みかん小説
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"昼寝ばかりの嫁が、潰れかけの餅屋を救うまで" 第20話

膝掛けの端

の午、餅にはよもぎと豆の匂いが漂っていた。予約分の受け渡しが終わり、内は静かになっている。真弓は翌週の予約票を閉じ、健は蒸籠を洗って逆さに置いた。文子は最の帳簿をつけ、美穂はいつもの折り畳み子で膝掛けをかぶって眠っていた。

最の客が、よもぎ豆餅の箱を抱えながら美穂に気づいた。「がこんなに繁盛してるのに、お嫁さんは今でも昼寝するんですね」。文子はレジからた。へ落ちていた膝掛けの端を拾い、軽く払って美穂の肩へ掛け直す。

「起こさないでください」

客が文子を見る。

「このをて直してくれただから」

客は笑ってをげ、をていった。ガラス戸の鈴が、ちりん、と度だけ鳴る。

その音で美穂が目をけた。「お母さん、今の帳簿、ってました?」。文子は胸を張って帳簿をす。「今は円も違ってない」。美穂は確認し、数分に頷いた。「本当ですね」

「私ももう、あんたの弟子だからね」

「弟子は掛け売りを復活させません」

「してないよ」

「昨、町内会に週待つって言ってました」

文子の目が泳いだ。真弓と健が同に笑いす。

「週だけだよ」

「その週がになるんです」

文子は負けたようにを振り、作業へ戻った。しして、温かい餅を載せた皿を持ってくる。

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よもぎ豆餅と、族用に個だけ作った餡餅。は閉の机を囲んだ。

は暗く、ガラス戸に貼られた予約案内が灯のでく揺れている。が潰れかけていたと、同じ所だった。違うのは、赤い通がもうないこと。そして、誰も自分で全部を背負おうとしていないことだった。

文子は餅をつべ、美穂へ聞いた。「のお昼、何にする?」

美穂はし考えた。「カレーがいいです」

「餅の昼にカレー?」

「お母さんがに、餅は売るほどあるって言ったでしょう」

真弓が吹きし、健も笑った。文子は呆れた顔をしながら、結局「じゃあ私が作る」と言った。

、美穂はまた膝掛けを肩へ掛けた。昔、誰も直してくれなかった古い膝掛けだった。端には糸が本たままで、も褪せている。それでもしいものに替えようとはしなかった。美穂にとっては、が変わったことを番よくっている品だったからだ。

、膝掛けが落ちても、美穂は自分で引きげるしかなかった。文子は働かない嫁だとい、真弓は呑気だと笑い、健もに入らず目をそらしていた。今では美穂が眠っていると、誰かが照を落とし、話の音量をげ、膝掛けを肩へ掛ける。

続いた餅を救ったのは、誰よりく働いたではなかった。族が違った方向へり続けないよう、ち止まって見ることのできただった。

そして餅には、そのも毎週曜の朝になると予約の話が鳴った。

閉、文子は使い込んだ膝掛けを洗おうとして、美穂に「しいのを買おうか」と聞いた。美穂はし迷ってから「まだこれでいいです」と答えた。文子も無理には勧めなかった。その膝掛けには、族が美穂を理解できなかったと、理解するようになったの両方が染み込んでいる。古びた物を全部しくする必はない。役目が残っているなら、入れをしながら使えばいい。それはのにも、族の関係にも同じことが言えた。

ただし、美穂の昼寝のだけは、誰も邪魔しなくなった。

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