"十年目の地下街" 第6話
体の部を失っている者もいた。
倉庫の隅に、実もいた。
10のあので違いなかった。だが、顔つきも体も変わり果てていた。痩せこけた体。を失った瞳。膝からを失った。
佐藤がづくと、実は恐怖に怯え、を震わせた。
「実君。警察だ。もう丈夫だ」
しかし、実はすぐにはその言葉を信じられなかった。
10の獄が、彼のから全という覚を奪っていた。
組織の部はすでに逃げていたが、現には決定な証拠が残されていた。壁にはが貼られていた。
「1目標額5000円」
「未達のは夕なし」
「逃を試みたは体罰」
捜査員の1が拳を震わせた。
「こんなことを……」
倉庫の角には、鉄線ごとに分けられた物乞いのスケジュール表があった。駅ごとの収益分析までかれている。
座駅入、午9から12、平均収益3000円。
宿駅、午1から6、平均収益4000円。
渋駅、午7から10、平均収益6000円。
それは、単なる物乞いではなかった。
子どもたちを誘拐し、傷つけ、管理し、同をに換える組織な犯罪だった。
佐藤は類を握り締めた。
「全国に、まだ同じような所があるかもしれない」
その言葉に、捜査員たちは背筋が凍るいをした。
2、正雄をはじめとする組織のメンバー7が横浜内で逮捕された。彼らは別の隠れに潜んでいたが、保護された被害者たちの証言によって方がらかになった。
広告
は最まで罪を認めなかった。
「俺たちはただビジネスをしていただけだ」
だが、証拠はあまりにもだった。
10にわたり、数の子どもたちを誘拐し、監禁し、制に物乞いをさせ、額のを稼いでいた。裁判では無期懲役を言い渡された。のメンバーにも15から20の懲役刑が科された。
しかし、傷つけられた子どもたちのは、判決だけで癒えるものではなかった。
実は母・良子と再会したが、10の恐怖は簡単には消えなかった。混みに入ると、突然誰かが自分を連れるのではないかという恐怖に襲われ、呼吸が乱れた。夜になると悪にうなされ、眠れないが続いた。
良子は病の子に座り、実のを握った。
「丈夫よ。もう全だからね」
何度も、何度も言い聞かせた。
それでも実は、すぐにはできなかった。母の声を聞いても、体が震えることがあった。誰かが廊を歩く音がしただけで、目を見いて起きがった。
10の獄は、晩で終わるものではなかった。
病院で、実は義のための治療と訓練を受けた。医療技術の支えもあり、しずつ常活を取り戻していった。しかし、の治療にはさらにいが必だった。
ほかの被害者たちも同じだった。ほとんどがい、監禁されていた。分な教育を受けられず、社会できる力を奪われていた。
広告
政府は彼らのために、教育、職業訓練、理治療を含む特別な支援制度をえた。
事件が報されると、本に衝撃がった。
1990代半ば、京の鉄やで見かけた物乞いの若者たちが、実は組織犯罪の犠牲者だったという事実に、くのが言葉を失った。
「いつも通り過ぎていた」
「助けるべきだったのかもしれない」
そう自分を責めるもいた。
しかし当、それが組織な犯罪だとる者はほとんどいなかった。
事件をきっかけに、児童保護の仕組みはきく見直された。方児童への対応、防犯カメラの設置、での巡回体制も化されていった。
2、実は等学卒業程度認定試験に格した。
まだ悪を見ることはあった。混みに入れないもあった。けれど、母の支えと周囲の助けによって、しずつへんでいた。
ある、実は病院の庭で子に座り、隣にいる良子を見た。
のが、2のを静かに通り抜けた。
「お母さん」
良子は顔を向けた。
「なに?」
実はし言葉を探してから、い声で言った。
「ありがとう。10、探してくれて」
良子の目に涙が浮かんだ。
彼女は実のを両で包んだ。
「当たりじゃないの。お母さんは、絶対に諦めなかったわ」
10の待ち。
空っぽの。
壊れていった夫婦。
くなった髪。
夜ごとに泣いた。
そのすべてが消えるわけではなかった。
それでも、良子は息子を再びこの腕のに取り戻した。
1985、ゲームセンターへくと言ってをたの悪は、1995、座ので母に見つけられたことで終わりへ向かい始めた。
母の10は、決して無駄ではなかった。
そしてその執は、実だけでなく、13の子どもたちにしいを取り戻す会を与えたのだった。
― 完 ―
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
11年目のコロッケ
14歳の秋、黒田み咲の母・裕子は「夕飯のおかずを買ってくるね」と言って家を出たまま、二度と戻らなかった。 父は、母が家の金を盗み、近所の男と駆け落ちしたのだと親族に告げた。置き手紙も見つかり、周囲の大人たちは皆それを信じた。残されたみ咲は、“泥棒の娘”として11年間、父と継母、そして親族たちから辱められ続けることになる。 しかしある法要の日、裏山の古い井戸から、母が消えた日に買ったコロッケのレシートと、泥にまみれたカーディガンが見つかる。 母は本当に男と逃げたのか。 なぜ、継母の失くしたはずのイヤリングが井戸の底にあったのか。 そして、11年間沈黙していた“目撃者”が現れた時、黒田家が守り続けてきた嘘は音を立てて崩れ始める。 母に捨てられた娘だと思い込まされてきたみ咲が、封印された真実へたどり着くまでの、愛と復讐の物語。ミステリー|行方不明1.6萬字5 591 -
完結第15話
灯油札の密告
2005年11月、長野県の山あいにある静かな村で、工藤家の住宅が深夜に炎に包まれた。 家の中には、父と母、そして7歳の息子。近所の人々が助け出そうと駆けつけるが、玄関には外側から鎖と南京錠が掛けられ、勝手口も角材で封じられていた。 これは事故ではない。 誰かが一家を逃げられないように閉じ込め、火を放ったのだ。 村人たちは涙ながらに犯人探しを願い、特に隣人の男は誰よりも深く悲しんでいるように見えた。だが刑事・星野は、焼け跡に残された不自然な痕跡と、その男の身体にあった小さな傷に違和感を覚える。 そして事件から数日後、町の貴金属店に持ち込まれた大量の一万円札が、捜査を大きく動かす。 その紙幣には、かすかな灯油の匂いが残っていた。 炎で消されたはずの夜に、いったい何があったのか。 そして、最後まで燃え残った“匂い”は、誰の罪を指し示していたのか――。ミステリー|遺體発見2.3萬字5 238 -
完結第10話
雪下の赤いマフラー
1998年11月12日、雪の降る旭川で、赤いマフラーを巻いた3人の女子高校生が忽然と姿を消した。 双子の美咲と南、そして親友の彩。3人は放課後の演劇部の練習を終え、いつものように学校を出たはずだった。だが、その日を境に、家族のもとへ帰ることはなかった。 捜索は続いたが、足跡も持ち物も見つからない。吹雪がすべてを消してしまったかのように、事件は未解決のまま17年の歳月が流れていく。 そして2015年。元郵便配達員の古い鞄から、17年間届けられなかった1通の手紙が見つかる。 そこには、こう書かれていた。 「私は、美咲、南、そして彩に何が起きたのか知っています」 手紙をきっかけに再び動き出す捜査。座布団の中に隠された日記、古いカセットテープ、稚内へつながる謎の手紙、そして雪深い小屋の床下に眠っていた赤いマフラー。 3人はなぜ消えたのか。 教師・田中浩は何を隠していたのか。 17年間閉ざされていた雪の中の真実が、今、静かに姿を現す。ミステリー|行方不明1.5萬字5 980 -
完結第12話
ETCに残らない白バイ
2003年春、千葉県の高速道路を巡回していた女性白バイ隊員・水島舞が、サービスエリアで忽然と姿を消した。 監視カメラには、彼女が白バイを降りて建物へ入る姿が残されていた。だが、その18分後、白バイに乗って走り去ったのは舞ではなく、ヘルメットで顔を隠した見知らぬ男だった。 舞本人も、白バイも見つからない。料金所の記録にも、ETCログにも、その後のはっきりした足取りは残っていなかった。 結婚を控えていた婚約者、娘の帰りを待ち続ける両親、そして答えを出せないまま止まった捜査。 10年後、古い監視映像を最新技術で解析した時、画面の隅に映っていた“あるもの”が、事件を再び動かし始める。 白いバイクは、どこへ消えたのか。 そして水島舞が最後に見た人物とは――。ミステリー|行方不明1.7萬字5 5514 -
完結第11話
雪峠の五発
2006年11月15日、長野県北部。 その年最初の雪が降り始めた高木峠へ、1人の巡査が向かった。展望台に不審な車があるという匿名通報を受け、霧谷慎也は「確認だけ」のつもりでパトカーを走らせる。 だが午後6時15分、現場到着を知らせる無線を最後に、慎也からの連絡は途絶えた。 雪の展望台に残されていたのは、鍵のかかったパトカーと、車内に置かれた制帽と手袋。慎也本人だけが、吹雪の峠から忽然と姿を消していた。 事故なのか、事件なのか。誰かに連れ去られたのか。それとも、自ら山へ入ったのか。 妻と幼い娘は、答えのないまま13年を過ごすことになる。 そして2019年春。雪解けの斜面から、慎也が持っていた古い懐中電灯が見つかった。 13年間沈黙していた峠が、初めて返した小さな手がかり。 その光の先に隠されていたのは、匿名通報の本当の意味と、雪の下に封じられていた一夜の真実だった。ミステリー|行方不明1.7萬字5 1366 -
完結第13話
5枚で消された妻
1994年4月、長野県の山あいにある古いビジネスホテルで、31歳の女性・高橋美幸が冷たくなって発見された。 部屋には睡眠薬の空箱と酒の瓶。夫との離婚調停を控えていたこともあり、警察は早々に「事件性なし」と判断する。記録はわずか5枚だけ。母のよし子がどれだけ訴えても、娘の死が再び調べられることはなかった。 それから12年。 美幸の夫だった男は別の町で再婚し、真面目な父親として穏やかに暮らしていた。一方、よし子は痛む膝を抱えながら、毎年娘の墓へ通い続ける。 「娘は、自分から死を選ぶような子ではない」 誰にも届かなかったその言葉が、ある夜、古い薬物帳簿に残された一つの名前によって動き出す。 12年前のホテルで、本当は何が起きたのか。 そして、たった5枚の記録が隠していた真実とは――。ミステリー|行方不明1.9萬字5 501