"古井戸の満点少女" 第7話
何もせず、ただ卓のに座り、朝になると何事もなかったように朝を作った。
結もまた、桜のチラシを見るたびにを止めた。
制姿で笑う桜。
19歳のままの親友。
避けることもできず、づくこともできず、ただくから見つめた。
結婚し、子どもを産んだ夜、結は初めてきく崩れた。
児のガラス越しに自分の子どもを見ながら、った。
桜には、こんなは来ない。
桜のお父さんは、孫の顔を見ることもない。
それは、自分のせいだ。
その夜、結は病院のトイレで声を殺して泣いた。
裁判は翌の、埼玉方裁判所でかれた。
結の弁護は、犯が偶発だったこと、当まだ18歳だったことを調した。
しかし裁判は、犯10にわたって嘘の供述を続け、捜査を妨害し、被害者族にい苦痛を与えた点をく見た。
結には懲役7。
父の茂には懲役8。
母には懲役3、執猶予5が言い渡された。
判決が読みげられた、傍聴席からさな音がした。
健の泣き声だった。
彼は声をさないようにを押さえていた。それでも肩の震えは止まらなかった。
判決の数、健は桜の遺骨を秩父郊の墓に埋葬した。
のだった。
健は傘も差さずにっていた。
が肩を濡らしても、かなかった。さなので、いち尽くした。
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「桜」
言えたのは、その言だけだった。
言いたいことがなかったわけではない。
すぎて、どこから始めればいいのか分からなかった。
法学部の話をあんなにく言わなければよかった。
経済学部にきたいという言葉を、もっと聞いてやればよかった。
あのの夕で、ただ笑ってやればよかった。
10、毎考えていた悔を、今なら娘に直接言えるはずだった。
けれど、言葉はなかった。
に戻ると、健は桜の部に入った。
部は10、そのままだった。
机のにはセンター試験の参考があり、蛍ペンの跡が残っていた。経済学部のある学名をき連ねたメモもあった。
玄関のハンガーには、制のカーディガンがかかったままだった。
健はそれをゆっくり撫でた。
10が過ぎ、から匂いは消えていた。
それでもをせなかった。
カーディガンを胸に抱き、健はそのに崩れ落ちた。
桜のメモには、こんな言葉がかれていた。
「お父さんの還暦の、沖縄へ連れてくこと」
「卒業したら、お父さんに物を辞めさせること」
桜は、全科目満点という未来をにしていた。
どこの学でも、どの学部でも、望む所を選べるはずだった。
けれど、その未来は1もかれなかった。
父を楽にさせたいというを胸に抱いたまま、19歳の11、落ち葉ので止まった。
桜を奪ったのは、見らぬ誰かではなかった。
番くで笑い、番よく泣き、番配しているように見えた親友だった。
そして健は、娘を全な所へ導きたいと願いながら、娘が本当に望んでいた未来を、最まで聞ききれなかった。
の音だけが、桜のいない部に静かに響いていた。
完
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