"震災から半年ぶりに帰った家には、知らない家族が住んでいた" 第14話
千代はい、円のを父に利な証拠だとっていた。
父もそうって隠した。
しかし今はし違って見える。
あの円で、正は薬をんだ。
族は千葉へけた。
父の脚も治療できた。
を放すためのだったのか、困窮した借り主を助けるためのだったのか、そのを巡ってたちは争った。
けれど松田にとっては、違いなくき延びるための円でもあった。
枚のには、つのしかないわけではない。
も同じだった。
父にとってはの。
さよにとっては夫を失ったあと、子どもを守った半の。
主にとっては貸していた。
役所にとっては計画のの区画。
千代にとっては、それら全部だった。
「千代」
ろから声がした。
振り返ると庄吉がっていた。
以より杖を使うことは減ったが、のにはまだ脚が痛む。
「何してる」
「昔の、どこだったか探してた」
父はを見渡した。
「そこじゃない」
「じゃあどこ?」
「もうし向こうだ」
で歩く。
庄吉は歩ほどみ、止まった。
「この辺だ」
「本当?」
「たぶんな」
千代は笑った。
「お父さんでも分からないんじゃない」
「をこんなに広げられたら分かるか」
庄吉もし笑った。
はしばらくそこにった。
父はもう、「取り戻す」とは言わなかった。
代わりに、しい借の裏をし改造し、作業を広げている。
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正も学が終わると父の仕事を伝うようになった。おふみは「またが鉋屑だらけになる」と文句を言いながら、以より嬉しそうだった。
「崎さん、元気かな」
庄吉が突然言った。
千代は父を見た。
「この、ちゃんに会ったよ。さよさんも元気だって」
「そうか」
「会いたい?」
「別に」
相変わらず素直ではない。
千代はそれ以聞かなかった。
父が歩きす。
千代も並んだ。
ろでは、昔つの族が奪いった所を、々が何もらずにき交っている。
震災から半ぶりに帰ったあの、千代はらない族が自分のを奪ったのだとった。
父もそうった。
おそらく崎から見れば、突然現れた松田こそ、自分たちのを奪おうとするらない族だった。
けれど調べるほど、簡単な境界線は消えていった。
んだ者。
半んだ者。
円を受け取った者。
百円を払った者。
震災の契約。
震災の契約。
そして、そのどちらも押し流すしい。
誰かだけを悪者にすれば、話はもっと簡単だった。
だが簡単な話にした瞬、必ず誰かがきたが消える。
千代はそれをった。
とは、建物だけではない。
契約だけでもない。
そこにいただけでもない。
が「ここへ帰りたい」とった、その所にはすでに、そのだけの理由が積みなっている。
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だからこそ、同じ所をが「」と呼ぶこともある。
そしてには、その所そのものがなくなっても、きていかなければならない。
父がし先で振り返った。
「何してる。置いてくぞ」
「今く」
千代は古い枚のを鞄へ戻した。
捨てるつもりはない。
しかし、それを握りしめて昔のにち続けるつもりもなかった。
父の隣までる。
のには、震災にはしなかった広いが伸びている。
そのを歩きながら、庄吉が何でもないことのように言った。
「帰ったら、しい仕事の帳面つけてくれ」
「今度はいくら?」
「円だ」
「材料代は?」
「円銭」
「ちゃんと領収ある?」
庄吉が顔をしかめた。
「おは本当に細かくなったな」
千代は笑った。
「誰のせいだとってるの」
父は返事をしなかった。
ただしだけ歩調を緩め、娘と並んで歩いた。
かつて「ここがうちだった」と言い続けた男は、もう昔の所へ戻ろうとはしていなかった。
今夜帰るが、別にあったからだ。
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