"空の米びつと一合の嘘" 第16話
の袋
に入った最初の朝、部がへ来た。とは違い、帳に座るなりきな荷物を畳へ置いた。には、破れた麻袋が数枚入っていた。縁に青い紐の切れ端がついている。「これは、さんのへ運ぶ分からた袋や」。フミはを触れず、「どうして今持ってきたんです」と尋ねた。部は肩を落とし、「昨、倉庫にいた若い者が役所へ呼ばれた。もう隠しきれん」と答えた。
部の説によれば、受入れた米の部は乾物倉庫で分けにされ、事炊事へ送られた。残りの部は「傷みを調べるために保留」と類に記されたが、実際にはの買いへ渡されていたという。勇が代の記録を尋ねると、部は別の帳面をした。そこには業者名ではなく、い符丁と数字が並んでいる。「全部をわしが売ったんやない。が買いを紹介してきた分もある」。
「今さらさんだけのせいにするんですか」。フミの声は静かだった。部は「違う」と答えた。「わしは自分の倉庫で受けた。も受け取った。客へ渡す米を減らしたのはさんでも、倉庫で抜いたのはわしらや」。勇は初めて、部が自分のしたことを逃げずに言い始めたとじた。ただし話したからといって、失われた米が戻るわけではない。部は帳面を役所へ提すると約束し、そので面をいた。
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勇は麻袋の内側にさな片が残っているのを見つけた。に濡れて文字の部が読めないが、番号があった。佐野の写しと照らすと、それはのに納入したことになっている袋の番号だった。袋だけが倉庫へ残され、米が別の経へ渡されていたのだ。フミは片を見つめ、「この袋を受け取った、ほんまのさを量ってたら」と呟いた。勇は「今から同じことを言うても戻りません」と答えた。「せやけど、次に受け取る誰かが同じ目に遭わんようにはできます」
部が提を決めた翌、旧名義の伝票を管理していた係・野も事を聞かれた。野は最初、「帳面の記載は補助作業員の違い」と説したらしい。佐野はその言葉を聞き、顔を変えた。「私に押しつけるつもりや」。勇は「類の写しを残してある」と答えた。佐野は首を振った。「それだけやない。私は確かに度押した。その責任までなかったことにはしたくない」。
千枝は各庭の分をもう度計算し、名の横へさく印をつけた。の帳面だけでなく、の枡で量った記録や、配に並んだの証言も集めていた。「完全にやったかどうか分からんもある」と彼女は言った。「分からん分まで勝に決めたら、また同じことするだけや」。勇はその慎さにした。
千枝はりを失ったわけではない。ただ、りのさで数字を増やすことを自分に許さなかった。
寒い夜、弘は母の隣で古い麻袋のほつれを結んでいた。「お母ちゃん、米の袋って何回も使うん?」。フミはうなずいた。「破れたら繕って、また使う」。弘は縫い目を指さし、「これ、誰が繕ったんやろ」と聞いた。袋の縁には、フミのらない丁寧な赤い糸が残っていた。勇はその痕を見て、袋が何度ものを通ったことを実した。米のき先を変えただけでなく、ただ運んだ、何もらず炊いた、べた。そのすべての暮らしが本の細い糸のようにつながっていた。
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