"昭和33年、父が隠した高校合格通知" 第8話
「おはどうしたい」
とは正反対だった。
「まだ迷ってる」
「じゃあ迷え」
「それだけ?」
「俺が決めるとまたるだろ」
修は笑った。
「そうだけど」
正吉は真面目な顔に戻った。
「のことなら、来る範囲はす」
修は父を見る。
「無理しなくていい」
「無理するかどうかは俺が決める」
「それ、俺が言ったやつじゃん」
「そうだったか」
修は数週考えた。
そして最終に、学へはまないことを選んだ。
県内の械会社から求がていた。
設計補助の仕事で、で学んだ数学も活かせる。
担任は惜しがった。
「本当にいいのか」
修は頷いた。
「はい」
「のためか?」
その問いにはし考えた。
「それだけじゃありません」
もしなら、のために働くことを「を奪われること」だとったかもしれない。
今は違った。
へき、自分でを考え、学というもった。
そので、今は働くことを選ぶ。
それなら、父に決められた奉公とはが違う。
卒業がづいたある夜。
修は父へ言った。
「俺、学かない」
正吉は薪を割るを止めた。
「そうか」
「会社に入る」
「そうか」
「反対しないの」
「なんで」
「学けって言わない?」
正吉は議そうな顔をした。
「おが決めたんだろ」
「うん」
「じゃあいい」
あまりに簡単だった。
修はし拍子抜けした。
「父ちゃん」
「なんだ」
「もし俺が学くって言ってたら?」
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正吉は薪を本拾った。
「どうにかした」
「どうにかって?」
「田んぼ枚売るとか」
修は驚いた。
「そこまでしなくていいよ」
「だから、おがかないって言うなら売らなくて済む」
父は平然と言った。
修は笑った。
「それ、んでるだろ」
「しな」
はまた笑った。
けれど修には分かっていた。
こので、父は変わった。
そして自分も変わった。
、とも相の考えを聞かず、自分の正しさだけをぶつけていた。
今は違う。
がないならがないと話す。
きたいならきたいと言う。
迷っているなら迷っていると言う。
それだけのことが、族にはと難しかったのだ。
昭36の。
修はを卒業し、県内の械会社へ就職した。
初めての料。
茶い封筒を受け取った、修はしばらくけられなかった。
学を卒業してすぐ働いていれば、ににしていたはずの。
父はそのを、
「おはを稼がない」
と言った。
確かにそうだった。
修自、計に負担をかけた。
聞配達で稼いだ額など、通学費や学用品でほとんど消えた。
けれど今、修はで学んだことを活かせる仕事へ就いている。
最初は図面の写しや簡単な計算ばかりだった。
それでも、械の設計図にかれた数字を見るのは楽しかった。
初任をもらった週末、修はへ帰った。
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夕。
父のへ茶封筒を置いた。
「何だ」
「料」
「見れば分かる」
「に入れる分」
「全部はいらん」
「じゃあ、いくら」
正吉はし考えた。
「自分で決めろ」
修は吹きした。
「またそれか」
「おのだ」
「にも入れるよ」
「だから額は自分で決めろ」
修は封筒から何枚か取りし、母へ渡した。
「これでいい?」
キヨは困ったように笑った。
「お父さんに聞きなさい」
「父ちゃんは自分で決めろって」
子が横から、
「じゃあ全部私にちょうだい」
と言った。
「おにやるくらいなら浩にやる」
「なんでよ」
族が笑った。
その夜。
仏壇へ線をげた修は、ふとあの引きしをけた。
数珠の奥に、枚の古いが入っていた。
格通だった。
よりし黄ばんでいる。
「まだ取ってたの」
ろにいた母が言った。
「捨てられないでしょう」
修はを眺めた。
、自分から隠されていた通。
当は、それを見るだけで腹がった。
今は違う。
父のしたことが正しかったとうわけではない。
、完全には納得できないかもしれない。
だがそのを見ると、父が仏壇ので何を考えていたのか像するようになった。
息子をかせたい。
でもがない。
自分がされたことは繰り返したくない。
でも族をべさせなければならない。
渡そう。
いや、やめよう。
渡そう。
今はまだ無理だ。
そんなことを何度も考えたのだろう。
「母ちゃん」
修は聞いた。
「父ちゃんの格通って、残ってないの?」
キヨは首を振った。
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