"龍神窟に眠る約束" 第7話
さな貝殻は、20のを越えて、1つに戻った。
「お母さん、帰ってきたね」
美咲はそう呟いた。
その声は震えていたが、20のような幼い泣き声ではなかった。
真実を見届けた者の声だった。
葬儀の、美咲は港へ向かった。
夕方のは穏やかだった。波はゆっくりと岸壁を洗い、くの龍神窟は黒いとなって沈んでいた。
徳の婆さんはもうこの世にいなかった。
けれど美咲は、あの朝、婆さんが言った言葉をいしていた。
「今のは黒い」
あの警告は、ただの迷信ではなかったのかもしれない。
は、にの欲望を映す。
あの、黒かったのはではなく、のだったのかもしれない。
背から音がした。
振り返ると、哲也がっていた。
顔には疲労が刻まれ、目のにはいがあった。
「美咲」
彼はしばらく言葉を探し、やがてくをげた。
「本当に、すまなかった」
美咲は何も言わなかった。
許せるかどうかは、まだ分からなかった。
哲也の裏切りも、さも、事も、すべて理解できるほど簡単ではなかった。
けれど、哲也が最に妨害装置を止めなければ、母たちは見つからなかったかもしれない。
美咲はを見たまま言った。
「あなたのことを、すぐに許すことはできない」
哲也は顔をげなかった。
「分かってる」
「でも、最に止めてくれたことは忘れない」
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哲也の肩がさく震えた。
美咲はそれ以何も言わず、港の先へ歩いていった。
その、の密輸組織には本格な捜査が入り、隠されてきた文化財密輸の実態がらかになっていった。は報できく揺れた。観客もはのいた。
けれど、美咲はった。
嘘のに成りつ平穏など、本当の平穏ではない。
母たちのを隠したまま続くの暮らしは、どこかで必ず腐っていく。真実がるみにたことで、は初めてやり直す会を得たのだ。
数か、美咲のドキュメンタリーは放送された。
タイトルは、『龍神窟に眠る約束』。
映像には、20の失踪、の沈黙、岩崎の証言、底洞窟の発見、そして母のに握られていた貝殻が映しされた。
番組の最、美咲はカメラのでこう語った。
「母は、約束を破ったのではありませんでした。帰ってこられなかっただけでした。けれど20、母は真実と緒に、私のもとへ帰ってきました」
放送、全国からくのが届いた。
失われたを待ち続ける族から。
真実をる勇気をもらったというから。
そして、できる々から。
美咲はその1通1通を丁寧に読んだ。
あるれた朝、美咲は再び港にった。
のには、1つに戻った貝殻があった。
は静かだった。
20の朝と同じように、がく漂っていた。
美咲は貝殻を胸に当て、目を閉じた。
母の声が聞こえた気がした。
「お母さん、必ず帰ってくるからね」
美咲はさく頷いた。
「うん。おかえり、お母さん」
そう言って、美咲は貝殻を切にポケットへしまった。
は何も語らない。
けれど、その沈黙の奥で、20隠されていた真実は確かに浮かびがった。
そして美咲は、母との約束を胸に、ようやく止まっていたを歩きした。
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