"昭和63年、消えたいちご農園主――3年後の古い倉庫" 第7話
体を揺すった。
何もない。
「救急を呼ぼうとは?」
刑事が聞いた。
佐藤は目を閉じた。
「いました」
「なぜ呼ばなかった」
「怖かった」
警察。
逮捕。
族。
仕事。
全部がに浮かんだ。
そして佐藤は、最も取り返しのつかない選択をした。
茂を隠そうとした。
すぐくの自分のでは見つかる。
田農園も族が探す。
そこでいした。
本の古い倉庫。
普段誰も使わない。
扉にもきちんとした鍵がない。
しかも田と本が仲違いしていることを、がっている。
「本さんに罪を着せようとしたんですか」
佐藤は首を振った。
「そこまで考えてない」
「本当に?」
「ただ……もし見つかっても」
佐藤は言葉を止めた。
「もし見つかっても?」
「俺より先に、本が疑われるとはった」
取調が静かになった。
偶然選んだだけではなかった。
午。
佐藤は目を避けながら茂を倉庫へ運んだ。
の部を崩し、を掘った。
茂を埋めた。
そのにを戻し、翌、資材を持ち込んで簡単にコンクリートを流した。
「で?」
「はい」
「誰にも見られなかったと?」
佐藤は俯いた。
「見られてたんでしょうね」
、その証が見つかった。
「そのあと、どうして普通に田農園へ戻れたんです」
刑事が聞いた。
佐藤は顔を覆った。
「普通じゃなかった」
毎朝、田農園へった。
幸子を見る。
博志や美穂の話を聞く。
「主から連絡がない」
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幸子がそう言うたびに、胃が締めつけられた。
それでも言えなかった。
「最初ので言えばよかった」
佐藤は言った。
「次のでもよかった。目でも」
声が崩れた。
「でも黙ると、次のはもっと言えなくなった」
やがて、
か。
半。
。
そして佐藤はを逃げた。
だが逃げても倉庫のを見た。
酒をんだ。
仕事が続かない。
妻へも本当のことを言えない。
。
なぜかへ戻った。
刑事が聞いた。
「なぜ戻ったんです」
佐藤は答えた。
「分かりません」
そしてしばらくして付け加えた。
「たぶん、逃げても同じだったからです」
佐藤誠はそこで完全に自した。
警察から、
「佐藤誠が認めました」
とらされた、幸子は何も言わなかった。
向かいに座っていた博志が、
「どういう理由だったんですか」
と聞いた。
刑事は慎に説した。
仕事を減らす話。
論。
突発な暴。
そのの隠蔽。
幸子は最まで顔をげなかった。
説が終わってから、ようやくをいた。
「話」
「はい」
「あのの話も佐藤さんだったんですか」
「本がそう供述しています」
幸子は頷いた。
、答えのなかった分。
夫の表がくなった理由。
昼を残した理由。
着替えてへた理由。
全部がつながった。
「主は」
幸子は聞いた。
「佐藤さんを辞めさせようとしてたんですか」
「完全に解雇するつもりだったかどうかは分かりません。
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ただ、勤務数を減らす話をする予定だったと」
幸子はしばらく黙った。
その話なら、夫はで言くらい相談してくれてもよかったのではないか。
もし自分がっていたら。
もし佐藤の妻を交えて話せと言っていたら。
もし話を切った夫を止めていたら。
「お母さん」
博志が呼んだ。
幸子はに返った。
自分がまた、
「もし」
を数え始めていることに気づいた。
、何千回もやったことだった。
あのもっと聞けば。
警察へもっとく言えば。
農園の周りをもっと探せば。
本の倉庫を調べていたら。
しかし過は度も変わらなかった。
「佐藤さんに会えますか」
幸子が聞いた。
博志が驚く。
「母さん」
刑事も慎に答えた。
「今は難しいです」
「そうですか」
それ以は言わなかった。
。
田へ、佐藤の妻がでやってきた。
のでいっていた。
幸子がると、そので座した。
「申し訳ありません」
幸子は体を固くした。
「あなたがしたことじゃないでしょう」
「でも私は、夫の様子がおかしいのをっていました」
「……」
「もっとく話していたら」
幸子はその言葉を聞き、胸が痛んだ。
自分と同じだ。
このも、
「あのこうしていれば」
を抱えている。
「顔をげてください」
「でも」
「あなたに謝られても、主は帰ってきません」
たい言葉に聞こえたかもしれない。
だが、それが幸子の本音だった。
許すことも、
責めることも、
まだできなかった。
佐藤の妻は顔をげた。
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