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"無能社員を演じていた俺、上司を救って正体がバレる" 第14話

……頼りにしてるんだからね、私の『最の部』」

健太の胸の奥が、温かなで満たされていく。 かつて戦で血に染まり、自ら呪い、封印した自らの力。 だが、力そのものに善悪はない。 誰かを傷つけるための力ではなく、誰かの笑顔を守るための力。 その使いを、健太はこの会社で、このの隣で、ようやく見つけすことができたのだ。

「……解しました」

健太が敬礼の代わりに静かに頷くと、凛は満そうに微笑んだ。

「それとね、藤さん。今は残業禁止よ」 「え? まだデータ入力が積みなんですが……」 「いいから定でがるの。……父のお墓に、今度はで、ちゃんとお礼を言いにくんだから」

「俺も、ですか?」 「当たりでしょ。……私の、番切ななんだから」

凛はでそう言い残すと、照れ隠しのようにカップをに取り、颯爽と湯をていった。

午半。定退社のチャイムが鳴り響く。 健太は机のをく片付け、鞄をにちがった。 「お先に失礼します」 「おっ、藤、今はずいぶんいな! たまにはみにこうぜ」と声をかけてくる田たちに、「すみません、野暮用がありまして」と笑顔でを振り、エレベーターへ乗り込む。

本社ビルの正面玄関をると、初の夕暮れ。 茜のグラデーションに染まる空の、ビルがよく吹き抜けていく。

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歩のの脇に、ネイビーのスーツのからのトレンチコートを羽織った凛が、で待っていた。 夕を浴びて輝く黒髪、凛としたち姿。

健太がりでづくと、彼女は計を見やり、しだけを尖らせた。 「遅い。分待ったわよ」

「すみません。エレベーターが混んでまして」

「嘘ばっかり。……ほら、くわよ」

凛が歩きす。 カツカツと響くヒールの音。 健太はその半歩ろを、自然な護のポジショニングを保ちながら歩いた。 周囲の雑踏、のライト、き交う々の声。そのすべてを、健太の研ぎ澄まされた覚が捉えている。だが、かつてのような恐怖や緊張は、もうそこにはなかった。

ふと、凛が歩幅を緩めた。 彼女はち止まり、振り返って健太を見げた。

「藤さん」 「はい」 「半歩ろじゃなくて……隣を歩きなさいよ」

凛がそっと差ししてきた。 く、細く、だが数々の試練を乗り越えてきたい。 健太は瞬だけ躊躇い、そして――自分の、傷だらけのきなで、その温もりを優しく包み込んだ。

「……はい、課」

「会社をたら、『凛』でいいって言ったでしょ」

「……はい、凛さん」

は顔を見わせ、吹きすように笑いった。

過の硝煙は、もう消えった。 逃げるための無能の仮面も、もう必ない。 このを伸ばせば届く温もりを守り抜くこと。

それこそが、元特殊部隊の男が選んだ、涯を懸けるべき「任務」だった。

夕暮れののへ、つのいが肩を並べて溶け込んでいく。 の朝もまた、オフィスのコピーので叱られるだろう。 けれど、その常こそが、血を流して勝ち取った、かけがえのない宝物だった。

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