「ねえね」——1歳10か月の娘が手を伸ばしたのは、金髪にピアス姿の女子高生だった。妻を亡くし、実家で娘の紬を育てる26歳の挿絵画家・湊。思わず娘を抱き寄せた彼とは対照的に、少女・凛は頬を赤くして「可愛い」とつぶやく。それから買い物帰りに顔を合わせるようになり、凛は父娘の日常に少しずつ溶け込んでいく。ところがある夕方、湊は公園で泣いている彼女を見つける。紬が差し出したのは、亡き母から贈られた大切な白いうさぎ。そして凛のかばんにも、古びたうさぎが入っていた。描きかけの絵本に隠された夢と、母親に言えなかった思い。話を聞こうと隣に座った湊自身もまた、誰にも打ち明けられない寂しさを抱えていた。