"昭和31年、給料日に消える父の秘密" 第4話
主な取引先だった印刷メーカーが仕入れ先を変更し、納入量が半分くまで落ちた。さらに別の会社からの入も遅れ、材料代と気代を払えば、末に現が残らない状態が続いていた。
「最初は3遅れだった」
正は淡々と話した。
「何が?」
文子が聞く。
「料」
恵美はちゃぶ台のの茶い封筒を見た。
「でも、毎持って帰ってきてたじゃない」
「全部会社のじゃない」
正は苦笑した。
9。
会社から支された額は、普段より3千円ほどなかった。
社は、
「来には必ずす」
とをげた。
正は帰り、計を売った。
分を補い、いつもの額にしてへ持ち帰った。
「計……」
文子が呟く。
「最初は度だけだとった」
しかし翌も部しか支払われなかった。
次はコートを売った。
さらに次のは革鞄。
古いカメラ。
具。
そして今売った万。
「それで毎、同じにしてたの?」
文子の問いに、正は頷いた。
「計が狂うだろ」
「だから?」
「子どもの学のもあるし、米も買わなきゃならない。急に減ったなんて言っても困るだけだ」
母はしばらく父を見ていた。
その目には驚きもあった。
しみもあった。
けれど恵美が像していた「ありがとう」というはなかった。
むしろ、母の顔は次第にりへ変わっていった。
「したことじゃない」
正が言った。
その瞬だった。
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「したことじゃない?」
文子の声が鋭くなった。
正が顔をげる。
「何を売ったの」
「今言っただろ」
「全部言って」
「文子」
「全部」
正は困った顔をした。
けれど母は引かなかった。
「計」
「ああ」
「コート」
「ああ」
「革鞄」
「そうだ」
「カメラ」
「うん」
「具」
「しだけ」
「には?」
父は黙った。
「にもあるの?」
「釣竿」
母の目に涙が浮かんだ。
「あれ、お父さんからもらった物でしょう」
正の父親は戦もなくくなっている。
形見として残った数ない物のつだった。
「使ってない」
「そういうことじゃない!」
文子の声がに響いた。
浩司が隣の部からそうに顔をした。
正は眉を寄せた。
「子どもので声すなよ」
「あなたが言うの?」
母の涙が頬を伝った。
「私たちは何もらずに、普通に料がてるとって暮らしてたのよ」
「だから、それでいいだろ」
「よくない!」
「何がだ」
「今し余ったからって、私、この魚を買ったのよ」
母は泣きながら言った。
「恵美の靴も買った。浩司にしい鉛だって買った。あなたの計がなくなってるなんてらずに」
「必な物だっただろ」
「そういう話じゃない!」
父は言葉を失った。
母は涙を拭った。
「族なのに、どうしてで普通のふりをするの?」
その言で、部が静かになった。
正は何も言えなかった。
「あなたは私たちを守ってるつもりかもしれない」
文子は続けた。
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「でも私は、族からされてたみたい」
「そんなつもりじゃ」
「分かってるわ」
母は声を落とした。
「分かってるから余計に腹がつの」
正は料袋を見つめた。
恵美も父を見ていた。
自分の物を売って計を守る父。
それは派なことのようにもえた。
けれど母の言うことも分かった。
父は族が苦しまないように、
族から苦しむ権利まで取りげていたのだ。
翌朝。
いつも通り父はへた。
母は弁当を作った。
正が玄関で靴を履いていると、文子がろから声をかけた。
「次の料」
父が振り向く。
「なかったら、ないまま持って帰ってきて」
「文子」
「約束して」
父は返事をしなかった。
ただ弁当を持って、
「ってくる」
と言った。
母はその背へ、
「約束だからね」
ともう度言った。
それから川の暮らしはし変わった。
母は節約を始めた。
といっても、もともと贅沢などしていない。
魚のを減らす。
惣菜は買わない。
鹸はさくなったものをしい鹸へ押しつけ、最まで使う。
聞は父がどうしても必だと言ったのでやめなかったが、雑誌は買わなくなった。
恵美も友達から誘われていた映画を断った。
「ってきなさいよ」
母は言った。
「いい」
「お遣いなら」
「いらない」
恵美は本当はきたかった。
学では、友達が見た映画の話を翌週ずっとする。
置いていかれるのは嫌だった。
けれど父の万が古物のガラスケースへ並ぶ面をいすと、どうしてもおを使う気になれなかった。
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