みかん小説
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"十年分の船代で始まった一人旅" 第10話

言われたことが消えるわけでもない。

ただ、は週ずっと同じ顔をしているわけではないのだとった。

私もそうだった。

乗したは、夫をくしたな旅の女だとっていた。

する私は、それだけではない。

に乗り。

迷い。

笑い。

泣き。

とりい。

自分で絵を選んで帰るになった。

へ戻って週ほどした頃、見覚えのない番号から話がかかってきた。

ると、千鶴子さんだった。

「突然ごめんなさい」

「どうしました?」

「絵、けたの」

瞬、何の話か分からなかった。

「ああ」

「っていたよりさかった」

わず笑った。

「そうなんですか」

「で見たはもっときく見えたのよ。額も像していたより普通」

「気に入りました?」

話の向こうで沈黙した。

「それがね」

千鶴子さんはし恥ずかしそうな声になった。

「嫌いじゃなかった」

私は笑った。

「じゃあ、良かったですね」

「廊に掛けたの」

「毎見えるところですか?」

「嫌でも毎通るわ」

で笑った。

「あのマグカップも隆が毎使ってる」

「そちらの方が番がそうですね」

「本当よ。万円より千円の方が働いてる」

以の千鶴子さんなら、自分からそんなことは絶対に言わなかっただろう。

話を切る、彼女はつだけ言った。

「の話、悪かったわね」

私はし考えた。

「もう丈夫です」

「そう」

それだけだった。

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げさな謝罪はいらない。

友達になる必もない。

でも、あの言葉が違いだったと本が気づいた。

それで分だった。

数、吉さんからが届いた。

《まだ絵は買っていません。その代わり、主と所のケーキさんへきました。桃の季節ではなかったので苺でした。とても美しかったです》

私は仏壇ので声をして笑った。

常夫の写真がし呆れているように見えた。

で買った彩画は、居の壁へ掛けた。

仏壇からし斜めの所。

朝、カーテンをけると最初に目へ入る。

夕方にはが絵のをし赤くする。

青いガラスの魚は、そのの棚へ置いた。

見るたび、港町の坂をいす。

革のキーホルダーはの鍵につけた。

し曲がったままだ。

どれも価ではない。

それでも全部、しまい込まずに使っている。

ある朝、娘の真理子が遊びに来た。

絵を見るなり、

「これ買ったの?」

「万千円」

「珍しい。お母さんが自分で絵なんて」

「ちゃんと飾るところを決めてから買ったのよ」

娘はが分からないという顔をした。

私はであったことをしずつ話した。

内側の部。

千鶴子さん。

吉さん夫妻。

オークション。

の。

暗い夜。

最まで聞いた真理子は、父の写真へ顔を向けた。

「お父さん、きたかっただろうね」

「うん」

以なら、その言葉だけで胸が痛んだだろう。

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今は違った。

「でも、ったことにするわ」

「どうやって?」

私は仏壇の引きしから、あの茶封筒をした。

には積表と、使わなかった最の数万円が残っている。

その横に、でいた絵葉を入れていた。

《は、あなたがっていたよりずっと広かったよ。》

娘が読んだ。

「これ、お父さん宛て?」

「そう」

「所、お母さんのじゃない」

「緒だからいいの」

真理子が笑った。

私も笑った。

へ乗る、私は常夫との約束を果たしにくつもりだった。

今はそうっていない。

約束は、でへ乗ることだった。

それは果たせなかった。

果たせない約束は、世のにいくらでもある。

だからといって、その約束まで失敗になるわけではない。

常夫が貯めたがあったから、私はでへ乗った。

らないと話した。

自分のために絵を選んだ。

そして夫がいない所でも笑える自分を、初めてった。

昼、私はで買い物へた。

玄関で靴を履き、革のキーホルダーがついた鍵をに取る。

ドアをけるに、居を振り返った。

壁にはの絵。

棚には青い魚。

仏壇には常夫の写真。

全部、毎目につくところにある。

「ってきます」

今も私は、かけるにそう言う。

返事はない。

でも、それで寂しいとうばかりではなくなった。

へると、のが吹いていた。

次にどこへくかは、まだ決めていない。

またに乗るかもしれない。

今度は列かもしれない。

所の温泉だけかもしれない。

回数も。

客も。

値段も。

誰かに説する必はない。

私は自分が本当にきたい所へ、自分の速さでけばいい。

かかってもいい。

でもいい。

切なのは、どれだけくに入れたかではなく、にしたを自分でどう使うかだと、今なら分かる。

私は鍵を閉め、駅へ向かって歩き始めた。

バッグのには、常夫の封筒から最に残った万円札が枚だけ入っている。

今の昼は、しだけ美しいものをべようとっていた。

あのならきっと言う。

「せっかく貯めたんだから、ちゃんと使え」

私は歩きながらさく笑った。

「分かってるわよ」

もう、誰かの物差しで私の旅を測らせるつもりはなかった。

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