"母が泊まらない理由" 第4話
張り切りすぎた息子の準備
母が訪ねてくる曜の朝、直はいつもよりもく目を覚ましました。
階段を駆けがり、階の客の窓を全にして空気を入れ替えます。 押し入れからしたばかりの客用布団をパンパンとで叩き、真しいシーツのシワを丁寧に伸ばしました。
階にりてくると、玄関のタタキにスリッパを並べ始めました。 それを見た咲が、コーヒーカップをにしたまま目を丸くしました。
「ねえ、なんでスリッパがてるの?」 玄関には、ベージュの反発スリッパと、グレーの丸洗いできる布製スリッパが几帳面に並べられていました。
「反発のやつと、洗えるやつ。どっちが履きやすいか分からないだろ?」 直が真面目な顔で答えると、咲は呆れたように吹きしました。
「お義母さんの、つしかないよ」 「元の適さって事なんだよ。宅設備の仕事をしてると、こういう細かいところが気になるんだって」
直は腕を組み、得げにスリッパを見ろしました。 咲は苦笑いを浮かべ、階を見げました。
「その割には、階のカーテンは気にならないの?」 「……うっ」 直の言葉が詰まりました。
客のために調したカーテンは、直が自分で窓の寸法を測ってネットで注文したものでした。 しかし、測り方を違えて丈がすぎたため、のにセンチほど裾がだらしなく溜まっていたのです。
広告
「ドレープって言うんだよ、こういうの。のホテルみたいでおしゃれだろ?」 直が苦しい言い訳をにすると、咲はさく首を横に振りました。
「嘘ばっかり。掃除をかけるとき、裾を巻き込んで吸っちゃうんだよ」 「母さんが帰ったらちゃんと直すよ。今はもう、このままでく」
そんな押し問答をしているうちに、玄関のインターホンがピンポンと鳴りました。 「こんにちは。お邪魔しますね」
扉をけると、そこにはキャメルのコートを着た母のかず子がっていました。 両には、ずっしりとそうな袋が提げられています。
「あら、いい匂いがするわねえ」 「お母さん、いらっしゃいませ。まだ何も作ってないですよ」 咲が笑顔で迎えると、かず子は呼吸をして目を細めました。
「しいの匂いねえ。これ、途で買ったみかんと、根の煮物。作りすぎちゃってかったわ」 「ぶらでいいって言ったのに。かっただろ」 直が袋を受け取ると、底の方になタッパーが入っていました。
「咲さん、にも好きだって言ってくれたでしょう?」 「はい、好きです! にいただいたとき、直がほとんどでべちゃって」 「俺だけじゃないだろ」
リビングへ向かうの背を見ながら、直はほっと胸を撫でろしました。 嫁と姑のにある穏やかな空気が、自分の作ったしいをじんわりと温めてくれているような気がしていました。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
認知症の父を「逮捕しろ」と叫ぶ姑――孫の一言で形勢逆転
夫を突然亡くした佳苗は、幼い二人の子どもを育てながら、認知症になった父の介護も引き受けることになった。心身ともに限界を迎えるなか、支えになってくれたのは小学六年生の息子・亮太だった。家族で父の実家へ引っ越し、ようやく穏やかな暮らしを取り戻したかに思えたが、何かにつけて佳苗を責める姑が、またもや騒ぎを起こす。ある日、仕事中の佳苗に亮太から緊急の電話が入った。急いで帰宅すると、家の前にはパトカーが。家の中でいったい何が起きたのか。姑の言い分に対し、亮太が語り始めたのは……。祖父母と孫|嫁姑|絶縁|親子関係|介護|認知症1.6万字5 36 -
完結第15話
初孫の誕生日に締め出された私、翌朝すべての援助をやめた
初孫の一歳の誕生日。お祝いの品と五万円を持って息子夫婦の家を訪ねた私と夫は、嫁から「今日は身内だけなので」と玄関先で追い返された。家の中には嫁の両親がいるのに、息子は顔すら見せない。妊娠中から買い物や家事を手伝い、ベビー用品や毎月の保育料まで援助してきた私たち。ところがその夜、息子からかかってきた電話で、思いもよらない言葉を耳にする。翌朝、私たち夫婦はある決断を下した。因果応報|祖父母と孫|絶縁|親子関係1.5万字5 296 -
完結第12話
戸籍の中のもう一人の妻
海外赴任中の夫・健太に頼まれ、横浜の区役所を訪れた結衣。ところが戸籍の配偶者欄には、見知らぬ女性の名前があった。しかも婚姻日は、結衣が入院した母の看病に追われていた去年の夏。七年間信じてきた夫は、イギリスで別の女性と暮らしながら、日本では何食わぬ顔で優しい夫を演じ続けていた。さらに、二人で貯めたお金まで使われていたことが分かる。結衣は夫を問い詰めず、静かに証拠を集め始めた。夫が積み重ねてきた嘘を、彼女はどう暴いていくのか。人生逆転|裏切られた|夫婦|絶縁|不倫1.3万字5 461 -
完結第15話
義母の老人ホーム代120万円を勝手に約束した夫
医療機器メーカーで働く結衣は、結婚以来、夫の翔太と義母の幸子に頼まれるまま、家電の買い替えや旅行代を負担してきた。月7万円の仕送りも、半分出すと約束した夫は一円も払わない。それでも家庭を壊したくない一心で我慢していたが、義母はついに結衣の勤務先へ送金を催促する電話をかけてくる。さらに夫は、義母が希望する高級老人ホームの入居金120万円まで、結衣に無断で支払う約束をしていた。夫のスマホに届いた一通のLINEをきっかけに、結衣は自分の人生を取り戻す決意をする。人生逆転|嫁姑|夫婦|絶縁|介護|金銭問題2.7万字5 2 -
完結第15話
看護師を捨てた元彼、10年後に妹の名刺を踏みつけた
看護師のヒナは、起業を夢見る恋人・大志を支えるため、夜勤を増やして生活費を払い、家事も一人で引き受けていた。ところが大志は事業に成功すると、社長令嬢との婚約を決め、ヒナを一方的に捨ててしまう。それから10年。偶然再会した大志は、独身のヒナを見下し、看護師の仕事まで大声で馬鹿にし始めた。そこへ現れた妹の桃が、冷静に言い返す。しかし大志は、桃が差し出した名刺を床に落とし、靴で踏みつけてしまう。その名刺が何を意味するのか、知りもしないまま……。因果応報|兄弟姉妹|夫婦|絶縁|金銭問題|不倫1.6万字5 0 -
完結第15話
誕生日に姪を選んだ夫、3年後の再会で絶句
読書好きで控えめな陽菜子は、誠実だと信じていた夫・高尾と穏やかに暮らしていた。ところが三十歳の誕生日、夫は姪の百花を連れて現れ、妊娠を告げたうえで離婚届を突きつける。「子供ができないお前が悪い」と責められ、家まで追い出された陽菜子は、誰も自分を知らない町で新しい生活を始める。やがて高校時代の同級生との再会をきっかけに、少しずつ前を向けるようになっていく。そして数年後、偶然出会った元夫と姪の前で、思いがけない出来事が起こる。因果応報|人生逆転|夫婦|親子関係|修羅場|不倫2.1万字5 51 -
完結第12話
150万円を払わせたママ友、次は寿司300万円
夫の昇進祝いで家族とレストランを訪れたひまり。楽しい食事の最後に告げられた会計は、なんと150万円。原因は、顔見知り程度のママ友・ぽて子一家が大量の料理を注文し、勝手にひまりへ支払いを押しつけたことだった。仕方なく立て替えたものの、返金を求めると渡されたのは、まさかのポテトチップスの空袋。しかも数日後、ぽて子は高級寿司店で新たな計画を立て始める。「ママ友なんだから払って当然」と言い張る一家に、ひまりが取った行動とは?因果応報|夫婦|真相|親子関係|金銭問題|修羅場1.2万字5 862