みかん小説
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"昭和29年、棟梁が祝いの柱を割った理由" 第21話

最初に見るところ

の終わり、源吉は健太郎と豊を連れて、しいの基礎へ向かった。久しぶりのきな注文だった。施主は町で文具をく若い夫婦で、狭いまいに目の子がまれるに建て替えたいという。夫婦は期を配していたが、源吉はまず現のを掘り、当たりとの向きを見た。をく建てるためには、戻りしないことが切だった。

材が運ばれてきたの朝、豊が本の角材を取りした。「親方、この、し変です」と言う。源吉はを止め、健太郎にも見せた。表面にさな濃い筋があり、輪の部が荒れている。湿り気だけか、内部まで傷みがあるのかは、そのでは分に分からなかった。運んできた男は「ほかの材と取り替えましょうか」と尋ねたが、源吉はまず印と納品の記録を確かめ、見分けられるよう材を別に置いた。

豊は緊張した顔で聞いた。「また、あのみたいになりますか」。源吉はし考え、「ならんように今調べている」と答えた。別の材に替えるかどうかは、必な確認を終えてから決めればよい。事なのは客がみ始めるに確かめることだ。源吉は川島にも見てほしいと伝え、予定していた加を別の作業へ替えた。健太郎は文句を言わず、職たちの段取りを直した。

昼休み、施主の若い妻が子どもを連れて現を訪れた。

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源吉が材を分けて置いている理由を説すると、妻は配そうに「うちのは丈夫でしょうか」と聞いた。源吉は以のように「丈夫だ」と即答しかけ、を閉じた。「今は丈夫だと言い切れません。確かめてから、結果をお伝えします」と言い直した。妻はそうだったが、持ってきた茶を職たちへ配ってくれた。

午、川島が来てを確かめ、材の部に疑わしい傷みがあると判断した。源吉はその材を主な所には使わず、仕入れ先と交換の続きをした。騒ぎにはならなかった。祝いのでもなければ、誰かが鳴り込んで来たわけでもない。ただ、本の材を取り替えただけである。豊は作業帳へ理由をき、健太郎が交換の本数を数えた。

帰り、源吉は柴田のを通った。階の窓には洗った布が干され、庭から子どもの笑い声が聞こえた。忠蔵は先で反物を理しており、源吉の姿を見るとを振った。「今度のは順調か」と聞く。源吉は頷き、「今は本、取り替える材がありました」と答えた。忠蔵は眉をげたが、すぐに笑った。「なら、いうちでよかったな」

源吉はち止まり、棟式のに斧を振るった柱があった所を見た。のからは、夕飯の支度をする音が聞こえる。柱の傷みをらかにしたあの、町の々ので自分の評判が終わったとった。

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確かに仕事は減り、蓄えも失い、仲との関係も変わった。許してもらえないことも残った。それでも今、ここには子どもの声がある。

へ帰ると、つねが灯りので縫い物をしていた。文からが届き、しいの台所に慣れてきたといてある。健太郎の娘はよく笑うようになり、豊は今度の曜に清次からの選び方を教わるという。源吉は仕事着を脱いで座り、夕飯をべながら翌の段取りを話した。つねはいつものように途でを挟み、「休むも仕事帳にいておくれ」と言った。

翌朝、源吉はまだの昇らないうちに起きた。庭へると、の湿ったの匂いがした。具箱のから斧を取りし、刃を見た。あの、柱へ振りろした斧である。柄には何度も握った痕が残り、刃は入れされていた。源吉は斧を戻し、代わりに墨壺と差を取りした。

仕事では、健太郎と豊がしいを並べて待っていた。源吉は本目のへ顔をづけ、指で輪をなぞる。隣から豊も同じようにのぞき込み、健太郎は寸法を読みげた。誰かが「よし」と言うまでまない仕事ではなかった。が確かめ、記録し、それから刻みを始めるのである。

「親方、ここはどうします」

豊が尋ねた。源吉はから目をさずに答えた。

「まず、よく見よう。

それから決める」

庭の向こうで、朝の商が戸をけ始めた。鋸の音がつ、乾いた空気のに響いた。

※昭からごろの造宅建築、棟式、町と材商の仕事を背景にした創作です。登物・団体・来事は架空です。

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