度もべなかったくせに」
「の飯だからな」
「今は?」
正蔵は孫を見た。
「今はもらったんだ」
美は嬉しそうに笑った。
正蔵はもうべた。
「おはいい代にまれたな」
美の笑顔がしだけ消えた。
祖父の言葉のを、完全に理解できたわけではなかった。
しかし、以のように「昔の話は分からない」
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