"昭和51年、帰宅目前で消えた25歳女性社員" 第6話
タクシーをりた点から、みち子が暮らすアパートの玄関までの距は、わずか
50メートル
。
のであれば、1分もかからずに歩き切れる距である。
佐々刑事は現の夜実況見分をった。
現は、古い造と零細な鉄所が密集する狭いだった。灯は油煙で汚れ、面に落とすは許ない。夜の2345分ともなれば、の稼働は完全に止まり、民の戸は固く閉ざされ、い静寂と暗が支配する。
そのわずか50メートルの隙に、まるで異次元への落とし穴がしたかのように、みち子は忽然と姿を消していた。
面には争った痕跡も、血痕も、の擦れもなかった。彼女が持っていたはずのハンドバッグや傘、私物の破片つ落ちていない。隣民数世帯への聞き込みもわれたが、「夜0は熟していた」「犬の鳴き声すら聞こえなかった」という証言ばかりだった。
きているが、滴の痕跡も残さずにに溶けることなどあり得るのか。
捜査本部は、現から半径数百メートル以内の捜索を化するとともに、「最に彼女と接触した能性のある物」への疑いの目を向けざるを得なくなっていった。
川崎警察署の捜査本部に設置された黒板には、失踪当夜のタイムラインがチョークでびっしりとき込まれていた。
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そので、捜査陣の疑惑の焦点となったのは、最に現付にいた2の男――司の田課と、同僚の佐藤だった。
まず矢面にたされたのは田だった。
み会を主催し、最まで彼女を拘束していた最責任者。さらに、田が主張する当夜のアリバイに、自然な「歪み」がしたからである。
取調のパイプ子に座らされた田は、額に脂汗を滲ませていた。対面に座る佐々刑事が、え切った声で問い詰める。
「田さん、あなたは駅でみち子さんと別れた、すぐにタクシーを拾って帰宅したと証言しましたね」
「ええ、言いましたよ。自宅に着いたのは24頃でした。内も起きて待っていましたから、確認してもらえれば分かります」
「奥さんにはすでに聴取しました。『夫が帰宅したのは0をし回った頃だった』と証言しています。しかしね、田さん。駅の乗りからあなたの自宅までは、夜の状況ならタクシーでせいぜい15分だ。解散したのは2330分。あなたが自宅の玄関を跨ぐまでに、
約15分の空
がある。あなたを乗せたタクシー運転も見つかりましたよ。『お客様を自宅でろしたのは2345分頃だった』と証言している。この差の15分、あなたはどこで何をしていたんですか?」
佐々が机にを乗りす。田の線が激しく泳いだ。
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「そ、それは……」
「川島みち子さんがタクシーをりた点と、あなたの自宅はなら10分とかからない距だ。度りた、別ので彼女の自宅付へ先回りしたんじゃないのか?」
「違います! 滅相もない!」
田は両を振り乱し、鳴にい声をげた。
「本当のことを言います! あの夜……かなり酒が回っていて、吐き気がしたんです! 妻は酒にうるさい質でしてね、酔して帰ると酷く叱られる。だから……自宅の数軒のに座り込んで、酔いを覚ますために夜に当たっていたんです! 本当にそれだけなんです!」
「それを証できる目撃者はいるのか?」
「そ、そんな夜に誰がいるはずもありません……! でも、誓って本当です!」
物証はない。だが、反証もない。
さらに田に関する社内の聞き込みからは、穏な証言も浮していた。「田課は若い女性社員へのスキンシップがい」「みち子さんの真面目さを異常に気に入り、個な残業や類の自宅届けを命じたことがあった」というものだ。しかし、制連や拉致に結びつく決定な物証は何もてこなかった。田の自宅、自用のトヨペット・クラウンの内トランクまで宅捜索同然の検証がわれたが、みち子の指紋や毛髪は本たりとも検されなかった。
そして、もうの疑惑の物――佐藤。
佐藤の当夜のにも、奇妙な符号がしていた。
佐藤の自宅アパートは、みち子の実と同じ方角にあり、距にしてわずか200メートルしかれていなかったのである。
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