みかん小説
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"母が泊まらない理由" 第15話

再び訪れた母と、本当の客

がけたの半ば、澄み切ったれの曜のことでした。 玄関のチャイムが鳴り、母のかず子が再び居を訪れました。

「こんにちは。今も寒いねえ」 「お母さん、いらっしゃいませ。どうぞがってください」

咲が笑顔で迎え、直が母のコートを預かりました。 お茶をんだ、直は母を招きして階へと案内しました。

「母さん、階の部、見てよ」 ドアをけると、そこにはすっきりと理された咲の仕事部が広がっていました。 机のにはパソコンと資料が並び、窓辺にはカーテンがぴったりのさで揺れています。

「あらあ、すっかり素敵な仕事部になったねえ。使いやすそうだわ」 かず子は目を細めて部を見回しました。

「はい。仕事が終わったあとに片付けなくていいだけで、本当に楽になりました」 咲が嬉しそうに答えると、かず子は堵のため息を漏らしました。

「よかったわねえ。当たりもいいし、仕事も気持ちよくできるでしょう」 かず子は部の隅々を眺め、以のようにに敷きっぱなしになっていた布団がないことに気づきました。

「こうなると、私の寝る所はなくなっちゃったわねえ」 かず子がわざとらしくを尖らせると、直がすかさず押し入れの襖をけて見せました。

「布団なら、ここに入ってるよ。

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母さんが泊まるは、机を壁の端に寄せるだけだからさ」 「あら、そうなの? じゃあね」 かず子は声をてて笑い、満そうに頷きました。

夕を終え、計がを回ったときでした。 「母さん、今は何ので帰るんだ?」 直が尋ねると、かず子は湯呑みを置いて帳をきました。

「半のに乗るわ。夜に見たいサスペンスドラマがあるのよ」 「相変わらずいな」 直が苦笑いした、そのでした。

「ああ、そうそう」 かず子はカレンダーのページをめくりながら、何気ない調で言いました。

「来の第曜なんだけど……泊めてもらえるかしら?」

「え……?」 直と咲が同に声をげ、顔を見わせました。

「泊まるのか!?」 「昔の職のお友達と、こっちのくで同窓会があるのよ。終わるのが夜遅くなりそうだから、帰れなくなっちゃうの」

「ああ、そういうことか!」 直が納得したように声をげると、かず子はいたずらっぽく目を細めました。

「何を驚いてるのよ。泊まっていいって言ったのは、あんたたちでしょう?」 「もちろんです! 朝ごはん用に、美しいパンさんのクロワッサンを買っておきますね」 咲が弾んだ声で答えると、かず子は嬉しそうに微笑みました。

「あら、楽しみねえ。じゃあ、お願いしようかしら」 「母さん、今夜のうちに布団をしておこうか?」 直がのめりに言うと、かず子は呆れたようにを振りました。

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「今からさなくていいわよ! まだかも先なんだから!」 リビングに、のるい笑い声が響き渡りました。

帰り支度をえたかず子は、提げ袋のからさな作りの布巾着を取りしました。 「咲さん、これ、仕事部の棚にでも置いておいてくれる?」

「これ、お裁縫セットですか?」 には、さなハサミととりどりの糸、そしてあの裾げテープが入っていました。

「直がまたカーテンのさを測り違えたら、使ってちょうだい」 「もう直したって! 今度はまっすぐだろ!」 「はいはい。じゃあ、ボタンが取れたときにでもね」

「ありがとうございます。切に使わせていただきますね」 咲が両で巾着を受け取り、胸に抱きしめました。

駅までの夜を歩きながら、直は母の隣に並びました。 「来、同窓会が終わったら連絡してよ。駅までで迎えにくからさ」

「ええ、頼むわね。あ、直」 改札ので振り返ったかず子が、差し指を本てて笑いました。

「今度は、スリッパはだけでいいからね」 「……咲にも全く同じこと言われたよ」 「あのカーテンを見たら、誰だってそううわよ」

母は軽やかにを振り、自改札を抜けていきました。 その背は、誰の荷でもなく、自らのでしっかりとを踏みしめていました。

見送る直の胸のには、の夜のたさをかき消すような、あたたかな灯が静かに灯っていました。

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