"空の米びつと一合の嘘" 第15話
同じ
調査のための聞き取りが正式に始まったのは、の末だった。役所のきな部に、帳面を抱えた々が順番に入った。最初に呼ばれたのはフミだった。彼女は客へなく量ったこと、りないまま納入伝票に受領の印を押したこと、部へを渡して分の補填を頼んだこと、トキの空受領をりながら認めたことを、ひとつずつ説した。言い訳になりそうな事は、聞かれただけ話した。
担当者は「なくしたのは、皆さんに均等に渡すためですか」と尋ねた。フミはうなずいた。「ほかにどうしたらええか分かりませんでした」。千枝は別で同じ言葉を聞いていた。フミが自分の子にも米をべさせていなかったことをって、なお許せない気持ちは残る。しかし取り分がりない、先着順で全部渡せば遅く来たが米をもらえなくなる。フミが迷った理由も、まったく理解できないわけではなかった。
聞き取りの途で、の子を育てる千枝が呼ばれた。「いつからないといましたか」。千枝は受け取ったの覚を差しした。へ戻って量り直した、族が何をべたか、子どもたちが米を残したまでいていた。担当者が驚いて「細かく残しておられますね」と言うと、千枝は「らんのが何回も続いたら、黙って忘れられますか」
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と答えた。そのは勇の帳面にはない、卓側から見たの記録だった。
次に鶴田が呼ばれた。運転は初め、指示どおり倉庫へ寄ったことだけを認めた。しかし正吾が写した途の秤の記録を見せられると、肩を落とした。「袋をけたんは栄の倉庫のや。わしは運んだだけや」。担当者は「が減ったと分かっていましたか」と尋ねた。鶴田はく黙ったあと、「分かってました」と答えた。そして続けた。「わしにも娘がおる。黙ってたら仕事は続いた。でも、それで済むとうたんは違いやった」
は、始終落ち着いた様子で話した。「終戦の混乱で帳簿が揃わず、やむを得ず便宜を図った」。そう繰り返した。空の受領印は登録確認のための仮処置、旧名義の伝票は事務の調、事炊事への納入は復旧作業を支えるための必な配分だという。だが、業者が代を受け取っていたことを問われると、はっきり答えなかった。「それは部さんの商売の話です」。帳面のでは、責任を別の物へ渡すことだけがかった。
佐野はそこでちがり、自分が赤い印を押した類を示した。「この類は、からの指示で訂正したものです」。誰の指示かと聞かれ、佐野はと、事務所で決裁を担当した係の名を挙げた。係は席をしていた。
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「指示したがここにいないのなら、もう度呼んでください」。勇が言うと、担当者は「必なら改めて事を確認します」と答えた。聞き取りだけで終わらせないため、千枝と勇は連名で、その確認を求める面を提した。
夕方、フミは役所の階段で千枝と顔をわせた。千枝は先に声を掛けた。「うちはない言うてった。お宅もずつなくした言うて認めた。それだけなら話は簡単やったのに」。フミは「ほんまに」と答えた。「でも、受け取ったことにされた米が、まだどこかにあるんです」。千枝は空を見げた。焼け残った建物の向こうに、のが広がっていた。「あればええな。けど、使われてしもた米は、帳面だけ直しても戻らへんで」
その夜、勇は庭ごとの量を数え直した。すべて同じではなかった。さな袋のでは半ほど、数のいではを超えたもある。フミはなく量る際の基準さえ定にしていなかったのだ。勇がそのことを伝えると、母は顔を覆った。「私は平等にしたつもりで、違う平等を作ってたんやな」。勇は黙って帳面を差しした。「これから計算し直そう。母さんのためやない。待ってたのために」
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