"古井戸の満点少女" 第4話
20001、しいミレニアムが始まった。
町にはしい板が増え、携帯話のができ、々は「代が変わる」とにした。
けれど、秩父の裏にある古いアパートの2階だけは、199911のまま止まっていた。
玄関のハンガーには、桜が脱いでいた制のカーディガンがかかったままだった。
健はそれを洗えなかった。
娘の匂いが消えてしまう気がした。
桜の部も、そののままだった。
机のにはセンター試験の参考が並び、蛍ペンで線を引いた国語の教材、模擬試験の復習ノート、経済学部のある学名をいたメモが残っていた。
健は々そのメモをに取り、桜の文字を指でなぞった。
そして毎11になると、娘の机を拭いた。
埃ひとつないように。
まるで、にも桜が帰ってきて、また勉を始めるかのように。
世のはへんだ。
2002には韓ワールドカップがかれ、町には歓声が響いた。インターネットが普及し、々のには携帯話が握られるようになった。
しかし健だけは、の先を見続けていた。
桜が歩いて帰ってくる気がした。
物の同僚たちは、健が急に老け込んだと言った。2000代半ばには、初めて会うから60代に見られることもあった。実際の齢より10歳以、老いて見えた。
背は曲がり、髪はくなった。
それでも毎、桜の写真が載ったチラシを印刷し直した。
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古くなれば貼り替え、破れれば刷り直した。
チラシのの桜は、いつまでも19歳だった。
制姿で笑っていた。
2005、健は再び警察署を訪ねた。
「もう度、調べてください」
担当刑事は変わっていた。事件記録を探すだけでもがかかった。
刑事は申し訳なさそうに言った。
「現点で、しいがかりはありません」
健は何も言えず、警察署をた。
2008の、彼は胸の痛みで病院に運ばれた。狭症だった。医師はストレスを減らして休むように言った。
病のベッドで井を見ながら、健はった。
絶対にねない。
桜が帰ってきた、自分がいなければならない。
母親もいないのに、自分までいなくなるわけにはいかない。
そのいだけで、健は持ちこたえた。
そして20097。
のいだった。
埼玉県内ではが続き、各で砂災害の警戒報がされた。秩父郊の部でも、古い斜面が崩れ、く放置されていた廃の周辺に砂が流れ込んだ。
ががった直、林の備作業が始まった。
作業所は、使われなくなった農の裏だった。そこには何も使われていない古井戸があり、入は雑と落ち葉に覆われていた。普段、がづくことはほとんどなかった。
作業員がショベルカーでを取り除いていた、械の歯が井戸の縁に触れた。
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古くなった入が崩れ、と落ち葉に押しつぶされていた空が現れた。
作業員の1が覗き込み、顔を変えた。
「ここに何かあるぞ」
井戸の奥ののに、いものが見えた。
の骨だった。
通報から20分も経たないうちに、警察が到着した。
井戸のからは骨化した遺体と、古い布切れが見つかった。布は腐してあせていたが、制の特の折り目が残っていた。
さらに、遺体の周辺からさな片が発見された。
にまみれていたが、印刷された文字の部が残っていた。
受験番号だった。
遺体は科学捜査研究所へ送られた。
歯の鑑定が始まった。
桜が学3のに虫歯治療を受けた歯科記録が残っていた。鑑識チームは遺体の歯の構造と、その診療記録を精密に照した。
作業には3かかった。
結果は致した。
遺体は、10に失踪した桜だった。
いや、もう失踪ではなかった。
殺だった。
担当刑事から話を受けた健は、受話器を置くとすぐにをびした。
「秩父警察署に来てください」
刑事はそれだけを言った。
その声のさで、健はすべてを察した。
バスを待てなかった。
20分かかる距を、どう歩いたのかも分からないままんだ。途からっていた。
警察署の扉をけると、刑事が静かに子を勧めた。
健は座った。
刑事は言葉を選びながら話した。
「秩父郊のにある古井戸で、遺体が発見されました」
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