1995年、東京の名門大学の卒業式当日。 青森から夜行列車で駆けつけた両親が見たのは、14列目の席に残された卒業ガウンと、そこにいるはずの息子・木村誠の不在だった。 前夜まで「これで人生が変わる」と電話で語っていた誠。だが、警察は事件性を認めず、彼の失踪は“家出”として処理されてしまう。 両親は故郷の家を売り、10万枚のチラシを配りながら、10年もの間、息子を探し続けた。 しかし、誠の部屋から消えていたのは、財布でも通帳でもなかった。 命を削って書き上げた論文データと、破り取られた実験ノートの最後の1ページ。 そして10年後、定年を目前にした教授が警察署を訪れ、封印していた茶封筒を差し出す。 「10年間、ずっと息ができませんでした」 その中に眠っていたものが、青年の失踪を“家出”から“事件”へと覆していく――。