"昭和63年、消えたいちご農園主――3年後の古い倉庫" 第6話
刑事は佐藤の妻にも話を聞いた。
最初、妻は、
「何もりません」
と繰り返した。
だが何度目かの聴取で、突然泣きした。
「私も、怖かったんです」
「何がです」
「夫が、あのからおかしくなった」
昭6345の夜。
佐藤は普段より遅く帰ってきた。
作業着はだらけだった。
「何してたの」
妻が聞くと、
「のをさらってた」
と答えた。
しかしその夜、佐藤はほとんど眠らなかった。
翌朝も顔が悪い。
田が方になったと聞いたには、箸を落とした。
「なぜに話さなかったんです」
刑事が聞いた。
妻は泣いた。
「まさかとったんです」
それから佐藤は酒をむようになった。
夜にび起きる。
寝言を言う。
「田さん」
という名も何度か聞いた。
そして最もかった言葉。
「すまない」
妻はそれを聞いていた。
「夫に聞きましたか」
「聞けませんでした」
「なぜ」
妻はで顔を覆った。
「答えを聞くのが怖かったからです」
刑事は静かに記の複写を机へ置いた。
翌。
佐藤は再び警察署へ呼ばれた。
目のには、
記。
妻の証言。
倉庫付の目撃証言。
佐藤はい、それらを見ていた。
そして言った。
「田さんの奥さんは」
刑事が顔をげる。
「今も俺を疑ってますか」
「それをってどうするんです」
佐藤は答えなかった。
佐藤は、何も認めなかった。
目の朝。
取調へ入ると、いつもとは違った。
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机のに座り、
「煙、本もらえますか」
と聞いた。
をつけても、ほとんど吸わなかった。
い煙だけががった。
しばらくして、
「すまないことをした」
と言った。
刑事は黙って待った。
「田さんに」
佐藤の声が震えた。
「あの、何があったんです」
い沈黙の。
佐藤はの45へ戻った。
朝。
いつも通り田農園へた。
妻も緒だった。
いちごを摘み、箱へ並べた。
午9。
茂はいったんハウスのへた。
本の目撃証言は正しかった。
肥料置きを確認し、すぐ戻ってきた。
だから佐藤の、
「10まで緒だった」
という証言も、完全な嘘ではなかった。
午の作業が終わりかけた頃。
茂が言った。
「誠さん、あとでし話がある」
佐藤は、の話だとった。
以断られた融資を、考え直してくれたのかもしれない。
ところが内容は逆だった。
「来から、来てもらうを減らしたい」
佐藤はを疑った。
「何でです」
「今、ったほど残らない」
規模拡。
資材費。
までの運送。
兄への返済。
から見れば順調な農園も、実際には余裕がなかった。
「週だったのを、かにしたい」
佐藤は顔がくなった。
「ですよ」
「分かってる」
「、ここで働いてきたんですよ」
「だから申し訳ないとってる」
「このはも貸せない。今度は仕事まで減らすんですか」
茂は黙った。
「田さんはいいですよ」
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佐藤は言った。
「ハウスも増えて、京でいちごが売れて」
「見えてるほど儲かってない」
「そんなの誰が信じるんです」
声がきくなった。
茂は、
「午、落ち着いて話そう」
と言った。
そのはいったん終わった。
正午。
茂はへ戻った。
では午1にかかってきた話は誰だったのか。
佐藤だった。
「話したのは俺です」
刑事が顔をげた。
佐藤はへ帰ってもりが収まらなかった。
このままでは計がもたない。
妻にもまだ言えない。
茂へ、
「もう度話したい」
と話した。
茂は、
「分かった。午にく」
と答えた。
が指定したのは、農園のれにある資材置きだった。
目がない。
茂は作業着のままではなく、度着替えた。
仕事の話だけではなく、佐藤へ今の条件をきちんと説するつもりだったらしい。
午2過ぎ。
は顔をわせた。
話はすぐに論になった。
「俺を切るんですか」
「切るとは言ってない」
「同じだ!」
「声を落とせ」
「自分だけうまくいって!」
「うまくいってないって言ってるだろ!」
茂が背を向けた。
佐藤は腕を掴んだ。
茂が振り払った。
「いい加減にしろ」
その言で、
何かが切れた。
資材置きの壁に、をならすためのシャベルがてかけてあった。
佐藤はに取った。
「脅すつもりだった」
の供述で、何度もそう言った。
振りげる。
茂が振り返る。
度。
さらに度。
茂が倒れた。
そこで初めて佐藤は、自分が何をしたのか理解した。
「田さん」
呼んだ。
反応はなかった。
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