"昭和33年、父が隠した高校合格通知" 第5話
しして、納の隅に置いてあった古い箱から、冊のい本を取りした。
表は擦れ、角が丸くなっている。
修が見ると、古い算術の参考だった。
「これ……」
「俺のだ」
正吉は言った。
「捨てられなかった」
修は初めてった。
父にも、学へきたかった痕跡が残っていた。
「通が来た」
正吉は続けた。
「嬉しかったよ」
その言葉に、修は何も言えなかった。
「でも次にのことを考えた。入学、制、汽賃。子も来は学だ。浩もいる」
正吉は目を伏せた。
「それで仏壇のに座って、何も封筒を持ってた」
「それで隠した?」
「ああ」
「なんで仏壇なんだよ」
「に隠す所がいつかなかった」
正吉は苦笑した。
「それに、親父の位牌がそこにあった」
修は目を見いた。
「じいちゃんの?」
「ああ」
「何考えてたの」
正吉はし黙った。
「おもこうだったのかって」
修の胸が詰まった。
正吉は祖父の位牌ので、自分が番憎んだ為を、自分の息子へしようとしていた。
「目はな」
正吉が言った。
「になったら渡そうとった」
「……」
「目もそうった」
修は聞いていた。
「目、おが『今も来てない?』って聞いた、もう言えなくなった」
「なんで」
「回嘘ついたら、次の嘘の方が簡単だった」
正吉は自嘲するように笑った。
「気がついたら、俺が番嫌ってた親父と同じ顔してた」
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修はしばらく何も言えなかった。
「ごめん」
突然だった。
修は父を見た。
正吉は目をわせなかった。
「卑怯だった」
修の喉がくなった。
けれど、許す気にはなれなかった。
「じゃあっていいの?」
そこが番事だった。
正吉は答えなかった。
修は悔しくなった。
「結局それだろ」
「修」
「謝るだけなら簡単じゃないか!」
「簡単じゃねえ!」
正吉が声を荒げた。
「かせたいんだよ!」
修はきを止めた。
父は荒い息を吐いた。
「かせたいに決まってるだろ!」
納のに、父の声が響いた。
「でもがないんだ!」
それは修が初めて聞く、父の本当の声だった。
その夜、キヨが箪笥の奥から冊の帳面をした。
紺の表が擦れた、計簿だった。
「もう隠しても仕方ないでしょう」
キヨは言った。
ちゃぶ台には正吉、修、母。
子と浩もしれたところに座っている。
「も聞いておきなさい」
母は子どもたちを追いさなかった。
「こののおのことだから」
修は計の数字を、初めて具体に見た。
父の製材所の当。
米や野菜を売った収入。
の内職。
その横に、肥料代、農具の修理、米以の費、料費、学の費用、税、医者代。
数字は細かくかれていた。
余るなどほとんどなかった。
になると赤字になる。
それを農繁期の収入で埋める。
「これが」
キヨが言った。
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「今は製材所の仕事がし減るって、お父さんが言われてる」
修は初めて父を見た。
正吉は黙っている。
「の入学は?」
修が聞いた。
母が額を言った。
修にはだった。
「制と教科は?」
さらに数字が増えた。
「汽の定期は?」
父が答えた。
それもならかなりの額になる。
修は黙った。
父の反対がただのではないことは分かった。
それでも、父のやり方が正しかったとはわない。
「俺、聞配達する」
修が言った。
正吉が顔をげた。
「松本まで汽だぞ。何に起きるつもりだ」
「で配るならできる」
「学で居眠りするだけだ」
「やってみないと分からない」
キヨも言った。
「私も内職を増やすわ」
正吉が嫌そうな顔をした。
「そうやって皆で無理するのか」
修は父を見た。
「父ちゃんで決めるよりいい」
正吉が黙った。
「子だって来学だろ。浩だっている」
「だから何」
「俺だけって、が何か諦めるのは嫌だ」
子が急に言った。
「私は別にいいよ」
修が振り返った。
「何が」
「私、きたいなんてまだってないし」
「まだ分からないだろ」
「だから今、兄ちゃんのために使っていいよ」
「そんな言い方するな」
修はわずく言った。
子が黙った。
今度は8歳の浩が、
「俺、靴まだ買わなくていい」
と言った。
同が浩を見た。
「この、穴いたって言ってたじゃない」
母が言う。
「底に板入れれば履ける」
修の胸が痛くなった。
自分が学することで、族が斉に何かをし始める。
それは望んでいた形ではなかった。
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