"昭和31年、給料日に消える父の秘密" 第7話
自分が売った計はもうなかった。
コートも。
万も。
何となくのへづいた。
主がから気づいた。
「今は何だい」
正は首を振った。
「今は売る物ないよ」
「そうか」
「いや」
正はし笑った。
「もう売らない」
主は何も聞かなかった。
正はをれた。
へ着いたのは640分。
玄関のでしばらくった。
から浩司の声がする。
恵美が何か注している。
文子が鍋をかす音。
以なら、転職先が決まるまで何も言わなかっただろう。
族をにさせたくない。
男としてけない。
自分で何とかすればいい。
そうったはずだ。
しかし正は引き戸をけた。
「ただいま」
文子が台所から顔をす。
「お帰り。今はしいのね」
正は靴を脱がずに言った。
「文子」
「何?」
「仕事、なくなる」
母のが止まった。
恵美も浩司も父を見る。
正は気まずそうに笑った。
「来いっぱいで辞めることになった」
誰もすぐには言葉をせなかった。
父は続けた。
「今度は先に言っとく」
その言で、文子の表がし緩んだ。
「そう」
「驚かないのか」
「驚いてるわよ」
「らないのか」
「あなたが決めたことじゃないでしょう」
「まあ」
文子は鍋のをめた。
「じゃあから考えましょう」
「何を」
「全部」
「全部?」
「次の仕事。今の計。残ってる料。あなたの退職があるのか。全部よ」
正は呆気に取られた。
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恵美が笑った。
「お母さん、いね」
「誰かさんが1で隠すからくなったの」
正もし笑った。
その夜。
川では初めて、父の失業について族全員で話した。
翌から正は仕事を探し始めた。
といっても、求雑誌が豊富にある代ではない。
職業定所へき、りいを頼り、町の掲示を見て歩く。
「旋盤18」
と言えば興を示す会社はあった。
しかし正は36歳。
若い員より賃がくなる。
さらに族持ちとなれば、会社側も簡単には採らない。
「若いのが欲しいんだよ」
そう言われた。
別のでは、
「夜勤なら」
と提示された。
文子は、
「夜でも仕事なら」
と言ったが、正が断った。
「恵美も浩司もまださい。俺まで昼寝てたら、族で飯うがなくなる」
以の正なら、料だけで決めていたかもしれない。
9半ば。
宅から連絡があった。
「俺のりいが働いてる械修理で、探してるぞ」
「修理?」
「の旋盤やプレス直す仕事だ」
「俺、修理じゃない」
「お、の械まで直してただろ」
確かに正は、自分の担当械だけでなく、の古い旋盤が止まればよく修理していた。
休には所の自転や具まで直す。
宅は言った。
「度くだけってみろ」
翌、正は面接へった。
社は50代の柄な男だった。
正のを見て、
「具、自分の持ってる?」
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と聞いた。
「にし」
「見せてもらえるか」
そのの夕方。
正は押し入れから具箱をした。
数か、売ろうとしたものだった。
呂敷を解く。
油の染みた箱。
には使った具が並んでいる。
売った分だけ空いている所もある。
正はその隙を見つめた。
文子が横へ来た。
「使うの?」
「ああ」
「売らなくてよかったわね」
「……そうだな」
しい会社で具箱を見せると、社は本ずつに取った。
「入れしてるね」
「使う物だから」
「械見るの好き?」
「まあ」
「じゃあ週、試しに来る?」
正は驚いた。
「いいんですか」
「旋盤より料はしがるけどな」
「構いません」
「本当に?」
正はし考えた。
以なら、
「族をわせるにはりない」
と即座に断ったかもしれない。
けれど今は違った。
「で相談します」
社が笑った。
「それがいい」
帰宅した正は、料や勤務、仕事の内容を全部族へ話した。
文子は帳面をいた。
「これなら……し苦しいけど何とかなる」
「恵美のがある」
正が言う。
恵美は驚いた。
「私?」
「2だろ」
「別にかなくても」
「馬鹿言うな」
「でも」
父はしった顔をした。
「子どもが親の失業で学諦めるな」
母がすぐ言った。
「そうやってまた1で背負わない」
正が黙る。
「へくかどうかは恵美が決める。でもおのことはそのみんなで考える」
正は苦笑した。
「分かったよ」
翌。
正はしい会社へ返事をした。
「お願いします」
10から、械修理会社で働くことになった。
しい仕事は、正がっていたより難しかった。
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