"昭和63年、消えたいちご農園主――3年後の古い倉庫" 第8話
目が真っ赤だった。
「主を、許してくれとは言いません」
幸子は黙って聞いた。
「ただ、本当に申し訳ありません」
それだけ言い、帰っていった。
美穂は父の元が正式に確認された、京から戻った。
にはだった娘が、もう学になっている。
「お父さん」
棺ので呼んだ。
返事はない。
「遅いよ」
その言で泣き崩れた。
博志は泣かなかった。
葬儀の準備。
親戚への連絡。
農協。
警察。
やることをつずつ片づけた。
しかし葬儀が終わった夜。
誰もいないハウスへ入り、父が使っていた古い収穫箱を見た瞬、座り込んだ。
父が消えたために学をやめた。
農園を継いだ。
そのことをんだ期もあった。
「勝にいなくなって」
ので何度も父を責めた。
だが父は勝にいなくなったのではなかった。
帰れなかったのだ。
「父さん」
博志はで呟いた。
「俺、ずっとってたよ」
誰も答えない。
ハウスのではの夜がビニールを揺らしていた。
平成3。
佐藤誠の裁判が始まった。
法廷には田の族も姿を見せた。
幸子。
博志。
美穂。
京から来た兄・茂雄。
被告席に座る佐藤は、かつて農園で働いていた頃とは別のように痩せていた。
弁護側は、計画な犯ではなかったと主張した。
論の末の突発な為。
の経済。
被告自もい罪悪に苦しんだ。
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方、検察側はそののをく見た。
茂を助けようとせず、
目につかない倉庫へ運び、
を掘り、
遺体を隠し、
を補修した。
そして、族が捜し続ける姿をりながら沈黙した。
それは、
「瞬のり」
だけでは説できないと主張した。
証として佐藤の妻もった。
声を震わせながら、夫の変化を話した。
酒。
悪。
寝言。
「すまない」という言葉。
裁判が聞いた。
「事件について夫から直接聞いたことは?」
「ありません」
「疑っていましたか」
妻はい答えられなかった。
やがて、
「はい」
と答えた。
「なぜ警察へ話さなかったのですか」
「怖かったからです」
法廷が静かになる。
「夫が犯かもしれないことも怖かったです。でも、それが本当になった、自分の族が全部壊れるのがもっと怖かった」
幸子はその証言を聞いていた。
理解できない。
でも全く分からないとも言えなかった。
は真実そのものより、
真実をったの活を恐れることがある。
本も証言した。
倉庫のの変化に気づきながら黙っていたことを認めた。
「なぜ警察へ言わなかった」
検察官が聞く。
「自分が疑われるといました」
「結果として本当に疑われましたね」
本は唇を噛んだ。
「はい」
「もっとく話していれば、遺体はに見つかったかもしれない」
本は顔をげられなかった。
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「はい」
法廷では、
の男が命を奪ったことだけでなく、
何ものがしずつ黙ったこともらかになった。
佐藤。
その妻。
本。
そして最初の捜査で、
「だろう」
とく調べなかった警察。
誰かだけの沈黙ではなかった。
判決の。
佐藤には期の実刑判決が言い渡された。
言葉を聞いた瞬、佐藤は俯いた。
幸子たちの方へ向き直り、くをげた。
「申し訳ありませんでした」
法廷に声が響いた。
幸子は答えなかった。
博志も。
美穂も。
兄の茂雄も。
裁判が終わり、廊へた。
記者が幸子へ聞いた。
「判決についてどうわれますか」
幸子はしばらく考えた。
「何刑務所に入っても」
そう答えた。
「私たちのは戻りません」
それだけ言って歩きした。
その言葉は、
佐藤だけに向けたものではなかった。
そのの。
田茂は故郷の墓へ埋葬された。
失踪から半。
ようやく族は墓へ名を刻むことができた。
幸子は墓へ座った。
「かったね」
さく言った。
「どこで何してるのって、毎ってた」
返事はない。
「まさか、あんなくにいるなんて」
涙を拭く。
「ちゃんと帰ってきなさいよ」
叱るような言い方だった。
「骨になってから帰るがあるかね」
ろにいた美穂が泣いた。
博志は、収穫したばかりのいちごをさな皿に載せた。
父が作り始めた品種だった。
「今、結構うまくいったよ」
墓へ置く。
「父さんほどじゃないけど」
田農園は博志が引き継いだ。
規模は父の頃の半分以。
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