"昭和21年、港で「娘ではない」と言った母" 第8話
文子は泣いてんだ。
「お父ちゃん帰ってくるの?」
「たぶん」
「いつ?」
「まだ分からない」
にもらせた。
は、
「よかったね」
と笑った。
しかし妙子には、その笑顔の裏に昔と同じが見えた。
「ちゃん」
「何?」
「お父さんが帰ってきても、私との約束は変わらないから」
は俯いた。
「でも私のことらないでしょう」
「話すわ」
「嫌だって言ったら?」
妙子はし詰まった。
それでも言った。
「そのは、私がちゃんと話す」
隆志が帰国したのは翌だった。
痩せていた。
頬は落ち、髪にもいものが混じっている。
文子を抱きしめたまま、い泣いた。
「きくなったな」
文子も泣いた。
「お父ちゃん、遅いよ」
「悪かった」
「お母ちゃんもずっと待ってた」
妙子と隆志も、互いの無事を確かめるように何度も顔を見た。
しかし隆志が戻って数。
妙子はのことを話した。
途で言葉に詰まりながら、
釜までの。
。
博港。
森千代との再会。
文子が戻ったも続いている関係。
全て話した。
隆志はい黙っていた。
「それで」
ようやく言った。
「という子は今、千代さんと暮らしてるんだな」
「はい」
「妙子のところへも来る」
「に度くらい」
「おをお母さんと呼ぶ」
妙子は頷いた。
隆志は困ったような顔をした。
「俺は、何て呼ばれるんだ」
妙子はわず笑った。
「りません」
隆志もし笑った。
その週末。
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が千代と緒に訪ねてきた。
は緊張していた。
「初めまして」
隆志へくをげる。
隆志は女をじっと見た。
妙子は息を詰めた。
もし夫が、
「もう来なくていい」
と言ったらどうしよう。
ので争いたくない。
そんながあった。
しかし隆志はへ聞いた。
「で、妙子と緒だったのか」
は頷く。
「はい」
「文子を探すのも伝った?」
「はい」
「妙子がをしたは?」
が妙子を見る。
「で回、がた」
隆志は妻を見た。
「そうなのか」
妙子は頷いた。
ので妙子がをした、が配のを何度ももらいにってくれた。
夜も濡れた布を額へ載せてくれた。
今度は隆志がへをげた。
「妙子を本まで連れて帰ってくれて、ありがとう」
の目がきくなった。
「私が?」
「ああ」
「私、お母さんに連れてきてもらったんだよ」
「それだけじゃないだろ」
隆志は言った。
「はじゃ、いは歩けん」
の目に涙が浮かんだ。
自分が守られただけではない。
自分も誰かを支えた。
初めてそれをから言葉にしてもらった。
帰り。
は妙子へこっそり言った。
「文子ちゃんのお父さん、怖くなかった」
「でしょう」
「妙子お母さんがったの方が怖い」
「ちゃん」
で笑った。
隆志が帰ったことで、妙子の暮らしはし定した。
だが妙子は夫に全てを任せることはしなかった。
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「とのことは、私が決める」
最初にはっきり伝えた。
隆志も、
「分かった」
と答えた。
戦争なら、妙子は夫へそこまでく言えなかったかもしれない。
けれどを渡り、娘を失い、別の子のを握り、本へ戻ってきた。
そのに妙子自も変わっていた。
族とは、
誰かが決めるものではない。
妙子はそれををもってっていた。
が過ぎた。
暮らしはしずつ落ち着いた。
文子もも学へ通い、やがて女から若い女性になった。
は同じ学ではなかった。
それでも休には会った。
緒に映画を見にき、にはを貸し借りした。
喧嘩もした。
が歳の頃。
妙子のへ来る回数が突然減った。
最初は学が忙しいのだとっていた。
しかしか。
か。
妙子は配になった。
森千代へ聞くと、
「最ちょっと、妙子さんのところへきづらいみたいで」
と言う。
「何かありましたか」
千代はし迷った。
「学の友達に、母親がいるなんて変だって言われたみたいなんです」
妙子は胸が痛んだ。
その数。
が久しぶりに来た。
「いらっしゃい」
妙子は普段通り迎えた。
は縁側へ座った。
しばらく何も話さない。
やがて言った。
「私、いつまで妙子お母さんって呼んでいい?」
妙子は驚いた。
「どうしてそんなこと聞くの」
「もうきいから」
「きくなったら駄目なの?」
「だってお母さんいるの、変だって」
妙子はしばらく考えた。
「ちゃんは、どう呼びたい?」
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