"48億の離婚届" 第4話
以より髪は増えていたが、背筋は伸びており、声にも落ち着きがあった。
「お越しいただき、ありがとうございます」
本はくをげた。
恵子も静かにをげた。
彼は恵子の婚について、過度な同をにしなかった。な励ましもなかった。まず現の続き状況を確認し、必な事実だけを丁寧に聞いた。
その姿勢が、恵子にはありがたかった。
同の言葉はにい。
しかし本の態度には、恵子をの当事者として尊する静かな誠実さがあった。
必な確認を終えると、本は机のにいファイルを置いた。
「本お話しするのは、お父様、本正志様がにえておられた族信託と資産管理会社についてです」
恵子はゆっくりと眉を寄せた。
「父の……資産管理会社ですか」
父の正志は、静岡県内で規模な製造業を営む実直な経営者だった。恵子にとっては、庭を切にし、目つことを好まない父親だった。特別な財産という印象はなかった。
本は彼女の戸惑いを察したように、資料を1枚いた。
「恵子さんがこれまでごじだったのは、ごく部です」
その言葉を聞いた、恵子は背筋にさな緊張がるのをじた。
本は、父が複数の事業投資を通じて資産を形成していたこと、それらを公にせず、期に管理するための法枠組みを構築していたことを説し始めた。
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父は、族の活や域社会との関係に響を与えないよう、あえて資産の実態を伏せていた。
そして、そのな受益者として指定されていたのが、恵子だった。
恵子は、本の言葉を聞きながら、机のの資料を見つめていた。
自分のらないところで、父は何を残していたのか。
その答えは、彼女の像をはるかに超えるものだった。
本が提示した資料には、恵子がこれまでらなかった父の姿が記されていた。
本正志が設した族資産管理会社は、単なる製造業の補助組織ではなかった。方の製造業を基盤にしながら、医療器関連企業、域インフラ事業、定な収益を見込める産投資など、複数の分野に資産を分散していた。
本は資料の数字を指で示した。
「現の総資産価値は、約48億円です」
恵子は言葉を失った。
数字だけが、界ので静かに浮かんでいるようだった。
48億円。
それは彼女の常覚からあまりにもい額だった。
恵子がこれまで父の遺産として受け取っていたのは、定期な額の付だけだった。活をし支える程度のものであり、それがすべてだとっていた。
本は説を続けた。
「その付は、族信託の枠組みに基づく活支援です。恵子さんは受益者でしたが、婚姻関係にあるは資産全体の管理権限を持たない形になっていました」
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恵子はゆっくり顔をげた。
「婚姻関係にあるは、ということですか」
本はうなずいた。
「はい。お父様は、将来な法リスクから資産を守るため、そのように設計されました」
資料には、信託契約の条項が細かく記されていた。
恵子が婚姻関係にある期、資産の直接な管理権限は信託受託者が保持する。恵子には活支援として定期な付のみがわれる。
方で、婚姻が法に終した、または配偶者がしたに限り、信託財産の包括な管理権限が恵子へ移転される。
本はその部分を、ゆっくり読みげた。
恵子はを澄ませていた。
1つ1つの言葉が、今の自分の状況となっていく。
婚。
婚姻関係の終。
権限移転。
浩司が差しした婚届は、彼にとってしいのための決断だった。
しかし、それは同に、父が残した信託契約を発させる条件を満たすものでもあった。
浩司はそのことをらなかった。
恵子もらなかった。
父だけが、い未来の危を見越して準備していた。
恵子は資料の端に線を落とした。そこには父の署名があった。見慣れた跡だった。静かで、堅実で、迷いのない字。
胸の奥に、言葉にならないが込みげた。
父は、くを語らなかった。
「困ったのために何か残している」と言ったこともなかった。
しかし実際には、娘が測の事態に直面しても自できるよう、法に厳格な仕組みをえていた。
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