"知らない家族が守った家" 第10話
忠雄は最初、美津へたかった。
美津だって本当は、杉浦が戻らなければこのにみ続けたかったはずだ。
浩も正も喧嘩した。
澄子と美津も台所で何度も腹をてた。
それでも、つのだけ、同じ根ので暮らした。
それだけだった。
戦争は、の暮らしにきな境界を引いた。
帰るがある者と、ない者。
持ち主と、借りる者。
残った者と、戻ってきた者。
だが活のでは、その境界だけできれいにを分けることはできなかった。
には所者がいる。
その権利は守られなければならない。
方で、今夜眠る所を失えば困るもいる。
どちらかを「正しい」、もう方を「違った」と決めれば分かりやすい。
だが昭27のあので起きたことは、それほど単純ではなかった。
杉浦忠雄は、自分のへ帰った。
美津も、やがて自分たちだけの借へ移った。
そして健が守った仏壇は、最には杉浦へきちんと戻った。
それでも、が返ったを境にのが消えたわけではない。
健が直した根ので忠雄は暮らし、正が毎朝線をげた仏壇へ、には忠雄自の位牌が置かれた。
が暮らしたというものは、登記簿のように本の線で区切れるものではなかった。
葬儀のあと、正が帰ろうとした、浩は玄関まで見送った。
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「また来いよ」
「今度は正かな」
「仏壇に挨拶しに?」
「それもある」
正は靴を履きながら笑った。
「おにもな」
浩も笑った。
玄関のには、昔と同じ灯籠があった。
庭の柿のもまだ残っている。
は何度も修理され、壁も窓も昭27の頃とは変わっていた。
それでも浩には、父が初めて戻ってきたのことがはっきりいせた。
庭にらない子どものが干されていたこと。
父が鳴ったこと。
そして仏壇のに、さな正が正座していたこと。
あのは、自分のだからをわせていたのではなかった。
自分のではないとっていたからこそ、をわせていた。
その違いを、忠雄が理解するまでにはがかかった。
だが理解したあと、父はを誰かに譲ったわけではない。
ただ、まで階を貸した。
保証になった。
々夕飯を緒にべた。
その程度のことだった。
浩は、それで分だったのだとうようになった。
誰かを救うために、自分のすべてを差しす必はない。
自分の権利を守るために、相をとして見なくなる必もない。
帰るを持つ者と、今夜眠る所を探す者が同じ玄関で会った、ほんのしだけ所を分けることもできる。
昭27の。
つの族は、そうしてつのでを待った。
そしてそのが終わったあとも、彼らのに残ったものだけは、誰にも接収することができなかった。
完
※終戦の接収宅と刻な宅を背景に構成した創作です。
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