"月あかりの逆転食卓" 第4話
「なるほどね。昔ながらっていうか、素朴ね」
秀夫の表が瞬こわばった。
しかし、すぐに苦笑いでごまかす。
「まあ、母さんの料理ってそういうじだしな」
私は息を呑んだ。
あなたまで。
そので育ったのに。
正治が隣で皿を持ちながら、秀夫を瞥した。
「秀夫。お、何か言わなくていいのか」
「え? いや、そのが荒れるだろ。俺、空気悪くしたくないから」
その言葉は、私のを静かに削った。
空気を悪くしたくない。
つまり、嫁と嫁の母ので、母親をかばう気はないということだ。
正治がさく舌打ちしたのが、私には聞こえた。
奈々が卓の端で、に聞こえないように呟いた。
「最、がバーバのご飯がいいって言うからさ、なんか私、つ瀬がないんだよね」
真理子がすぐに返す。
「子どもはが濃いのをぶのよ。奈々の料理は繊細なんだから、気にする必ないわ」
私の胸が締めつけられた。
はそんなことを言っていたのか。
が照れくさそうに笑い、私のを握った。
「バーバのご飯、、全部好き」
その声に、秀夫が瞬だけ線を落とした。
何かを隠しているのだろうか。
いや、違う。
こののバランスを壊したくないだけなのだ。
そう気づいた瞬、私の胸に静かでいりが積みがった。
料理を囲む卓なのに。
祝福のはずなのに。
ここにあるのは、査定と沈黙と裏切りだけだった。
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私は箸を置き、静かに息を吸った。
りはまだ爆発しなかった。
しかし、確実に形になり始めていた。
そして冒の言葉が放たれた。
「やっぱりの料理って、ちょっと気持ち悪くて」
奈々が笑った。
真理子が続いた。
「ごめんなさいね。私、こういうの受け付けないの」
そのにあったものが、瞬で壊れた。
は泣きそうな顔をした。
正治はりをみ込んだ。
秀夫は目をそらした。
私は、もう何も言わなかった。
誕会が終わり、の「また来てね」という声を背に、私たちは玄関をた。
けれど私のは、まるで何かを置き忘れてきたように空だった。
に乗り込むと、正治が静かに言った。
「梨子、もう帰ろう。あんな所にいる必はない」
私は何も言わず、ただ頷いた。
涙はなかった。
悔しさでもしさでもなく、完全にがえ切ったの無が押し寄せていた。
帰り、町のかりが窓に流れた。
そのさえ、今はい世界のもののようにじた。
に戻ると、正治が座卓ので言った。
「なあ、もうあのと付きわなくていい。今のあれは、として許しちゃいかん」
私はゆっくり座り、しばらくを握ったままかなかった。
そして沈黙の、ぽつりと言った。
「正治さん、私、決めたの」
「決めた?」
「もう会わない。援助もしない。バーバとしての役目はもう終わりにするわ」
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正治は目を伏せ、く頷いた。
「本気なんだな」
「本気よ。あのには、私の居所はないもの」
静に言う自分の声は、自分でも驚くほど震えていなかった。
鳴りもしない。
泣きもしない。
ただ静かに、確実に切りす声。
それは何倍ものりよりもく、い決断だった。
その夜、私は机に類を並べ始めた。
通帳。
保険証。
固定資産税の決済通。
のために加入していた学資保険。
秀夫たちへの援助履歴。
贈与記録。
のローン保証。
全部、私が善でやってきたことばかりだった。
をめくるたび、奈々と真理子の笑い声がいされた。
「素朴ね」
「買ってきた方がよかったかもね」
「都会のに慣れてるのよ、私たち」
「私、こういうの受け付けないの」
胸の奥で、かすかに何かが音をてて崩れた。
私はく息を吐いた。
「正治さん、、緒にってくれる?」
正治は1秒も迷わず答えた。
「当たりだ」
翌朝、夜けに私は起きた。
窓のはまだ暗く、台所の計だけが静かにを刻んでいた。昨の誕会で残った疲れは体に残っていたが、議とは冴えていた。
私は黒いバッグに類を入れた。
正治はすでに着を着て、玄関で待っていた。
「けるか」
「ええ」
私たちはに乗り込んだ。
最初に向かったのはだった。
窓の女性に事を説し、秀夫夫婦に定期に送っていた活援助の振込設定を止した。
の教育費のために積みてていた座も、名義と管理方法を見直した。
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