"画面の中の失踪少年" 第3話
ランドセルがしきく見える。子を直してやろうとを伸ばすと、奏太は「丈夫」と言ってしをよじった。
「ってきます」
「ってらっしゃい。気をつけてね」
その声が、族が聞いた奏太の常の最の声になった。
学では、普段通りの授業がわれた。担任の教師はに、奏太が算数の問題に元気よく答えたことを覚えていると話した。昼休みには友たちと庭の端で遊んでいた。特に変わった様子はなかった。
午の授業が終わると、奏太は友と緒にをた。友は途の交差点で別れたという。
「また」
奏太はそう言ってを振り、いつものを歩いていった。
その、奏太の姿をはっきり見た者はなかった。学くで見かけたというもいたが、は曖昧だった。別のは「青いワンボックスがまっていた」と証言したが、そのはまだ誰も、それがな報になるとはっていなかった。
夕方4を過ぎても、奏太は帰ってこなかった。
由美は最初、友達ので遊びにになっているのだろうとった。計を見て、台所で夕飯の支度をしながら、何度も玄関の方へを澄ませた。けれど、いつものようにドアがく音はしなかった。
5くになり、由美の胸にが広がった。
話台のにち、友宅へ話をかけた。
広告
「すみません、奏太、お邪魔していますか」
返事はすぐに返ってきた。
「いいえ、来ていませんよ」
由美は別のにも話をかけた。そこにもいない。さらに別の友のにもいない。
受話器を置いた、指先がたくなっていた。
蔵庫の扉に、緑のクレヨンでかれたさなメモが貼られていることに気づいたのは、そのだった。
「学のあとで友達のにく。夕飯までには帰る。お母さん好き」
由美はそのメモを剥がし、両で握りしめた。
胸騒ぎは、もうではなく恐怖に変わっていた。
すぐに弘の職へ話をかけた。
「奏太が帰ってこないの」
話の向こうで、しばらく沈黙があった。
「すぐ帰る」
弘はそれだけ言って、話を切った。
その、2は町を探し回った。公園、商、友の、通学の脇、空き、川沿い。奏太の名を何度も呼んだ。
「奏太!」
「奏太、いたら返事して!」
声は夕暮れの町に吸い込まれていった。
午5過ぎ、は警察に通報した。
警察官がに到着し、装、持ち物、最に見た、友関係を確認した。由美は泣きそうになりながらも、教師としての癖で、事実を順番に伝えようとした。
「青いランドセルです。はいシャツに、紺のズボン。赤い提げ袋を持っていました」
弘は玄関先で、何度もを見ていた。今にも奏太が角を曲がって帰ってくる気がしていた。
広告
しかし夜になっても、奏太は戻らなかった。
懐灯を持った所の々、消防団、学関係者が捜索に加わった。町内会のが図を広げ、警察官が通学を確認し、由美は泣きながらも緒に歩いた。
そのに、当15歳だった川健もいた。川は所ののとして、同級たちと捜索に参加した。掲示板に貼られた奏太の写真を見て、頬の痕と眉の傷跡を何度も記憶した。
翌朝、奏太の顔写真は聞に載り、テレビでも報じられた。町の掲示板、郵便局、スーパーの入にポスターが貼られた。
だが、奏太は見つからなかった。
24が過ぎた。
48が過ぎた。
希望はしずつ細くなっていった。
のは、1996612の夕方で止まったままになった。
警察の捜査は、事件発直から規模にわれた。
だが当の制度と技術には、今では考えられないほどきな限界があった。全国な緊急通報システムはまだ分に備されておらず、報の伝達はFAXや話に頼られていた。防犯カメラもなく、商やに設置されていた録画器もビデオテープ式で、数ごとにきされてしまうことがかった。
奏太が消えた直、いくつかのな証言が寄せられた。
1つ目は、学の裏付に青いワンボックスがまっていたという目撃報だった。
くにむ齢女性が、のナンバーの部を覚えていると話した。彼女は買い物帰りにそのを見かけ、自然にくまっていたことが気になっていたという。
広告
おすすめ作品
-
完結第6話
松の根の告発
2008年の梅雨の夜、都内の10億円の豪邸から、70代の母と40代の長女が忽然と姿を消した。 玄関の鍵は開いたまま。台所には作りかけの料理、寝室には飲まれないままの薬。金庫の中の現金や貴金属は手つかずで、強盗の形跡もない。 ただ、防犯カメラだけが不自然に切られていた。 疑いの目を向けられたのは、海外出張中だった末の息子・西村匠。だが彼には、ホテルの記録、カード決済、目撃証言までそろった完璧なアリバイがあった。 事件は未解決のまま15年が過ぎ、匠は莫大な遺産を受け継ぎ、慈善家として世間の表舞台に立つようになる。 しかし2023年、豪邸の解体工事中、庭の松の木の下から古い2つ折り携帯が発見される。 そこに残されていたのは、長女が命の最後に録音した“ある声”だった。 15年間、コンクリートの下で眠っていた母娘の真実が、ついに動き出す――。ミステリー|行方不明9.0千字5 68 -
完結第7話
古井戸の満点少女
1999年、埼玉県秩父市。 女子高生・高橋桜は、センター試験の自己採点で全科目満点という驚くべき結果を出した。貧しいながらも自分を支えてくれた父のため、将来は良い仕事に就き、楽をさせてあげたい。そんな夢を胸に、桜の未来は大きく開けようとしていた。 しかし、その数日後。 予備校で最後の写真を撮られたあと、桜は忽然と姿を消す。 父親との進路のすれ違い、親しくしていた家庭教師、宣伝に利用しようとした予備校講師。疑われる人物は次々に浮かぶが、決定的な証拠は見つからない。 桜の部屋だけが、19歳のまま時間を止めていった。 そして10年後、秩父郊外の古井戸から白骨化した遺体が発見される。そばに残されていたのは、泥にまみれた受験番号の一部。 失踪ではなかった。 桜の未来を奪ったのは、誰だったのか。 10年間、父が信じ続けた帰り道の先に、あまりにも残酷な真実が待っていた――。ミステリー|行方不明1.0萬字5 59 -
完結第7話
十六年目の雪足跡
2003年2月14日、23歳の看護学生・森彩佳は、近所の高齢女性に借りた器を返すため、恋人に「すぐ戻るね」と告げて家を出た。 財布も鍵も携帯電話も置いたまま。ほんの数分で戻るはずの外出だった。 しかし、彼女はそのまま姿を消した。 雪の上には、彩佳が自宅へ向かった足跡が残されていた。だがその足跡は、玄関の数歩手前で不自然に途切れていた。家は内側から施錠され、争った形跡もない。 恋人、母、警察、町の人々――誰もが答えを探し続けたが、真相は長い間、闇の中に沈んだままだった。 そして16年後。 保管されていた証拠品から、当時は見つけられなかった“ある人物”の痕跡が浮かび上がる。 誰も疑わなかった身近な人。 あの雪の夜、彩佳に何が起きたのか――。ミステリー|行方不明1.0萬字5 9 -
完結第7話
山寺に消えた妻
7年前、財閥一家の御曹司・健斗は、妻の雪を“不倫した女”だと信じて家から追い出した。 宝石を盗み、若い男に貢ぎ、海外で贅沢に暮らしている――。母・良子の言葉を信じた健斗は、雪の弁解も聞かず、離婚届を突きつけた。 だが7年後、心身ともに追い詰められた健斗は、山奥の寺で思いがけない人物を見つける。 そこにいたのは、尼僧となり、雑巾がけをして暮らす雪だった。 贅沢どころか、質素な寺で静かに修行を続けていた元妻。荒れた手、粗末な部屋、そして何も語ろうとしない瞳。 本当に彼女は裏切ったのか。 健斗が7年前の“相手の男”を探し出した時、すべての疑惑は崩れ始める。雪が背負わされた汚名の裏には、財閥一家を揺るがす恐ろしい陰謀が隠されていた――。ミステリー|第二の人生1.1萬字5 384 -
完結第9話
盗まれた120頁
1995年、東京の名門大学の卒業式当日。 青森から夜行列車で駆けつけた両親が見たのは、14列目の席に残された卒業ガウンと、そこにいるはずの息子・木村誠の不在だった。 前夜まで「これで人生が変わる」と電話で語っていた誠。だが、警察は事件性を認めず、彼の失踪は“家出”として処理されてしまう。 両親は故郷の家を売り、10万枚のチラシを配りながら、10年もの間、息子を探し続けた。 しかし、誠の部屋から消えていたのは、財布でも通帳でもなかった。 命を削って書き上げた論文データと、破り取られた実験ノートの最後の1ページ。 そして10年後、定年を目前にした教授が警察署を訪れ、封印していた茶封筒を差し出す。 「10年間、ずっと息ができませんでした」 その中に眠っていたものが、青年の失踪を“家出”から“事件”へと覆していく――。ミステリー|行方不明1.3萬字5 113 -
完結第7話
ロッカー裏の花嫁
1991年5月、新婚旅行へ向かう途中の足柄サービスエリアで、結婚してわずか3日目の妻・鈴木彩が突然姿を消した。 「すぐ戻るわね」 そう言ってトイレへ向かったはずの彩は、売店にも食堂にも駐車場にもいなかった。財布だけを持って車を降り、身分証明書も荷物も残したまま、彼女は人混みの中から跡形もなく消えてしまう。 夫の佐藤匠は必死に妻を探し続けたが、目撃者も防犯カメラもなく、事件は未解決のまま時間だけが過ぎていった。 しかし10年後、サービスエリアの改装工事中、古いロッカーの裏から埃まみれの財布が見つかる。 そこに残されていた指紋が示したのは、夫でも通りすがりの犯人でもない、彩の過去にいた1人の男だった。 新婚3日目の花嫁は、なぜサービスエリアで消えたのか。 そして、10年間ロッカーの裏に眠っていた財布は、どんな真実を語り始めるのか――。ミステリー|行方不明9.8千字5 3052 -
完結第12話
十年の悪夢 洞窟から届いた母の遺骨
1987 年元旦、千葉犬吠埼へ初日の出を見に出かけた平凡な 3 人家族。 「すぐ戻る」と残した言葉を最後に、一家は忽然と姿を消した。 当時の警察は借金苦の夫による一家心中と断定、事件は 10 年間闇に埋もれた。 だが千葉大サークルの学生が崖下の洞窟で人骨を発見した瞬間、全ての判断が覆る。 防水ポーチに残された謎の数字手帳、陸地に残された母だけの遺骨、上層部にもみ消された密輸の証拠… 10 年ぶりに鳴った一本の電話が、生き残った少女の声を届ける。 財閥の欲望、鉄パイプの悲劇、隠蔽された殺人現場。 洞窟に眠る骨が語る、あの元旦夜の衝撃真実を今、紐解く。真実|裡の顔|真相|行方不明1.7萬字5 812 -
完結第13話
隠された十五年の物語
2005年、日本で誰も深く探ろうとしなかった不気味な過去がある。 生涯質素に暮らし、一文無しに近い老夫婦がいた。 一生懸命働き、大金とは無縁の日々を過ごしてきた二人に、思いがけない幸運が舞い込んだ。 閑古鳥が鳴くパチンコ店で、前代未聞の大当たりを出し、一夜にして大金を手に入れ、念願の一戸建てを購入したのだ。 苦労の末に手にした新居で、穏やかな老後が待っているはずだった。 だが誰も予想しなかった——引っ越してたった3日、老夫婦は新居ごと跡形もなく消え失せた。 庭の草木は新しく植えたばかりの瑞々しさを残し、部屋のお茶はまだ温かく、布団も整えられたまま。 主人だけが、この世から忽然と姿を消したのだ。 警察が数日間捜索したものの、手がかりは一切なく、最終的に不可解な失踪事件として処理された。 だが地元の古株の住民は皆知っている。この予期せぬ大当たりは、贈り物ではなく、命を懸けた交換取引だったと。 大金を手にした直後に消えた理由とは?空き家の下に隠された真実とは? 当時誰も口にできなかった封印された真相を、今こそ完全に解き明かす。真実|裡の顔|真相|遺體発見|行方不明1.9萬字5 127 -
完結第15話
双子の消えた春
1992 年春、早稲田大学に合格した一卵性の双子が入学式当日、突如姿を消した。荷物だけ下宿に残し、足取りは完全に途絶え、16 年間未解決の謎として町に眠っていた。 駐在所の若い巡査が古い捜査ファイルを発見したことで、隠された家族の秘密が次々と露に。父が長年胸に封じてきた腹違いの長男、喫茶店で双子と密会していた中年男の正体、そして二人を襲った予期せぬ悲劇。 長い年月の霧が晴れた時、両親が語り出した衝撃の真相と、失われた家族が辿り着いた最後の優しい結末をお届けします。裡の顔|真相|遺體発見|行方不明2.3萬字5 146 -
完結第6話
甘い部屋の72時間
2022年9月、埼玉県秩父市のアパートで、37歳の女性・渡辺咲が意識不明の状態で発見された。 救急隊員が部屋に入った瞬間、まず感じたのは異様なほど甘い香りだった。消臭剤、芳香剤、アロマキャンドル。部屋中に重ねられた香りの中で、咲はソファーにもたれかかるように倒れていた。 夫の啓介は「今朝、見つけた」と冷静に話した。 しかし、搬送先の病院で告げられたのは、咲の体が数日前から限界に近い状態だった可能性。そして母・えみ子が遺品を調べるうちに、娘が少しずつ外の世界から切り離されていた痕跡が浮かび上がっていく。 なぜ、夫はすぐに助けを呼ばなかったのか。 なぜ、部屋には不自然なほど多くの芳香剤が置かれていたのか。 そして咲が最後に残した「ごめんなさい。怒らないで」という言葉は、誰に向けられたものだったのか。 72時間の沈黙の裏に隠されていた、ひとりの女性の孤立と、届かなかった叫びを描く物語。ミステリー|行方不明9.3千字5 222