"母を逃がした電話" 第3話
するとがすぐにんできました。
「あら、どこへくの?ねえ、節子さん、今はがいからやめておきましょう」
腕をつかまれました。
やんわりとした力でしたが、私は逆らえませんでした。
いつのにか私は、自分のにいながら囚のような活を送っていました。
さらに美は、私を見たこともないクリニックへ連れていきました。
「お母様、健康診断にきましょう。優さんも配していましたから」
連れてかれたのは、駅の雑居ビルの3階にある「そよメンタルクリニック」でした。かかりつけ医ではありません。
を着た黒田という医師は、いくつか質問をしました。
「今は何ですか」
「912です」
「ここはどこですか」
「病院でしょう」
「お名とを教えてください」
「田節子。昭25315まれです」
私はすべて正確に答えました。
それなのに黒田医師は、美の方をちらりと見てからカルテに何かをき込みました。
「うーん、軽度認障害の初期段階ですね。見守りが必な状態です」
私はを疑いました。
「先、私はぼけてなんかいません。今の質問にも全部答えたじゃないですか」
黒田医師はため息をつきました。
「田さん、そうやってすぐになるのも症状の1つなんですよ」
美はそばで刻そうに頷いていました。
帰りのので、私は言いました。
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「美さん、あの先おかしいわ。私はどこも悪くない」
美はバックミラー越しに私を見て、微笑みました。
「お母様、丈夫ですよ。私たちがちゃんとお世話しますから」
その笑顔は、能面のように見えました。
私は優に伝えようとしました。
けれど優が張から帰ってきたも、美は必ずそばにいました。
「優、ちょっと2で話したいことが……」
私がそう言いかけると、美がすぐに割り込みました。
「あら、お母様。優さんはお疲れなんですから、またにしましょうね」
あるいは、こう言うのです。
「優さん、お母様、最ちょっと混乱することがあるんです。あまり刺激しないであげて」
優は配そうな目で私を見ました。
けれどその目は、母が認症かもしれないとい込まされた目でした。
私はので叫びました。
違うのよ、優。
私はまだ、ちゃんと分かっている。
けれど、その声は届きませんでした。
9も終わりにづき、夜がし肌寒くなってきた頃でした。
午1過ぎ、私はトイレに起きました。廊を歩いていると、2階の奥、美たちが使っている部から声が漏れていました。
ドアがしだけいています。
私はを止めました。
「名義の類、もう準備できてるの?」
の声でした。
続いて、美の声が聞こえました。
「ほぼ揃ってる。あとはあのばあさんの実印さえに入れば、いつでもける」
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普段の「お母様」と呼ぶ声とは、まるで別でした。
「認症の診断もあるんだから、成見の申してをすればいい。見にうちの父がなれば、財産は全部こっちでかせる」
美の声に続き、幸のい笑い声が聞こえました。
「このだけで1億はくだらん。預とわせたら3億い。正直、笑いが止まらんわ」
私は壁にをつきました。
膝が震えます。
最初に込みげたのは、恐怖ではありませんでした。
りでした。
このたちは最初から私の財産が目当てだったのか。
美は優をしていたのではなく、このとおを狙っていたのか。
声をげそうになりました。
部にび込んで、鳴りつけてやりたかった。
けれど、私は唇を噛みしめて踏みとどまりました。
ここで騒いだら終わりだ。
証拠がありません。
私1の証言など、認症の寄りの妄として片付けられるでしょう。
私は音をてないように自分の部へ戻りました。
布団に入っても眠れませんでした。暗ので、正雄の言葉がよみがえります。
「何かあったら田先を頼れ」
お父さん、あなたには分かっていたの。
こうなることが。
その夜から、私は記録を始めました。
部にあったカレンダーの裏側、い余にさな字でき始めたのです。付、刻、誰が何を言ったか。記憶がしいうちに、字も違えないように丁寧にきました。
「924、午115分。
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