"昭和51年、帰宅目前で消えた25歳女性社員" 第9話
ピントの甘いポラロイド写真。写っていたのは、どこかの暗いの片隅だった。事務机のような古い机のに、
黒い革製の女性用ハンドバッグ
が、ぽつんとつ置かれていた。
し擦り切れた角、真鍮の留め具、持ちの形状。
らかに、そのに釣りいな女性物の私物だった。
写真の裏面を剥がしてみると、現像所の刻印スタンプが押されていた。
『51.12.02』――事件からわずか数の付だった。
「お母さん……これ、お父さんの部じゃないよね? 会社でもないよね?」
恵子の声が震えていた。母は青ざめた唇を震わせ、何度も首を振った。
「見たこともないわ……こんな部も、この鞄も……。でも、どうしてお父さんがこんな写真を……」
のに、底れぬ寒気がち込めた。
なぜ父は、女性の鞄だけを写した奇妙な写真を、誰にも見せないアルバムの奥底に9も隠し持っていたのか。
もしかして、父は本当に――あの失踪事件に関わっていたのではないか。
自分たちので、する父の恐るべき犯罪の証拠を暴いてしまったのではないかという恐怖が、母娘の胸を容赦なく締め付けた。
「お母さん……これ、警察に持ってきましょう」
恵子は震えるで写真を握りしめた。
「もし……もしもお父さんが何かっていたんだとしたら、このまま隠していたら、私たちまでお父さんを裏切ることになる。
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川島さんのご族だって……ずっと待ってるんだよ」
翌朝、恵子は母とともに、川崎警察署のい正面玄関をくぐった。
受付で「昭51の川島みち子さんの事件について」と告げると、応対した当直の若い警官は怪訝な顔をしたが、奥の部からの老刑事がてきた。
定退職を数ヶに控えた、佐々警部補だった。
髪の増えた佐々は、差しされた2枚の写真を見た瞬、掛けていた老鏡を激しく指で押しげ、息を呑んだ。
「違いない……! この鞄は、川島みち子さんの私物だ! ご両親から提されていた特徴と完全に致する!」
佐々のが、老骨を震わせてワナワナと刻みに揺れていた。
9の沈黙を破り、え切っていた未解決事件の捜査本部が、瞬にしてのついたような気を取り戻した。
佐々警部補は、鑑識課の暗に籠もり、ポラロイド写真の徹底な科学分析を指示した。
引き伸ばされた写真の粒子の奥から、驚くべき報が次々と浮かびがってきた。
鞄が置かれた机の引きしの隙に、わずかに挟み込まれていた枚の類。性能ルーペと画像調処理によって、そこに印字された文字が鮮に浮かびがった。
『精株式会社 総務課管理備品』
「総務課……!?」
佐々は叫んだ。
みち子が所属していたのは経理課だった。
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なぜ総務課の類が写り込んでいるのか。
警察は精に対し、昭51当の総務課職員全員の緊急事記録の提を命じた。リストアップされた数名のに、佐々の帳の片隅にさくりきされていた「ある男」の名がした。
本誠(当32歳)
。
事件当、総務課の係を務めていた男だった。
佐々は自らの記憶の糸を繰り寄せた。事件直の聞き込みで、本にも度だけ事聴取をっていた。しかし、本は「当夜はみ会に参加しておらず、23過ぎまでで残業したのち、自用でまっすぐ帰宅した」と証言していた。部者であり、アリバイに目った矛盾がなかったため、捜査線から々に除されていたのだ。
さらに捜査をめると、戦慄すべき事実が判した。
本は事件からわずか半の昭52、「の都」を理由に精を突如退職し、親族や同僚との連絡を完全に断って、くれた阪府守へ族ごと移していたのである。
「なぜ事件の直に会社を辞め、縁もない関へ逃げたのか……!」
佐々は直ちに幹線の切符を配し、若刑事とともに阪へとんだ。
昭6012旬。守の業団の角にある、従業員数名のさな属加。
ち並ぶプレスのを歩き、佐々は事務所のドアをノックした。
からてきたのは、作業にを包んだ男性だった。
本誠(41歳)。髪にはいものが目ち、頬は削げ、その目元には何かに怯え続けてきた者特のい隈が刻まれていた。
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