"昭和21年、港で「娘ではない」と言った母" 第7話
それからはに度ほど妙子のへ来るようになった。
最初の。
玄関でが、
「ただいま」
と言った。
そのにいた全員がきを止めた。
自も、言ってしまってから困った顔をした。
千代が先に笑った。
「いいじゃない」
が母を見る。
「ここも、帰ってきたところなんでしょう」
の目が赤くなった。
その、文子とは最初こそぎこちなかった。
しかし昼過ぎには縁側でお玉をしていた。
「ずるい」
「何が」
「ちゃんの方が」
「ずっとやってたから」
「教えて」
妙子と千代は台所からを見た。
妙子はった。
娘を取り戻し、
もうを失ったのではない。
族の形そのものが、戦争とは違うものになったのだ。
が定期に遊びに来るようになってからも、文子との関係がすぐ姉妹のようになったわけではなかった。
むしろ最初の頃は、さな喧嘩が絶えなかった。
「それ、私の櫛」
ある、が言った。
妙子がのでへ使わせていたの櫛を、文子が使っていた。
「お母ちゃんが貸してくれた」
「でも私が使ってた」
「もう帰ったじゃない」
の顔が変わった。
「何それ」
「だって本当でしょ」
「文子ちゃん!」
妙子が止める。
文子もすぐ悔したようだった。
けれど謝らなかった。
は櫛を奪い、玄関へった。
妙子が追いかけようとすると、文子が言った。
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「お母ちゃんはかないで」
「何言ってるの」
「また私置いてくの?」
妙子のが止まった。
その言で分かった。
文子はを嫌っているのではない。
母親を取られることが怖いのだ。
妙子は文子のへしゃがんだ。
「ちゃんを追いかけることと、文子を置いていくことは違う」
文子は唇を噛んだ。
「でも」
「緒にく?」
「……うん」
でを探した。
れのさな川のそばに、は座っていた。
文子が先にづく。
「ちゃん」
返事がない。
「さっき、ごめん」
が振り返った。
「本当は、お母ちゃん取られる気がして嫌だった」
妙子はしれて聞いていた。
も黙ったまま川を見る。
「私も」
やがて言った。
「文子ちゃんが帰ってきた、私の所なくなるとった」
文子が隣へ座った。
「じゃあ同じじゃん」
「同じじゃないよ」
「何が」
「文子ちゃん、本当の娘だもん」
「ちゃんも妙子お母さんのこと好きなんでしょう」
が頷く。
「じゃあ、しょうがない」
文子は変な結論をした。
がし笑った。
そのから、のに何かが変わった。
完全に仲良くなったわけではない。
喧嘩もした。
べ物を取りった。
文子の方が扱いされるとり、はそれを面がった。
それでもが帰るには、文子が駅まで送るようになった。
ある。
所の子がへ聞いた。
「あなた、本当の妹じゃないんでしょう?」
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が答えに詰まった。
すると文子が先に言った。
「妹じゃないよ」
の顔が曇る。
しかし文子は続けた。
「妹じゃないけど、族」
「何それ」
所の子が笑った。
「変なの」
文子は平然と言った。
「別に変じゃない」
が文子を見る。
「族って、同じにんでるだけじゃないでしょう」
妙子はしれた所で、その会話を聞いていた。
胸がくなった。
子どもたちは、より先にしい言葉を見つけようとしていた。
ある。
が妙子へ聞いた。
「私、妙子お母さんの養女になれないの?」
妙子は驚いた。
「どうして?」
「そうすれば、ずっとお母さんの子でしょう」
「ちゃんには千代お母さんがいるでしょう」
「でも妙子お母さんもいる」
「名を変えなくても、私が事にってることは変わらないわ」
は満そうだった。
「戸籍にかれないのに?」
妙子はし考えた。
「とのつながりは、全部戸籍にかないと消えるものじゃないのよ」
にはまだ難しかった。
「じゃあ忘れない?」
「忘れない」
「になっても?」
「になっても」
「お嫁にっても?」
妙子は笑った。
「どこまで先の話をしてるの」
「約束して」
「約束する」
は指をした。
妙子も指を絡めた。
その約束は、その何も続いた。
昭22の。
妙子のもとへ、枚の葉が届いた。
差を見た瞬、が震えた。
《神隆志》
夫だった。
きていた。
終戦、別の域へ移され、帰国の会を失っていた。ようやく本へ戻れる見込みがち、妙子と文子の所を探しているという。
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