"空の米びつと一合の嘘" 第20話
消えない
がまり、米の分についての理がめられた。いくつかの配送伝票には正確な処理が認められ、関係者による代の受け取りも調べられた。すぐに誰もが納得する結論がたわけではない。記録の欠けた部分もあり、すでに消費された米を袋ごと取り戻すことは能だった。のの配取扱いも、そののうちは再されなかった。
勇は分をごとにき分けた帳面を作った。確かめられた量、証言はあるが数字が定まらない量、側の記録とい違う量。それぞれを分けてき、分からないところを勝に埋めなかった。フミは毎晩その帳面をき、修理仕事で得たわずかなを別の封筒に入れた。客へすぐ米を返せない分、暮らしに必な品物の修理を無償で請けることもあった。ただし相が望まないには押しつけなかった。
の配には、取扱所のにしいが貼られていた。米の割当てが遅れるは、その理由と次の確認を記すという。さな枚だったが、千枝はそのでを止め、付をの覚へ写し取った。以は「次まで待って」と言われれば、それがいつかさえ分からなかった。まだ分ではなくても、尋ねたことに答えが返る。その違いを彼女は切にった。
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千枝のでは、女が学を卒業するを迎えていた。は妹のために古い鞄を直してやり、修平はの休みのに庭へさな野菜畑を作った。米はまだりない。けれど千枝は以のように、を誰にも言わずしなくなった。所の母親たちと配のらせを確かめい、体調を崩したがいれば医者の相談先を教えた。きな善ではない。毎をやり過ごすための、さく確かなやり取りだった。
ある、千枝はフミのへ破れた布袋を持ってきた。「もう回直してもらえますか」。以フミが縫い直した袋で、の部分がまた擦り切れていた。フミは「今度は丈夫に縫い直します」と答え、糸を本取りにした。千枝はのに座り、針のきをしばらく見ていた。「うちの子、今はし太りました」。フミが顔をげると、千枝は「別の配所でも決まった分はないけど、量を確かめられるようになったのが助かります」と言った。
「ほんまに申し訳ありませんでした」。フミはまたをげた。千枝は布袋を受け取り、「今は修理を頼みに来たんです」と返した。許したとは言わなかった。以の分の理も続いている。しかし活のすべてをつのりに預けたままでは、ともへめない。フミは代を受け取り、帳面へ正確に記した。
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千枝はその字を見て、しだけうなずいた。
その晩、勇が母へ話した。「港の仕事で、荷の受け渡しを数える係に回らへんかと言われた」。フミは驚いた。「嫌なことをいすやろ」。勇は首を振った。「今度は量った数字と渡した数字を、目ので確かめられる仕事や」。母は黙って聞き、「やってみたらええ」と答えた。弘が横から「兄ちゃんが米の番になるんか」と笑う。勇は「米だけやないで」と言って、弟のを軽く撫でた。
が来ても、には配所の板が戻らなかった。フミは板を丁寧にし、裏の物置へしまった。勇は伝おうとしたが、母は「自分でする」と言った。の米という名を消したいのではない。自分が確かに守れなかった約束を、見ないふりせず片づけたかった。板の裏には、夫が打った古い釘が残っていた。フミは本ずつ抜き、掌へ載せた。
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