"「子なし」と笑われた私に、姪が吹雪の夜に土下座した" 第2話
煙の向こうの嘲笑
居からは、親戚たちの楽しげな笑い声とお酒の匂いが漂ってきていました。
「お姉さん、丈夫ですか? これ、私がお運びしますから座ってください」
男のお嫁さんである茜(あかね)さんが、きなお腹を抱えながら優しく声をかけてくれました。 茜さんは妊娠かで、いつも私を実の姉のように気遣ってくれる優しいです。
「ありがとう、茜さん。でも体やしちゃいけないから、座ってて」
私が笑顔を取り繕ってお盆を抱えていると、奥の座敷から剛がすっと歩み寄ってきました。
「望、あいつまた何か言ってきただろ。俺が発ガツンと言ってやる」
拳を握りしめる剛の腕を、私は慌ててで制しました。
「いいのよ、剛。お父さんもお母さんも楽しそうにしてるんだから、今はお祝いのでしょ。私は平気だから」
「平気なわけないだろ。おがで抱え込むことないんだぞ」
剛のまっすぐな差しに、涙がそうになるのを必でこらえました。 このが方でいてくれるだけで、どんな嫌にも耐えられる気がしていました。
そのでした。 ぷんと煙の煙がを突いたかとうと、私の真横にドカッとが腰をろしました。
翔子さんの夫であり、男の団蔵(だんぞう)さんでした。
「ようよう、めでたい正からシケた面してんなあ。
広告
誰の悪言ってんだ?」
団蔵さんは茜さんのきなお腹を気にするもなく、指に挟んだ煙のを畳の隅に落としました。 茜さんが顔をしかめると、男がさっと妻の肩を抱いてざけました。
「おっと悪い悪い、腹にガキがいたんだったな。すっかり忘れちまってたわ」
反省のなど微もない、ら笑いを浮かべた謝罪でした。 そして団蔵さんは、私の顔へ向けてわざと煙を吹きかけてきたのです。
ゲホッと咳き込む私を、剛がりに満ちた目で睨みつけました。
「兄貴、いい加減にしろ。煙を吸うならへけ」
「弟のくせに偉そうに指図すんなよ。……まあ、子どもができねえ女を持った腹いせに、兄貴に当たりたくなる気持ちも分からんではないがな」
団蔵さんは品な笑い声を響かせながら、よろよろとちがりました。
「おらがうちの嫁をどうおうが勝だが、妬みで愚痴をこぼすのはみっともねえぞ。子どもがいねえ奴には、親の苦労なんざ分からねえだろうからな!」
吐き捨てられた言葉が、たいのように私のに広がっていきました。
また、子どもがいないことへの侮辱。 あと何回、この屈辱に耐えなければならないのだろうか。
唇を噛み締め、線を落とす私の横で、剛が今にも兄に殴りかかりそうなほど肩を震わせていました。
広告
おすすめ作品
-
完結第16話
二人きりのはずだった旅行
結婚以来、義母のわがままと、それを当然のように受け入れる夫・俊也に振り回されてきた由香。二人きりの結婚記念日旅行まで義母に台無しにされた翌年、夫は「今度こそ二人だけで行こう」と約束する。ところが出発当日、玄関には大きな旅行鞄を抱えた義母の姿が。「家族なんだからいいだろ」と開き直る夫に、由香は思い切った行動に出る。人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題3.0万字5 65 -
完結第14話
金髪の女子高生に、娘が「ねえね」と手を伸ばした
「ねえね」——1歳10か月の娘が手を伸ばしたのは、金髪にピアス姿の女子高生だった。妻を亡くし、実家で娘の紬を育てる26歳の挿絵画家・湊。思わず娘を抱き寄せた彼とは対照的に、少女・凛は頬を赤くして「可愛い」とつぶやく。それから買い物帰りに顔を合わせるようになり、凛は父娘の日常に少しずつ溶け込んでいく。ところがある夕方、湊は公園で泣いている彼女を見つける。紬が差し出したのは、亡き母から贈られた大切な白いうさぎ。そして凛のかばんにも、古びたうさぎが入っていた。描きかけの絵本に隠された夢と、母親に言えなかった思い。話を聞こうと隣に座った湊自身もまた、誰にも打ち明けられない寂しさを抱えていた。感動|人生逆転1.7万字5 1 -
完結第20話
娘の披露宴に新郎側が全員欠席――清掃員の夫が動いた
一人娘の紗良が待ち望んだ結婚式。しかし披露宴当日、新郎側の42席はすべて空席だった。ようやくかかってきた婚約者からの電話には、「結婚なんて冗談だ」という声と、清掃員の父を見下す家族の笑い声。泣き崩れる娘を抱きしめる母・千尋の隣で、いつも穏やかな夫・涼一が静かに言った。「あの一族は、もう切る」。翌朝から、新郎一家の電話が鳴りやまなくなる。三十一年間、黙々と床を磨いてきた夫には、家族さえ知らない一面があった。あの一言には、いったいどんな意味が隠されていたのか。因果応報|人生逆転|夫婦|第二の人生2.7万字5 179 -
完結第10話
こぼされた定食の代償
社員食堂で働く43歳の松尾順子は、料理を通して社員たちを支えることに誇りを持っていた。ところが、営業部の神崎と宮下は、食堂のスタッフを見下し、暴言を繰り返していた。ついには大勢の前で定食を床にぶちまけ、順子たちを笑いものにする始末。さらに職場では不審な情報漏洩も発覚する。そんなある日、専務が食堂を訪れると、二人の態度は一変。順子を知らない二人は、そこで思いもよらない事実を知ることになる。職場逆転|人生逆転|修羅場1.5万字5 71 -
完結第10話
赤ワインの余興
義妹・真由美の結婚披露宴で、突然赤ワインを浴びせられた美桜。義母も親族も「ただの余興」と笑い、夫の達也まで美桜を責め立てる。 結婚して三年。貧しい嫁だと見下され、家族の言いなりになってきた美桜だったが、実は誰にも明かしていない秘密があった。 しかも、名門病院の跡取りとの結婚を喜ぶ義妹には、恐ろしい裏の顔があった。美桜の手元には、披露宴前夜に録音された決定的な会話が残されている。 華やかな祝宴の裏で進む金と欲望の企み。美桜が静かにスマホを取り出したとき、すべてが動き始める。因果応報|人生逆転|兄弟姉妹|第二の人生1.9万字5 159 -
完結第15話
年収三千万円の嘘
41歳の内科医・相沢まりなは、家事と育児を任せていた専業主夫の康太が、息子のサッカークラブの保護者・美沙と親密な関係になっていたことを知る。しかも二人は、子どもたちを置き去りにして密会を重ねていた。息子を守るため離婚を決意したまりなのもとに、ある日、美沙から再婚式の招待状が届く。驚いたことに、康太は自分を「年収3000万円の医師」だと偽っていた。元妻を見下し、披露宴で祝辞まで読ませようとする美沙。招待を受けたまりなは、いったい何を語るのか。夫婦|第二の人生|不倫2.6万字5 163