"退職したら、双子を任された" 第4話
偽造枚で入園否が決まるわけではない。それでも本の名を勝にいた事実は消えなかった。
隆は「孫のため」と繰り返した。しかし話を聞くうち、別の事が見えてきた。
智也夫婦は、郊に戸建てを購入していた。変利の宅ローンに加え、双子の保育料、台の維持費がかかる。耶が復職しても、計に余裕はない。
隆は退職の私が双子を預かれば、保育料と送迎費を百万円く減らせると計算していた。その部を、智也から毎万円ずつ受け取り、自分たちの老資へ入れる話まで息子としていた。
「私は円ももらっていないのに、あなたが受け取るの?」
「の費や費が増える。俺が送迎をするもある。計として受け取るんだ」
実際には、隆は朝にをて午に帰る。双子の保育は私で、へかなければ、事や遊具の費用も私が管理することになっただろう。
智也は父との話を認めた。
「保育園よりくて、母さんにも遣いが入るとってた」
「私に聞かず、私の遣いまで決めたの?」
息子は黙った。彼に悪がないことが、かえって苦しかった。母親のには、本の価格も希望もないとっている。
私は計簿をした。私の退職、受まではある。貯はあるが、隆の収入だけに頼るつもりはない。
広告
の仕事は与がいわけではないものの、居費の補助があり、自分の活費を自分で賄える。
隆は「夫婦の貯がある」と言った。
「その貯から、智也の保育費を助けるなら、夫婦で相談するべきでしょう。私の無償労働を売って受け取るのは違う」
私は確認の原本を保育園へ返し、署名が本のものではないと説した。園は送迎者登録を度にし、耶と智也へ再提を求めた。
隆は庭の恥をへしたとった。
「恥ずかしいなら、私の名をかなければよかった」
夫婦のに初めて、退職の活ではなく、これまでの活全体を見直す沈黙がまれた。
その沈黙は晩では終わらなかった。隆は寝へ布団を持ち込み、私は居の隣ので眠った。朝になっても、いつものように夫の嫌を直すための噌汁は作らなかった。
、智也がで来た。宅ローンの返済表を持ち、保育料が加われば毎赤字になると訴えた。私は数字を緒に見た。赤字の原因は保育料だけではなく、に買い替えた型のローンと、ほとんど使っていない郊のトランクルームだった。
「は双子がいるから必だ」
「必なのはであって、今のきさと価格とは限らないでしょう」
智也は父から、族が増えたら広いを持つものだと言われて購入したという。
広告
も、子ども部をつ確保するなら今しかないと隆に勧められた。息子は自分で契約したが、父のいう“普通の庭”を追いかけていた。
私は返済を肩代わりしなかった。代わりに、の計相談窓と古の査定先を調べ、連絡先を渡した。智也は「を貸してくれる方がい」と言った。
「い方法を選び続けて、最に私を無料の保育園にしたのよ」
息子は反論できなかった。、夫婦でを台放し、トランクルームを解約した。毎の支は減ったが、保育料の全額には届かなかった。それでも、りない分を誰かの無償労働で埋める以の方法が初めて見えた。
隆はそのことを、自分の助言を否定されたと受け取った。息子に恥をかかせたと私を責めたので、私は「あなたが守りたいのは智也の活ではなく、自分の助言が正しかったというでしょう」と言った。
夫はをげなかったし、鳴り続けもしなかった。ただ、私を見ないままテレビをつけた。い結婚活で最もかった拒絶は、暴力ではなく、話をなかったことにする沈黙だった。
私はテレビを消さなかった。そのに座って理解させようとすることもやめ、引っ越し用の段ボールを組みてた。
発まで週、私は荷物を理した。町が用する居は具付きのLDKで、きな物は必ない。
本と、使い慣れた包丁、族写真を数枚だけ持っていくことにした。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
結婚初夜、義母を助けた私を殴った夫の誤算
結婚初夜、夫の実家で義父が義母の首を絞める現場を目撃した公認会計士の直美。助けようとした彼女を、信じていた夫・翔太は平手打ちし、「見て見ぬふりを覚えろ」と命じた。直美は義母を病院へ運ぶが、夫一家は弁護士と金の力を使い、彼女の口を封じようと動き始める。そんな中、義母が密かに託していた記憶装置が見つかった。嫁姑|絶縁|親子関係|介護2.6万字5 195 -
完結第25話
母との同居後、妻が倒れた――医師が私だけ呼んだ理由
父を亡くした春樹は、一人暮らしの母・節子を心配し、妻の夏美と三人で暮らし始める。家事も母の通院もこなす妻を見て、同居はうまくいっていると思っていた。ところがある朝、夏美が突然倒れ、救急搬送される。医師に一人だけ呼ばれた春樹は、妻の体に起きていた異変を知らされる。変更された婦人科の予約、開かれなかった白い封筒、妻に任せきりだった家の用事。自分は家族を守っているつもりだったのに、何を見落としていたのか。人生逆転|嫁姑|夫婦|親子関係3.1万字5 276 -
完結第16話
75万円を借りに来た私に、銀行が告げた65億円の秘密
十四年間、洋服直しの仕事を続けてきた石田牧は、自分の店を開くため、不足する75万円を借りに銀行を訪れた。ところが支店長から告げられたのは、自分に約65億円の信託財産があるという信じがたい事実だった。亡き母は大手物流会社の創業家の娘だったという。なぜ母は貧しい暮らしを選び、巨額の財産を隠し続けたのか。戸惑う牧の前に、初対面の叔父が現れ、21億円で株式を買い取ると申し出る。突然手にした財産の裏には、家族が長年隠してきた秘密と思惑があった。真実|第二の人生|親子関係|金銭問題2.3万字5 481 -
完結第15話
50万円で嫁がされた私、6年後に見た父の姿
昭和63年、教師になることを夢見ていた19歳の藤崎千春は、父が受け取った50万円の結納金と引き換えに、東北の山村へ嫁がされる。進学を諦め、過酷な農作業に追われる毎日。ところが、段ボールの底に隠していた受験参考書を義母に見つけられた日、千春の運命は思いがけない方向へ動き始める。夫と義父母の支えで夢を取り戻した千春は、6年後、教師となって実家へ帰る。しかし庭先で目にしたのは、かつて自分の進学を許さなかった父の、信じられない姿だった。第二の人生|親子関係|金銭問題2.4万字5 420 -
完結第20話
父の死後、姉に追い出された私が嫁いだ農家の秘密
五年間、父の介護を一人で担ってきた三十三歳の美咲。ところが父の死後、二人の姉は遺産の独占を企て、美咲に実家から出ていくよう迫った。失意の中、美咲は交際相手の米農家・宮田大輔との結婚を決意する。しかし嫁ぎ先には七千二百万円もの借金があり、姉たちからも貧乏農家の嫁だと嘲笑される。それでも夫と田んぼを守ろうと決めた美咲に、大輔は「明日、俺の仕事場を見てほしい」と告げる。翌朝、連れていかれた巨大な倉庫で、美咲は思いもよらない光景を目にする――。夫婦|相続|絶縁|親子関係2.6万字5 476 -
完結第20話
朝八時までのヒーロー弁当
工場の門前で40年間、社員たちに弁当を作り続けてきた正夫としず子。ところが、新しい社員食堂の開設を機に、部長から突然取引を打ち切られてしまう。売れ残る弁当、痛む膝、減り続ける売上。店を閉める覚悟をした二人だったが、ある日、古くからの常連が昼食の注文にやって来る。それをきっかけに、店先には再び社員たちの姿が増え始めた。一方、工場では思いがけない問題が起ころうとしていた。感動|真実|裡の顔|金銭問題2.9万字5 286 -
完結第20話
死んだ母を名乗る女
母を亡くして二年。三十歳の浅沼美咲は、空き家となった実家を片付けている最中、郵便配達員から思いがけない言葉を告げられる。「先月もお母様にお会いしましたよ」。亡くなったはずの母を名乗り、郵便物を受け取っている女がいるというのだ。家の中に残された生活の痕跡、天井裏から聞こえる不審な物音、そして母宛てに繰り返し届く現金書留。兄とともに調べ始めた美咲は、疎遠だった叔母の影と、母の遺産をめぐる不穏な思惑に気づく。死者の名を使ってまで隠そうとした秘密とは。真相|親子関係2.3万字5 1176 -
完結第10話
手取り23万円の俺、旅館で妻が「お嬢様」と呼ばれた
手取り月23万円のトラック運転手・中村和也は、妻の彩佳と娘の結衣を何よりも大切にしていた。幼い頃、亡き父と交わした温泉旅行の約束を果たすため、毎月五千円を五年間積み立て、ようやく三十万円を貯める。結婚記念日に彩佳が選んだのは、山奥に佇む名門旅館「月影楼」。質素な暮らしの自分たちには場違いに思えたが、玄関に到着した途端、従業員が彩佳に深々と頭を下げた。「お嬢様、お帰りなさいませ」。妻が長年隠してきた過去とは何なのか。家族への愛と、思いがけない運命の再会を描く物語。人生逆転|夫婦|第二の人生|親子関係2.4万字5 1735