"昭和33年、父が隠した高校合格通知" 第2話
「それ……どこにあったの」
「仏壇の引きし」
「なんで?」
キヨにも分からない。
修は封筒を奪うように受け取り、震える指で封を切った。
から枚のがてきた。
目。
《格》
その文字を見た瞬、体の奥から何かが気に込みげた。
受かった。
自分は受かったのだ。
宮原先の言った通りだった。
もっと勉できる。
へける。
そうったのは、ほんの瞬だった。
すぐに、別の疑問が胸を埋めた。
「これ、いつ来たの」
「らないわよ」
母は青ざめていた。
修は封筒の消印を見た。
。
自分が最初に、
「来てない?」
と聞いただった。
修は仏壇の引きしを見た。
その、誰がこの封筒を隠したのか、ほとんど分かってしまった。
夕方まで待つが、あまりにもかった。
正吉が製材所から戻った、はもう暗くなっていた。
いつものように作業着に屑をつけ、肩から拭いをげて玄関へ入ってきた。靴を脱ぎ、囲炉裏のある居へ来たところで、正吉のが止まった。
ちゃぶ台のに、格通が置かれていた。
その向こう側には修。
横にはキヨが座っている。
子と浩は母に言われ、奥の部へかされていた。
正吉は通を見た。
そして、何も言わず作業着の着を脱いだ。
「父ちゃん」
修が呼んだ。
「これ、ってた?」
正吉はしばらく答えなかった。
「ってたんだろ」
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「ああ」
キヨが息を呑んだ。
「あなた……」
修は拳を握った。
「に来てたの?」
「ああ」
「俺、毎聞いたよな」
正吉は着を柱の釘へ掛けた。
「聞いた」
「来てないって言ったよな」
「言った」
それだけだった。
言い訳すらしない。
修ので何かが弾けた。
「なんで隠したんだよ!」
正吉は黙っている。
「落ちたってことにしたかったのか!」
否定しなかった。
「俺が落ちたとって諦めればいいとったのかよ!」
「修」
母が止めた。
「母ちゃんは黙ってて!」
修は父から目をさなかった。
「受けるだけなら受けろって言ったじゃないか!」
ようやく正吉がをいた。
「受けるだけならな」
「何だよ、それ!」
「は試験に受かって終わりじゃない」
正吉の声もくなった。
「入学がいる。制がいる。教科がいる。毎松本までく汽賃だっている。だぞ」
「分かってる!」
「分かっとらん!」
正吉が初めて鳴った。
「、おはにを入れん。には子も浩もいる。田んぼからが湧いてくるわけじゃないんだぞ!」
修は唇を噛んだ。
父の言っていることが全く理解できないわけではない。
だからこそ腹がった。
「だったら最初からそう言えばいいだろ!」
「何を」
「がないって!」
修は格通を掴んだ。
「俺に話せばいいじゃないか! なんで勝に隠すんだよ!」
正吉は目を逸らした。
その態度が、修には耐えられなかった。
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「建具の親方には話してある」
突然、正吉が言った。
修は言葉を失った。
「何?」
「から入れてもらえる」
「俺が?」
「ああ」
「いつ決めたの」
「先だ」
「受験するじゃないか!」
「職をつ押さえておいただけだ」
「俺に聞きもしないで?」
「の子どもに何が分かる」
その言が、修の胸へ突き刺さった。
だから何も決められない。
子どもだから父の言うことを聞け。
それならなぜ受験させたのか。
なぜ期待させたのか。
「父ちゃんには分かるのかよ!」
修はちゃぶ台を叩いた。
湯呑みが倒れそうになり、キヨが慌てて押さえた。
正吉もちがった。
「何だと」
「俺が何したいか、父ちゃんに分かるのかよ!」
「っていくには仕事がるんだ!」
「俺は働きたくないなんて言ってない!」
「だったら――」
「俺は勉したいって言ってるんだ!」
部が静まり返った。
正吉は何か言おうとした。
だが結局、を閉じた。
修は父のその沈黙が嫌いだった。
るならる。
反対なら反対。
がないならがない。
どうして何も言わず、全部自分で決めるのか。
その晩。
修は布団を敷かなかった。
学で使っていた古い鞄へ、着を2枚、シャツを1枚、数学の参考を入れた。財布には、正にもらった遣いがわずかに残っている。
母が気づいた。
「何してるの」
「てく」
「どこへ」
「らない」
「そんな馬鹿なこと言わないで」
「ここにいたくない」
キヨが腕を掴んだ。
「夜よ。はまだ寒いのよ」
「放して」
「修!」
父は鉢のにいた。
聞を広げたまま、度もこちらを見なかった。
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