"松の根の告発" 第6話
「全部話す。録音を回してくれ」
田は、匠が事に接触してきたこと、代わりをのホテルに泊まらせたこと、セミナーに席させたこと、偽造レシートを空港くで匠に渡したこと、宗教団体の偽報を警察へ流したことを自した。
そして、に隠していた録音も回収された。
そこには、匠が犯計画を指示する声が残っていた。
音声、帳簿、自、計画録音。
証拠は積みなった。
匠は自社ビル41階の会で逮捕された。全面ガラス越しに都を見ろし、株主総会の資料を読んでいただった。
警察官が踏み込み、逮捕状を掲げた。
「匠さん。殺および体遺棄の容疑で逮捕します」
匠は元の類をゆっくり机に置いた。
秘が元を覆い、廊の社員たちがガラス越しにを覗き込む。匠の両に錠がかけられた。
しかし、彼の顔に揺はなかった。
玄関では記者のカメラが待っていた。フラッシュのの、匠は背筋を伸ばし、錠のかかった両をにそろえた。
そして、記者たちへ向かって言った。
「これは過の捜査の失敗を隠すための見せしめです。私は無実です」
その、弁護団はすぐにいた。15もにあった携帯の証拠能力、AIによる音声加の能性、遺体未発見の問題、田の証言の信用性。あらゆる点を突き、匠の勾留請求は度却された。
広告
釈放された匠は、拘置所のので寺たちを見た。
そして、顎を軽くげた。
唇の片方だけががる。
それは、笑みというより勝利の図だった。
だが、そのら笑いはく続かなかった。
特別班は残りがないで、もう度15の証拠を洗い直した。証拠保管庫にこもっていた若刑事の伊藤隼が、匠の提したホテルレストランのレシート原本を見つけた。
レシートの裏面に、ごく細かな赤みを帯びた埃が付着していた。
科学警察研究所の分析結果は、決定だった。
そのから検された成分は、豪邸の庭の松の根を保護するために使われていた特殊な肥料と完全に致した。
のホテルで決済したはずのレシートの裏に、なぜ豪邸の松ののがついているのか。
答えは1つしかなかった。
匠は事件当の夜、本にいた。
庭で遺体を埋め、と肥料の混じったコートを着たまま空港くへ向かい、田から偽造レシートを受け取った。その、ポケットに残ったがレシートの裏へこすりついたのだ。
15、の繊維ので沈黙していたの粒が、匠の完璧なアリバイを崩した。
夜0を過ぎ、緊急逮捕状と豪邸跡の捜索差押令状が発された。
警察両がのをりした。
同じ頃、匠は黒塗りので太平側へ向かっていた。
広告
へ抜ける準備をすでにめていたのだ。
だが、その逃はにわなかった。
豪邸跡では、松のの根元が正式に掘り返された。分いコンクリートのから、2の遺骨が現れた。久子と美は、互いを抱きしめうような姿勢で眠っていた。
寺は現にち、いそのをけなかった。
15、彼が違を覚えた松ののに、すべてがあった。
すべて見えていたのに、届かなかった。
寺はに濡れた子を握りしめ、静かにをげた。
その、匠は再び柄を押さえられた。
今度は、音声、録音、帳簿、証言、遺骨、そしてレシートに残ったという、逃げのない証拠がそろっていた。
かつて警察署をるに見せたら笑いは、もう彼の顔にはなかった。
15、コンクリートので眠っていた真実は、最に番さな証拠によってをいた。
美が命の最に守った2つ折り携帯。
そして、匠が気にも留めなかったレシート裏の埃。
での目はくらませられる。
肩きで世を欺くこともできる。
だが、血を分けた族を守ろうとした最の声だけは、15経っても消えなかった。
たいコンクリートので、母と娘は真実が掘り起こされるを待っていたのだった。
― 完 ―
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
画面の中の失踪少年
2021年5月、東京のソフトウェア企業で開かれたオンライン会議。 社長の石川健二は、画面に映った1人の社員の顔を見て、思わず息を止めた。左頬の三日月型の痕、眉の上の細い傷跡。その顔は、25年前に仙台で忽然と姿を消した9歳の少年・高橋奏太とあまりにもよく似ていた。 1996年、学校帰りに消えた奏太。家族は町中を探し続けたが、手がかりは途絶え、やがて事件は未解決のまま時の中に埋もれていった。 しかし25年後、偶然のオンライン会議が止まっていた時間を動かす。 社員として静かに働いていた男は、本当に失踪した少年なのか。なぜ別の名前で生きていたのか。そして、彼の25年間を支配していた人物とは――。 画面越しの違和感から始まった、奇跡の再会と奪われた人生の真実。行方不明|第二の人生1.5萬字5 13 -
完結第7話
古井戸の満点少女
1999年、埼玉県秩父市。 女子高生・高橋桜は、センター試験の自己採点で全科目満点という驚くべき結果を出した。貧しいながらも自分を支えてくれた父のため、将来は良い仕事に就き、楽をさせてあげたい。そんな夢を胸に、桜の未来は大きく開けようとしていた。 しかし、その数日後。 予備校で最後の写真を撮られたあと、桜は忽然と姿を消す。 父親との進路のすれ違い、親しくしていた家庭教師、宣伝に利用しようとした予備校講師。疑われる人物は次々に浮かぶが、決定的な証拠は見つからない。 桜の部屋だけが、19歳のまま時間を止めていった。 そして10年後、秩父郊外の古井戸から白骨化した遺体が発見される。そばに残されていたのは、泥にまみれた受験番号の一部。 失踪ではなかった。 桜の未来を奪ったのは、誰だったのか。 10年間、父が信じ続けた帰り道の先に、あまりにも残酷な真実が待っていた――。ミステリー|行方不明1.0萬字5 59 -
完結第7話
十六年目の雪足跡
2003年2月14日、23歳の看護学生・森彩佳は、近所の高齢女性に借りた器を返すため、恋人に「すぐ戻るね」と告げて家を出た。 財布も鍵も携帯電話も置いたまま。ほんの数分で戻るはずの外出だった。 しかし、彼女はそのまま姿を消した。 雪の上には、彩佳が自宅へ向かった足跡が残されていた。だがその足跡は、玄関の数歩手前で不自然に途切れていた。家は内側から施錠され、争った形跡もない。 恋人、母、警察、町の人々――誰もが答えを探し続けたが、真相は長い間、闇の中に沈んだままだった。 そして16年後。 保管されていた証拠品から、当時は見つけられなかった“ある人物”の痕跡が浮かび上がる。 誰も疑わなかった身近な人。 あの雪の夜、彩佳に何が起きたのか――。ミステリー|行方不明1.0萬字5 9 -
完結第7話
山寺に消えた妻
7年前、財閥一家の御曹司・健斗は、妻の雪を“不倫した女”だと信じて家から追い出した。 宝石を盗み、若い男に貢ぎ、海外で贅沢に暮らしている――。母・良子の言葉を信じた健斗は、雪の弁解も聞かず、離婚届を突きつけた。 だが7年後、心身ともに追い詰められた健斗は、山奥の寺で思いがけない人物を見つける。 そこにいたのは、尼僧となり、雑巾がけをして暮らす雪だった。 贅沢どころか、質素な寺で静かに修行を続けていた元妻。荒れた手、粗末な部屋、そして何も語ろうとしない瞳。 本当に彼女は裏切ったのか。 健斗が7年前の“相手の男”を探し出した時、すべての疑惑は崩れ始める。雪が背負わされた汚名の裏には、財閥一家を揺るがす恐ろしい陰謀が隠されていた――。ミステリー|第二の人生1.1萬字5 384 -
完結第9話
盗まれた120頁
1995年、東京の名門大学の卒業式当日。 青森から夜行列車で駆けつけた両親が見たのは、14列目の席に残された卒業ガウンと、そこにいるはずの息子・木村誠の不在だった。 前夜まで「これで人生が変わる」と電話で語っていた誠。だが、警察は事件性を認めず、彼の失踪は“家出”として処理されてしまう。 両親は故郷の家を売り、10万枚のチラシを配りながら、10年もの間、息子を探し続けた。 しかし、誠の部屋から消えていたのは、財布でも通帳でもなかった。 命を削って書き上げた論文データと、破り取られた実験ノートの最後の1ページ。 そして10年後、定年を目前にした教授が警察署を訪れ、封印していた茶封筒を差し出す。 「10年間、ずっと息ができませんでした」 その中に眠っていたものが、青年の失踪を“家出”から“事件”へと覆していく――。ミステリー|行方不明1.3萬字5 113 -
完結第7話
ロッカー裏の花嫁
1991年5月、新婚旅行へ向かう途中の足柄サービスエリアで、結婚してわずか3日目の妻・鈴木彩が突然姿を消した。 「すぐ戻るわね」 そう言ってトイレへ向かったはずの彩は、売店にも食堂にも駐車場にもいなかった。財布だけを持って車を降り、身分証明書も荷物も残したまま、彼女は人混みの中から跡形もなく消えてしまう。 夫の佐藤匠は必死に妻を探し続けたが、目撃者も防犯カメラもなく、事件は未解決のまま時間だけが過ぎていった。 しかし10年後、サービスエリアの改装工事中、古いロッカーの裏から埃まみれの財布が見つかる。 そこに残されていた指紋が示したのは、夫でも通りすがりの犯人でもない、彩の過去にいた1人の男だった。 新婚3日目の花嫁は、なぜサービスエリアで消えたのか。 そして、10年間ロッカーの裏に眠っていた財布は、どんな真実を語り始めるのか――。ミステリー|行方不明9.8千字5 3052