"出生届を止めた助産婦" 第11話
だから誰も、あの取り違えを「良いことだった」とは言わなかった。
それでも。
起きてしまった違いので、は何を選ぶか。
誰を責めるか。
誰を守るか。
失ったをどう受け止めるか。
そこから先は、ので決めることができた。
昭30。
まだの産が、のと記憶にく頼っていた代。
病院のような腕輪もなかった。
すぐ確かめられる検査もではなかった。
つの記憶違い、つの判断が、のを揺らすことがあった。
あの。
ハルは清吉のでをげた。
「この子の届だけは、あと、待ってください」
その言葉で守ろうとしたものは。
戸籍の違いだけではなかったのだろう。
静が3抱いた子への気持ち。
千代が3抱いた幸子への気持ち。
そして、本当の娘を取り戻したあとにも消えなかった、もうの赤子への。
それらは役の帳面にはも残らなかった。
けれど何経っても。
の娘が互いを族のようにい。
の母親が互いの娘の幸せを願い。
祭りのには同じ髪飾りを選び続けた。
それこそが、あの夜から残ったもうつの記録だった。
夕暮れの庭で、幸子の孫と子の孫が同じ赤い髪飾りをつけてっていた。
「こっちだよ!」
「待って!」
その声を聞きながら、静が目を細めた。
「似てるねえ」
「誰に?」
千代が尋ねる。
静はし考えたあと、首を振った。
「誰でもいいわ」
4が笑った。
の向こうへが沈み、々から夕餉の煙ががり始める。
あのの夜にまれたの女の子は、もう祖母になっていた。
肩の痣はとっくに消えた。
曲がっていた指も、になる頃にはほとんど分からなくなった。
けれどつのを結んだものだけは、消えなかった。
にはけない。
戸籍にも残らない。
それでも確かにあった。
度抱いた命を、もう「らない子」には戻せなかったたちの記憶である。
完
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