"昭和51年、帰宅目前で消えた25歳女性社員" 第11話
そして、助席に転がっていた彼女のハンドバッグを、証拠隠滅のために持ちったのである。
自宅に持ち帰ったものの、捨てることも燃やすこともできず、斎の机のに隠し続けた。そしてある、激しい罪悪と自己懲罰の衝から、ポラロイドカメラでその鞄の写真を撮した。
「自分が犯した罪を、決して忘れないために」
しかし、その写真こそが、にすべての結末を繰り寄せることになった。
では、なぜその写真が田課のアルバムにあったのか?
佐々刑事が問い詰めると、本は涙ながらに最の告をした。
事件から数ヶ、社内で田課がみち子の失踪を巡って警察から疑われ、憔悴しきっている姿を見るに耐えかねた本は、退職直のある夜、れず田の机の引きしに、あの鞄の写真と、裏面に『川島さんはもう帰ってきません。課のせいではありません』といたを匿名で滑り込ませていたのだという。
田は、その写真を警察に提することができなかった。
提すれば、自分が犯だと名乗りるようなものだと怯えたのか、あるいは差の図を測りかねたのか。田は誰にも言えぬままその写真をアルバムの奥くに封印し、9、墓までその苦悩を背負い続けていたのだった。
昭601218。
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たいが吹き荒れる川崎臨部、錆びついたトタン壁の廃倉庫に、数名の警察官と鑑識班がブルーシートを携えて突入した。
本の供述通りの所。崩れかけた製パレットと埃まみれの断材を取り除いた最奥部から、それは発見された。
9の歳を経て完全に骨化した遺体。
しかし、そのにはあのと同じ黒いウールコートの残骸がまとわれ、の指には、みち子が自分への料記に買ったさなの指輪が、鈍いを放ちながら嵌められていた。
鑑識による歯型の照の結果、遺体は方となっていた川島みち子本であると正式に確認された。
川崎警察署ので、佐々警部補は病の父に代わって呼びされた母・静枝と対面した。
佐々が々とをげ、事の真相を伝えると、静枝は泣き叫ぶことも、取り乱すこともなかった。
ただ、膝のに置いた骨壷を、まるで赤ん坊を抱くように優しく、壊れ物を扱うように両腕で抱きしめた。
「……おかえり、みち子。寒かったでしょう。痛かったでしょう。……やっと、お母さんのところへ帰ってきたのね」
静枝の目から、9堰き止められていた涙が、音もなく溢れた。
業務過失致、ならびに体遺棄の罪で起訴された本誠の裁判は、翌の昭61、横浜方裁判所で結審した。
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被告席につ本は、終始うつむき、嗚咽を漏らしながら謝罪の言葉を繰り返した。検察側は「自己保のために遺体を9も遺棄し続けた悪質な犯」として厳罰を求刑した。
傍聴席の最列には、黒い喪にを包んだ静枝の姿があった。
裁判から「遺族として何か言いたいことはありますか」と促された静枝は、静かに証言台のにった。
「……本さん。あなたが娘に声をかけたのは、親切からだったのですね。夜をく娘を配してくださったそのお気持ち自体は、母親として謝しなければならないのかもしれません。……けれど、なぜ、あのすぐに救急を呼んでくださらなかったのですか。もし病院へ連れてってくれていたなら、たとえ助からなかったとしても、私はあの子のを握って、温かい体のまま見送ってあげることができたのに」
静枝の声は、りではなく、底れぬに満ちていた。
「この9、私たち族がどのような獄をきてきたか、あなたに像がつきますか。主は娘を案じるあまり病に倒れ、今も言葉を失ったまま井を見つめています。私たちは毎、玄関の鍵をけたまま、たいの音を聞いて暮らしてきました。……あなたにもご族がおられると聞きました。どうか、ご自分の命ある限り、奪ってしまった娘の25の未来のさを背負い続けてください」
法廷内に、静枝の静かな言葉が染み渡るように響いた。
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