"黒いゴミ袋に詰まった十五年" 第20話
誰もいない静かなアパートの部に私の泣き声だけが響き渡った。
それは15分の抑え込んでいたが溶けす涙だった。
りの涙でもなく、彼らへの悔しさや惨めさだけの涙でもない。
やっと私自が自分を許すことができた温かい涙だった。
それから半というが穏やかに流れていった。
季節はになり、たいが吹くも増えてきた。
私は今隣町にある介護施設の厨で働き始めている。
毎何もの事を作る仕事は決して楽なものではない。
きな鍋で煮物をかき混ぜるたびに腕には疲労が残るけれど、今の私は自分を削って誰かに尽くすために働いているのではない。
自分ので自分自の活を作りげるために包丁を握っているのだ。
の調理スタッフたちも私の過を根掘り葉掘り聞いたりしない。
ただ緒に働く仲として私をのとして扱ってくれる。
それが私にとってどれほどありがたいことかわからなかった。
あるの昼がり、堂で配膳をしているのことだった。
子に乗った配の女性利用者が私に優しく声をかけてくれた。
「今のこの煮物、が優しくてとっても美しいね。」
私は瞬だけ驚き、そしてゆっくりと自然な笑顔を返した。
「ありがとうございます。
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たくさんべてくださいね。」
誰かに褒められ、素直にその言葉を受け取れた自分にも驚いていた。
私の作ったものがきちんと誰かの温かい血肉になっている。
「し甘いわね」とめた突き返されたあのの卓とは違う。
私の働きが正当に評価され、謝される所が今の私にはあるのだ。
その実が私のをしずつ確実に癒してくれていた。
夕方、仕事帰りに桜商のスーパーへち寄った。
商を歩くと夕飯の買い物をする族連れとすれ違う。
以ならそんな普通の族を見るだけで胸が苦しくなっていた。
今はただしだけ眩しい景として眺めることができる。
私は見切り品の野菜ではなく、自分のべたい鮮な魚を選んだ。
数円の違いを気にして誰かのために計算を叩く必はもうない。
自分のための材を買うという為がこんなにも自由なものだとはらなかった。
さなアパートの部に帰ると私は棚のの箱を静かにけた。
あの持ちした正尾のノートとさな謝カードが入っている。
私はそこから縁のかけた古い湯呑みをそっと取りした。
もうそこにお茶を注いで常に使うことはできない。
それでも私はそれを決して捨てようとはわなかった。
あのたいで私が初めて受け取った遅すぎるありがとうの証だからだ。
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私は湯呑みの横に正尾から届いたあのはがきを静かにてかけた。
正尾も今頃あの施設で穏やかな夕を取っているだろうか。
彼が選んだ孤独は私が選んだ自由とし似ている気がした。
もう度と私たちが顔をわせることはないかもしれない。
それでも私たちは互いにあのから抜けした戦友のようなものだ。
15 の私の苦労を詰め込んだ黒いゴミ袋はもう元にはないけれど、
あの袋が私に運んできた真実は今も確かにここにある。
私のきた 15 はただ捨てられるだけのものではなかったのだ。
置く所を違えていただけだと今の私にはっきりと分かる。
私は窓をけることもなく静かに台所へ向かった。
さな鍋で汁を取り、自分のために夕飯の支度を始める。
自分の好みにわせてしだけ濃いめの噌汁を温める。
誰にもがいと文句を言われることのない私だけの噌汁だ。
誰かのべ残しのたい魚ではなく、自分のためだけに焼いた魚。
鍋からつ真っな湯気が暗い台所を優しく包み込んでいく。
私はさなお膳をテーブルに運び、そのに静かに座った。
箸をに取り、焼き魚をべると温かいがのに広がった。
15 私はをじないまま事をただみ込んできた。
きるためのただの作業だった事が今は確かなびになっている。
温かい湯呑みを両でしっかりと持ち、私は目を閉じてさく呟いた。
いただきます。
その声はもう誰かの顔を伺う々しい声ではなかった。
自分のに自分ので戻ってきた確かなのの声だった。
婚の、に捨てられ渡された黒いゴミ袋。
そのに入っていたのは決してゴミなどではなかった。
あのが 15 かけて見ないふりをした私の優しさと、もう戻らなくていいという遅すぎる許しだった。
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