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"娘の披露宴に新郎側が全員欠席――清掃員の夫が動いた" 第1話

空っぽの披宴会

「結婚なんて、最初から冗談に決まってるだろ」

スピーカーにした娘のスマートフォンから、聞き慣れた男の声が響きました。 し掠れた、を馬鹿にしたような笑いを含んだ声でした。

控の壁にかかった計は、正午を分過ぎていました。 本来であれば、扉がいて華やかな音楽が流れ、勢の拍に包まれているはずの刻です。

けれど、け放たれた扉の向こう、披宴会「の」の郎側の円卓は、つ残らず空っぽでした。

と淡い青のが飾られたテーブルに、の縁取りが施された名札だけが虚しく並んでいます。 郎の親族、友、そして会社関係者。 分の席に、誰として座っていませんでした。

話の向こうから、何もの品な笑い声がなって聞こえてきました。 勢がどこかの広に集まって、酒をんで盛りがっているような騒ぎ声でした。

『本当に、うちの嫁になれるとってたのかしら?』

甲い、に障る女の声が響きました。 郎の母親、桧佳代子の声でした。

『清掃員のと親戚になるなんて、恥ずかしくて無理に決まってるだろ!』

続いて聞こえてきたのは、父親の俊彦の声混じりの嘲笑でした。 背で、親戚らしき男たちのドッと湧く笑い声が追い討ちをかけます。

郎の尚弥は、何も言いませんでした。

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両親の言葉を止めるでもなく、ただ話の向こうで黙って息を潜めていました。

カシャン、と鈍い音がして、娘のからスマートフォンが滑り落ちました。 絨毯のに落ちた画面の向こうから、なおも楽しげな笑い声が漏れ聞こえてきます。

「……うそ……うそでしょ……」

純のウェディングドレスにを包んだ紗良の膝が、崩れ落ちるように折れました。 面に広がったいベールが、無残に波打ちます。

紗良は両で顔を覆い、声にならない嗚咽を漏らしました。 肩が刻みに、激しく震えていました。

私の体も、りと屈辱で指先まで震えていました。 あのたちは、このの、このを選んだのです。

娘が何ヶもかけて準備をし、に度のれ着をにまとい、親族や友を招いたその瞬を狙って、奈落の底へ突き落としたのです。

叫びしたい衝を必で抑え、私はに膝をつきました。 留袖の裾が乱れるのも構わず、泣き崩れる娘の震える背を抱きしめました。

「紗良……帰ろ。おうちに帰ろう」

自分でも驚くほど、掠れた声でした。 刻もく、この残酷な見せ物のような所から娘を連れしてやりたかったのです。

そのでした。 隣でずっとを閉ざしていた夫の涼が、モーニングの内ポケットから静かにスマートフォンを取りしました。

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いつも穏やかで、誰に対しても腰のい夫でした。 結婚して、このが声を荒らげてった姿など、私は度も見たことがありませんでした。

その夫が、画面を見つめたまま、く呟いたのです。

「あの族は、もう切る」

控の空気が、すっと音をててえ込みました。 鳴ったわけではありませんでした。

むしろ、普段の夫よりも静かな、をうようない声でした。 けれどそのたさの底に、私が今まで度も目にしたことのない、底れない暗が沈んでいました。

「あなた……?」

私が息を呑んで見げると、夫は何も言わず、指先で画面を素く操作していました。 誰かにいメッセージを送っているようでした。

これが、すべての始まりでした。 翌朝、郎の実から鳴り止まないほどの話が押し寄せてくることになります。

連れ添った私の夫が、体何者だったのか。 私はその話によって、いることになるのです。

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